見出し画像

歯医者から宇宙にトんだ話【/#23】

3ヶ月だか半年ごとにある、歯の定期検診に行った。
大人だから、歯医者なんて大したことないわ、という顔で取り繕っていても、なんだか嫌だなぁと思う気持ちは消えない。
検診では歯石の状態や、歯がグラグラしていないかまで念入りに検査する。徹底的に磨かれると、ほんの小さな虫歯が発見されることがあった。
「来週は虫歯を治療しますね。小さいし神経にもかかっていませんので、麻酔はなしで大丈夫ですから」
先生は爽やかに優しく言ってくれるが、私の心は沈んでいた。
もちろん虫歯は治療したいし、早く発見されるにこしたことはない。
でも、あの機械の音と振動を想像するだけで、ため息しか出ないのだ。

治療の日、私の気分はまな板の上の鯉。
口を開けるものの、心のどこかでビクビクしている。

そうだ、今こそ学んだ思考が役立つかもしれない!そう思った私は、直前まで読んでいた『賢さをつくる』の本にあった具体と抽象の思考にトリップしようと試みた。
*本によると、思考は横にスライドさせた方がいいのだが、文章では縦に書くことをご容赦願いたい。

今、私は歯の治療を受けている。ここからスタートさせて、抽象度をあげていく。
例えば時間。治療時間でいえば5分くらいなはず。治療は多くて1年に2回だろう。すると365日=525,600分の中のたった10分程度だ。1/52,560と思えば大したことがない。
いや、別の方向で考えてみる。
先生は毎日、誰かの歯の治療を行っているはず。今虫歯の治療を受けている人は、県内でどれだけいるというのか。日本でみれば約1億2500万人もの中で、そんなにいないんじゃないないか。世界は?宇宙は?星の中から見れば、私の歯の治療なんて塵にも等しい......
「(っ痛い)!」
「あ、ごめんなさいね〜。染みちゃったかな」
「大丈夫です(嘘です、痛かったです...)」
痛みは、一瞬にして思考を現実に引き戻す。
「これで終わりですからね」
「ありがとうございました」
思考の使い方が間違っているかもしれないが、次に治療を受けたら、逆にミクロの世界に行ってみようかな。
いや、本当に、先生いつもありがとうございます!
どうか、次は虫歯が見つかりませんように!!!

ちなみに気になって、帰ってから日本の歯科診療所数を調べてみた。
令和5年11月末現在で、全国には67,089箇所の診療所があるとのこと。県内には、975箇所の歯医者があった。もしかするとあの瞬間、私を含めて67,000人が治療を受けていたのかもしれない。
出典:厚生労働省「医療施設動態調査より」

昨日と今日と明日と。日々の小さな幸せに感謝して❤️


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?