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「女の子の人生を応援する」千原徹也さんによる、教養のエチュード・トーク

先日、嶋津亮太さん主催のオンライン公開インタビュー「教養のエチュードTalk」に参加しました。
第1回のゲストは、アートディレクターの千原徹也さん
note内私設コンテスト「教養のエチュード賞」でも共に審査員を務められていたおふたりが一体どんなトークを繰り広げるのか、とても楽しみにしていました。


千原さんは、安達祐実さんを主演に迎えた自主制作映画『最終日』で監督デビューする、と発表されたばかり。

普段は株式会社れもんらいふの代表として広告制作を手がけている千原さんが、なぜ映画をつくることになったのか?
どのように企画を立ち上げ、実現に至ったのか?

嶋津さんが投げかける質問にすらすらと答える千原さんの姿を見て、日頃から確固たる信念を持ってお仕事に取り組まれているからこそ、淀みなく答えが出てくるのだなぁと感じました。

わたしがイベントへの参加を決めた理由も、このnoteを読み、千原さんの広告制作に対する哲学やフラットな視点に感銘を受けたからでした。

今回、質疑応答の時間が設けられていたため、思いきって下記の質問をぶつけてみました。

ドラフト社のつくった「女の子の人生を応援する」というテーマは、ウンナナクールを通して千原さんご自身のものになっていったとのことですが、そこにはどういった過程があったのでしょうか?

お仕事を続ける中で自然としみついていった価値観なのか、それともなにかきっかけとなるできごとがあったのか、ぜひご教示いただければ嬉しいです。

すると千原さんは、作家の川上未映子さんから大きく影響を受けている、と語ってくださいました。
記事内でもお名前の挙がっていた川上さんは、「いつも世の中に対して怒っている」のだといいます。

例えば、「電車に乗ると『痴漢に注意』って貼り紙がしてある。これ、なんで被害を受ける側の女性が気を張らなくちゃいけないの? 男性に対して『痴漢はダメ』と訴えるべきなんじゃない?」とか。

「『ピンク映画』って言葉があるけど、女性性とピンク色を結びつけるのってどうなの? 女の子はみんなピンクがすき、みたいなステレオタイプにもうんざり。まぁわたしはピンクすきなんだけどね!」とか。

お話を聞きながら、思わず赤べこのように首を上下にぶんぶん振って頷いてしまいました。

「女の子の人生を応援する」というテーマは、映画『最終日』にも受け継がれているとのこと。

女性にとっての「幸せ」とはなにか? と問いかけるとき、結婚と仕事どちらを選ぶか、という文脈で語られることが多いです。では、そのどちらにもこだわりを持っていない女性はどうなるのか?
映画では、すきな相手との結婚も楽しい仕事も手に入れることができなかった「なにもない女」を安達祐実さんが演じ、その人生に訪れる変化を描きます。

わたしが再び赤べこ状態になっていると、嶋津さんからもこんな発言が。

千原さんはこれまで様々な著名人やアーティストとお仕事をされていますが、「男性だから」とか「女性だから」という基準ではなく、その方の人間性を重視して作品をつくっていらっしゃいますよね。

広告に詳しくないわたしがこんなことを言うのは差し出がましいのですが、「これは女性/男性向けの商品だからこういうコピーで、モデルはこの人を起用しよう」という安易な企画の立て方は、とても危険だと思うのです。
メディアの持つ影響力はあまりにも大きく、下手すればジェンダーロールの固定化に加担してしまう。

大手代理店の制作する時代錯誤な広告がたびたび炎上しているのを見ると、上の世代の方々のジェンダー観はまだまだアップデートされていないと感じます。
そんななか上記のウンナナクールのnoteを読み、千原さんの考えに共感するとともに、とても勇気づけられたのでした。

SNSの共感という時代は、いよいよ女の子の時代。
社会で「女子力」という言葉は、実は男のための言葉で、
お茶をサッと出せるとか、一歩後ろを歩くとか、、、
そうではなく、女の子が女の子のアイデンティティを振りかざしていい。
「新女子力」を応援できるブランドにしようという話し合いをした。
それこそブランドが持つ「女の子の人生を応援する」ということなのだと。

先日、美術館連絡協議会と読売新聞オンラインによる「美術館女子」というプロジェクトが炎上していましたが、これのなにがまずかったかというと、「"芸術作品を鑑賞する女性"を男性が観て、消費する」という歪んだ構図だったわけです。
こういった企画がなんの疑問も持たれず、ポーンと世に出てしまう現実にめまいを起こしそうになります。

「女性が主体となって、女性をエンパワメントする」ことは、まだまだ難しい世の中です。なぜなら社会の中心となる巨大な組織の上層部にいて、あらゆる物事の決定権を握っているのは、たいてい男性だから。
千原さんの仰るように、SNS時代=個人の時代が到来した今こそ、女性による女性のための「新女子力」について考え、打ち出していくべきだと思います。


正直、今まで堂々とフェミニズムの話をするのをためらっていました。
性差による不平等を指摘すること、正当な権利を主張することに後ろめたさなど感じなくていいはずなのに、「ああ、そっち系にいっちゃったのね……」と思われたくなかったのです。完全なる保身です。ダサいですね。

でも、千原さんの言葉がわたしを後押ししてくれました。
こうやってnoteで発信するにしても、わたし個人の力ではとても小さく頼りない。けれどもし、わたしの書く文章が誰かの共感を呼んで、また新たな発信が生まれたら、その声はどんどん大きくなっていきます。

フェミニズムはいまや、女性だけのものではありません。
「女らしさ・男らしさ」の抑圧や呪縛からの解放は、その人の属するジェンダーに関わらず、各々が抱える生きづらさの解消に繋がっていきます。
そんな思いが確信に変わった公開インタビューでした。これぞ、教養のエチュードですね。

マスメディア業界に千原さんのような方がもっと増えたら、日本の未来は明るいのですが……。
素敵な機会を提供してくださった嶋津さん、ありがとうございました。



いち映画ファンとしても、公開が楽しみです。



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