「やりがい搾取」

「やりがい搾取」なんて言葉があるのをきょう初めて聞いた。

経営者が従業員に対し、本来、賃金などの対価を支払うべきなのに、その仕事に関する「やりがい」を強調して、無償での残業や休日出勤を強いるというものらしい。うーん。

経営者と労働者の関係でそれをやるから「搾取」と呼ばれてしまうのだろうが、会社と会社、あるいは会社と個人、個人と個人の関係の場合はどうなのだろう。

「清尾さん、ちょっといい?」
 なに?
「今度、こういうことをやろうと思ってるんだけど」
 あ、おもしろいね、それ。
「そうでしょう! でも、この部分がうまくいかないかもしれないんだ」
 うーん、こうすればいいんじゃないかなあ。
「なるほど、それならベストだね。でも、それって清尾さんしかできないかもしれないな」
 いや、もちろん俺がやるよ。俺にやらせてよ。
「ホント! それはうれしいな。でも予算があまりないんだわ」
 そんなのいいから。こんなおもしろいこと、頼んでもやりたいくらいだ。
「いつも悪いなあ。ありがとう。頑張りましょう」

この会話例を読んで、「ああ、昔のレッズと俺の話だ」と思い当たる人は多いはず。少なくとも僕はパッと4~5人が頭に浮かぶ。そして僕もその中に入る。もうレッズにはいない、ある人物に乗せられて、どれほど頑張ったか。その労働力に見合うペイはほとんどなかったのだが。

だが、当時のそのことを恨む気持ちはまったくないし、苦労だとすら思っていない。苦労は苦労なのだろうが、「苦」にはなっていなかったからだ。逆に上記にもあるように、こんな面白いことに参加させてもらってありがたいという気持ちの方が強かった。

いま「やりがい搾取」されている人たちに「あんた方も楽しんで仕事してるんだから、少しは我慢しなさいよ」などと言う気はさらさらない。そもそも人間関係の問題に他人が口を挟むのは難しいし、実際を知りもせず報道だけで判断してはいけないだろう。円満で妥当な解決を望む、としか言えない。

今も浦和レッズに関わることは、やりがいを感じているし、業務を度外視している。好きでやっている部分も多いし、それには何の強制もされていない。

ただ、あのころが無性に懐かしい。 

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