【20】小児科医ママが解説「"子どもが健康的に過ごすために"とか言いながら、親に激しく追い撃ちかけてくるWHOに突っ込んでみる。」


コロナで外出自粛がつづきますが、「心身の健康のために、(マスクや他人との距離などを守ったうえであれば)外出は推奨される」とCDC(米国疾病管理予防センター)が提唱していることは、前の記事でもふれました。
(記事:コロナで外出自粛。公園や散歩はどこまでOKなの?

そもそも、子どもってどれくらい外で遊べばいいんでしょうか。
今回も公式団体の見解をもとに、見ていきたいと思います。


WHOが容赦ない件について。

WHOが「子どもが健康に育つために」というテーマで、2019年に提唱した指標。和訳が出回るなどちょっとした話題になりましたが、あらためて見てみましょう。以下が抜粋・要約です。

WHO(世界保健機関)
To grow up healthy, children need to sit less and play more

https://www.who.int/news-room/detail/24-04-2019-to-grow-up-healthy-children-need-to-sit-less-and-play-more

1~4歳の子は、最低でも1日3時間、様々な方法・強度の身体活動が望ましい。
一度に1時間以上、ベビーカー・抱っこひも・おんぶ・椅子など、同じ姿勢・同じところに固定してはいけない。
2歳未満には、テレビ・ビデオ・ゲームなどの画面は推奨されない。2歳では1日1時間が目安だが、少ないほうがいい。
身体活動以外の時間は、保護者による読み聞かせなどの時間をできるだけ持つ。
1~4歳では、睡眠時間は(昼寝をふくんで)11~14時間ほど必要。寝る・起きるの時間を決めて守る。

活動時間、最低でも3時間、しかも「多ければ多いほど良い」とか、野生児ですか。
兄の散歩につきあわされる弟、ベビーカーか抱っこひもで常に同じ姿勢で1時間いますけど、なにか。0歳の弟、3歳の兄と一緒にyoutube見ちゃってますけど、なにか。
散歩から帰ってきたら読み聞かせしろと。家事、いつするんですか。


・・・ってな感じで、読みながら一人で山ほど突っ込んじゃいましたが、どうですか?これ見て、え~うち毎日普通にやってるけど、ってご家庭は、なかなかスゴいことだと思って、胸を張ってください。


「小児科医に聞いてみてね」って言われても。


しかも、ここにAAP(米国小児科学会)が追い打ちかけてきます。


AAP(米国小児科学会)
11 Ways to Encourage Your Child to Be Physically Active
https://www.healthychildren.org/English/healthy-living/fitness/Pages/Encouraging-Your-Child-to-be-Physically-Active.aspx
(上記のWHOの提案を実行するヒントとして)

●親がスポーツをしたり体を動かしたりして、見本になる。
●家族全員で楽しめるスポーツ・活動を探す。
●身体活動をするときは、テレビ・ビデオゲーム・パソコンの画面を消す。
●ボール、なわとびなど、自然と身体活動につながるようなオモチャをあげる。
●活動の内容・場所、活動のときに着用する洋服もふくめて、安全かよく確認する。新しいスポーツに取り組むときはしっかりサポートする。
●身体活動をやりすぎないように注意する。体と相談しながらやることを、子どもにも伝える。
●子どもにとってベストなスポーツや身体活動について、小児科医に聞いてみる。

子どもを3時間つれだして、家事もしたあげく、子どもの前でスポーツして見本になれと。親、動きすぎだろ。
なんかEテレでも見ながら踊るなら気がまぎれるけど、テレビも消せと。無音で踊りつづけるってどんな無理ゲーですか。
で、結局、「やりすぎないように注意」って。

しかも「小児科医に聞きなさい」って。ごめんなさい、聞かれても困ります。すみません。
こういう「健康なお子さんのマネジメント」って、正直、医者が一番苦手とする分野だといっても過言ではないと思います。
私たち医師は、まず病気ありきで、医学部生の頃から勉強をしてきます。健康なお子さんに、どんな生活上のアドバイスをするのか(しかもなるべく医学的な根拠をもって)。そもそも、そのお子さんが健康です・様子見ていいです大丈夫ですと言える根拠は?(健診って結構むずかしいんです)。

同じことを質問して、結局「あ、それは様子みていいですよ~」って言われても、「ほんとに大丈夫なのかな。なんか納得いかない。先生ちゃんと聞いてくれなかった。」みたいに思う医者もいれば、「なんだ大丈夫だったんだ!先生も聞いてくれた感じがして、安心したわ。」と思う医者もいますよね。
私だって、なるべく後者でいたいなと思いますけど、時間の都合や、自分自身のコンディションで、なかなかむずかしいなと思う時も沢山あります。
このあたりは、小児科医としての経験年数ももちろん、医師としての人生・社会経験や、人間性、親御さんとの相性が出る、非常にあいまいで・奥深い分野だと思っています。


・・・すみません、ちょっと話がそれたうえに、あえてナナメから見ている面もありますが、まぁこのWHOとAAPは、かなりスパルタだと思います。真面目なお母さんが読んだら、余計に自分追い詰めじゃうじゃん、と思いました。しかもコロナで外出自粛、子どもを連れて外に出るのも、周りの目がいつも以上に気になる時期に、これは結構キツいです。

ネット上でもちょこちょこ、このWHOの話が目につきますが、世の中のママ・パパたちには、まぁこういうのが一応言われてるんだな~、くらいに受け止めてほしいです。


テレビはほんとに悪なのか。


上記でも「テレビを消す」「1日1時間未満に」と、極力テレビを見させない方針が、最近の国内・国外のトレンドです。
そんなにテレビが悪いのか?論文なども参考に見てみたいと思います。

子どもとテレビの関連について、総合的に述べている代表的な論文が、以下です。

”Digital Screen Media and Cognitive Development.”
Pediatrics November 2017, 140 (Supplement 2) S57-S61.
https://pediatrics.aappublications.org/content/140/Supplement_2/S57.short

2歳未満がテレビなどのスクリーンをみることは、認知機能の発達、とくに言語発達や、実行制御機能の発達と、マイナスの関連がある。

テレビをつけながらなにかする、という状態(Background television)も、おもちゃで遊ぶという作業を実は中断・邪魔していたり、親子間の関わり具合・親から子どもへの声かけを低下させる。親がスマホなどの携帯デバイスを使うことも、親子間の関わりを減少させる。

●機序は不明だが、2歳未満がスクリーンを見ても、その内容を実質的に理解していることにはならない。2歳以後になると、テレビやスクリーンを見る、というよりは、デバイスにタッチするスクリーン(iPadなど)が、より学習効果が得られやすい可能性があり。たとえばセサミストリートも(2歳以後であれば)、言語能力・社会的行動・知識に良い影響を及ぼす可能性がある。そのほかの教育番組も、就学前の準備として・また学力向上に寄与する可能性がある。

視聴した体験・内容を、実際の現実世界とリンクさせると、視聴内容からも学べるものが多くなる可能性がある。

●暴力的な内容をスクリーンで見ることは、反社会的・衝動的行動と関連がある。

この他の論文でも、総じて2~3歳くらい以後になれば、メディアを適切に見ることは、言語・認知機能の発達において、一定の効果が得られる・悪い影響ばかりとは言えないのでは?という見解が多いです。
逆に、2歳未満においては、スクリーンを視聴させて・子どももじっと見ているようにみえても、実は内容は全然頭に入っておらず、スクリーン→子どもの一方通行になってしまうので、それによって減ってしまう親子間のインタラクションを懸念して、「テレビは推奨しない」という文言になっています。

ほかには、2歳以上のお子さんにおいても、スクリーンタイムが増えるほど、言語発達障害が多いのではという報告や(Case-control study found that primary language disorders were associated with screen exposure.)、集中力が乏しい・多動が目立つ傾向(Screen-time is associated with inattention problems in preschoolers: Results from the CHILD birth cohort study.)の報告。
また、睡眠時間の減少や(①Screen viewing behavior and sleep duration among children aged 2 and below.②Excessive Screen Time and Psychosocial Well-Being: The Mediating Role of Body Mass Index, Sleep Duration, and Parent-Child Interaction.)、栄養・肥満といった影響にも言及している報告もあります(①Relationship between screen time and nutrient intake in Japanese children and adolescents: a cross-sectional observational study.②The effect of screen advertising on children's dietary intake: A systematic review and meta-analysis.)。



「テレビやスマホはいけない」という言葉ばかりがどうしても独り歩きしてしまいますが、実際にはこうした様々な報告があり、見解があります。

兄弟がいれば、兄がみているスクリーンを弟も一緒に見るし。
ワンオペ育児なら、テレビ見せないで家事をするなんて無理だし。
一日中子どもとだけ向き合って遊んでいても全然苦じゃないよ~って人もいれば、ぶっちゃけ毎日スマホ1時間は触らないとやってけないですって人もいれば。家庭の状況は様々です。

Eテレつけながらお子さんが踊っていたら、よしよし私今子どもを運動してるぜ、と思いながら、親御さんは家事してていいと思いますし、
1日中スクリーン見せちゃったなった日も、その日の夕方にスーパーの買い物にいったときに「あ、さっきyoutubeの○○ちゃんもリンゴ食べてたね~」とか言って「あ、私今、現実世界とスクリーン、リンクさせてんじゃん。すごくない?」くらいに思っていいと思います。


上記の情報を見た上で、ウチはここまでならできるな、こうしたいけどワンオペで物理的に無理だから、ここは妥協する!など、親御さんが納得した方法を選んで頂くのが一番です。
24時間365日お子さんを見てくださっている親御さんに比べれば、医者ができることなんて限られていますが、かしこく知って・かしこく悩んで・かしこく選んでいくお手伝いができれば、といつも思っています。


・・・で、実際、白井ん家、この緊急事態宣言のなかボーイズ2人つれてどうすごしてんのよ。ってのは、こちらの育児ブログでよろしかったらどうぞ。http://sayokoshirai.com/316-2/ ‎


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■医師免許、日本小児科学会専門医、小児科オンライン(https://syounika.jp/)、IPHI 妊婦と子どもの睡眠コンサルタント、キッズ・マネー・ステーション認定講師 ■2児ボーイズの育児ブログ:http://sayokoshirai.com/
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