温かくて冷たい麦茶
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温かくて冷たい麦茶

 事務所のビル内に飲料の自動販売機(コカ・コーラ社)があるのだが、今年同社から発売された「やかんの麦茶」というのがラインナップに加わった。
「やかんで沸かしたような味」というのが売り文句で、たしかに香ばしいというか少し焦げたような味がする。

 これで思い出した。
 僕がこどものころ住んでいた場所の最寄り駅は北陸本線の「大聖寺(だいしょうじ)」というところで、「最寄り」といっても歩くと1時間半ぐらい掛かるのでバスで行くのが普通だったのだが、その駅には夏になると、ホームにある水道(手洗い用?)のところに、大きなやかんに入れた麦茶が冷やしてあった。アルミ製のコップがチェーンでつながれていて、誰でも勝手に無料で飲むことができた。飲む前に水道の水でコップをゆすぎ、飲んだ後もコップをゆすいで置いておくのがエチケットだった。
 出しっぱなしの水をやかんに掛けて冷やしてあるので、中の麦茶はすごく冷たく感じた。そうは言っても、冷蔵庫で冷やしたほどではなかっただろうが、夏の暑い日には本当においしい1杯だった。
 
 今から考えると、衛生面、安全面、環境面、経済面…、あらゆる角度からツッコミがありそうなサービスだったが、母親が「これ、駅の人がいつも作ってくれとるんやろうな」と言って感謝して飲んでいたのを思い出すと、そんなツッコミなどどうでも良くなってしまう。
 まさに温かさを感じる、冷たい麦茶のサービスだったが、あれはいつごろ無くなったんだっけ。そしてどの分野のツッコミで無くなったんだろうか。

 そんなことを思いながらきょうも買った。「いろはす」より安いし。


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1957年、石川県加賀市生まれ。1981年、埼玉新聞社に入り浦和の住人に。1992年から、浦和レッズオフィシャルマッチデープログラム(MDP)の編集を担当。2005年に退職し、フリーでMDPの編集を請け負っている。清風庵(http://saywhoand.jp/)庵主。