疑うのは嫌だが確認なら

コロナ自粛の前から通信販売はよく利用している。自分の周りでは買えないもの、たくさん使用するのでまとめて買った方が安いもの、あるいは毎日使うのでいちいち買いに行くのが面倒なもの…。

先日、枝豆を注文した。もう近所のスーパーでも出始めているが、沖縄産のもので茶豆風だという初めて食べるものなので、250g×4袋で3,480円。さらにクールの送料が1,050円加わって4,530円はだいぶ高いが、買ってみた。

届いた。きれいな袋に詰められた枝豆が4パック。かなり小さい。居酒屋で注文すると、店によってはこれくらいの量が出てくるかもしれない。通販で買ったものの量を確かめるということは、それまでしたことがなかったが、台所用の計りで重さを測ってみた。え、203g? 念のため、残りの3袋も全部測ったが同じだった。袋ごと測ったので、つまりは正味200gということだろう。購入時の表示より2割も少ない。

念のため確認メールを見ると「250g×4袋」と書いてあるので間違いない。ところが、その通販業者のサイトを見たが、それには「250g×4袋」の企画はもう見当たらず、「200g×3袋」の企画が載っていた。1袋あたりの金額は僕が購入したものと同じくらいだが、量が違う。

どういうことだろう。袋はきちんと商品名がプリントされたもので、パンパンに詰めれば2割くらい増やせそうだが、200gがちょうど良い感じではある。先の企画段階では250gだったものが、その後200gに変更されたのに、そのまま通知なく200gで送ってしまったのか。

金額にすると700円足らずの損だが、そのまま放っておくのも業腹だし、その経緯を知りたいと思い、業者にメールした。自分も仕事でミスしたときは、その経緯をしっかり洗い出し、再発防止策を採るようにしているので、業種は違うが参考になるかもしれない。

業者から電話が来た。丁重な謝罪の言葉と共に、出荷段階で計量ミスがあった、と説明された。計量ミスというより、別のミスのような気がしたが、それ以上は突っ込まなかった。不足分を送りたいが、商品はもう入荷がないという。なので代替品として千葉県産の枝豆を400g送りたいが、という申し出があった。それこそ近所のスーパーで700円も出さずに買えるもので、沖縄産の枝豆だから注文したのに、とも思ったが、そこで交渉するのも嫌なので了承した。不当だというほどの対応ではない。

代替品が届いた。「千葉県」の産地表示がある。袋の中を見ると枝豆が枝についており、それ自体は新鮮さを保つのに有効だと思うが、先に届いた沖縄産の枝豆は、さやだけがパックされていたから、枝付きで400gなら正味はもっと少なくなる。枝の重さを見越して420gぐらいあるのかな、と思い測ってみた。322g。

笑った。量目不足の代替品がまた2割不足。怒る気持ちより、笑うほうが先に来た。芸人のギャグみたいだ。だが笑いっぱなしにはできない。前回メールしたときは1週間ぐらい待たされたので、今度は電話した。前回400gの代替品を約束してくれた担当者と違う人だったが、電話番号で検索して、経緯は理解してくれた。その辺はちゃんとしているようだ。それで今回の不足の話をしたら、やはり丁重に謝罪しすぐに対処を考える、という返事だった。僕は、前回の担当者から事情説明が欲しい、と伝えた。また不足分80gをどうるこうするという、ハチの頭だ、アリの○○○○だみたいな小さいことは言いたくないが、この不思議なミスが起こった経緯はぜひ知りたかったからだ。

その日のうちに、かの担当者から電話が来た。電話の口調からも、平謝りの様子がうかがえた。謝るのは当たり前のことで、聞きたかった経緯については、出荷担当者の計量がいい加減だった、ということ。「マジですか?」と大人げない言葉を返してしまった。そこ、基本でしょ。代替品だからいい加減だったのか、いつもそんな計量をしているのか、そもそも担当したあなたから出荷担当者へどんな伝え方をしたのか…。面談なら矢継ぎ早に聞いているところだが、電話でもあるし、そもそも僕は、自分が絶対的有利なときに相手を批判するのは気分が乗らないのだ。勝って当たり前の勝負はするべきではない。相手が反論してきたらもちろん言い返すが、全面的に非を認めて何を言っても「そのとおりです、申し訳ありません」では勝負にならない。勝負したくて電話しているわけではないが。

すると向こうから、今回の処置として2,000円を返金したい、という申し出があった。最初の不足分を金額に換算した約700円の3倍弱。手付金を払っている場合の、売り手側の都合による取引のキャンセルは、手付金の倍返しが基本。学生のとき、飲み会の幹事をやって店を予約したとき、人数が多かったので予約金を要求され、5,000円払ったところ、その店が食中毒を出して何日かの営業停止になり、飲み会ができなくなった。それで倍の10,000円を返金する、と店から連絡をもらったことがある。そのとき「予約金とか手付金などは、そういうものなんです」と店側に言われ、商法の実体験をした記憶がある。今回は手付け金とは違うが、すでに支払って(クレジットカード払いなので、厳密に言うとまだ支払ってはいないが、支払う手続きは済んでいる)いる額の不履行分が700円と考えれば、2,000円は少なくない。その対応は過分だと思ったが、こちらが申し出たことではないので、了承した。

この通販業者は言わば商社であり、生産者ではない。送られてきた箱にその通販業者の名前が印刷されているが、実際の卸売市場のように一度集めてから詰め直して発送するのではないだろう。箱をあらかじめ生産者に渡しておいて、生産者から直接注文者に送るのではないかと推測している。だからミスをしたのは生産者だと思うが、もちろん責任は通販業者にある。もしかしたら生産者から舐められているのかもしれない。

食品以外の機器などは不具合があったら交換してもらう。ある業者は、交換の依頼をした段階で、不良品が返ってくる前に新品を送ってくる。信頼性を保つためには大事なことなのだろう。今回は、品物の質が悪かったとか、まったく違うものが来たわけではないので、この通販業者への注文をもうやめよう、とは思わない。だが今回のことで、こういうものはきちんと量を測るべきなんだな、と思ってしまった。人を疑うというのは自分の身体の中に毒素が生まれるような気がして、できればしたくない。だが疑うのではなく確認だと考えれば毒素もそれほど出ないだろう。今さらだが、そう思った。

ちなみに沖縄産の枝豆は美味しかった。200gで約700円(送料別)が妥当かと聞かれれば、高いようにも思うが、それは自分で判断したことだし味に値段を付けるのは難しい。

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