新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。

【7】小児科医ママが解説「BCGワクチンは、コロナに効果があるのか?」


「BCGワクチンが定期接種になっている国のほうが、コロナウイルスの感染が抑えられているのではないか。」
ここ最近、ネット上でもアツい話題になっていますよね。

実際のところ、どうなのか。現時点での文献やデータを見ていきたいと思います。

BCGワクチンは(結核だけでなく)ウイルスにも効果がある可能性

今回のコロナウイルスにかかわらず、以前から、BCGワクチンは「結核を防ぐ、という以外の効果もあるのでは」という報告は複数ありました。

Nonspecific (Heterologous) Protection of Neonatal BCG Vaccination Against Hospitalization Due to Respiratory Infection and Sepsis.

1992年~2011年の19年間における、スペインでの46万件の入院について、
BCGを接種した子どもたちと、そうでない子どもたちとを、比較した研究。

●BCGを接種することで、呼吸器感染症での入院を、41.4%予防する効果があった。とくに年齢別にみると、1歳未満で 32.4%、1~4歳で60.1%、5~9歳で66.6%、10~14歳で69.6%の割合で、(呼吸器感染症での入院を)予防する効果があった。

●さらに1歳未満の場合、敗血症(*)も52.8%予防する効果があった。
(*)ウイルスや細菌の感染症が重症化するなどして、普段は常在菌としてもっている菌などが、血液の中に入り込んだ状態。ICUなどでの治療を要することもあります。

もうひとつ。

Early BCG-Denmark and Neonatal Mortality Among Infants Weighing <2500 g: A Randomized Controlled Trial.

デンマークで、2500g未満でうまれた低出生体重児の赤ちゃんと、BCG接種の効果をみた報告です。

●「感染症による」死亡については、死亡率を43%低下させる効果
があった。

●さらに複数のトライアルの結果もあわせると、新生児期の死亡率を38%、1歳までの(乳児期の)死亡率を16%低下させる効果があった。


なぜこうした効果があるのか、詳細なメカニズムは不明な点も多いです。ただし、BCG接種を受けることで、その人の・その後の免疫システム自体を大きく変える可能性が報告されています。

①BCG Vaccination Protects against Experimental Viral Infection in Humans through the Induction of Cytokines Associated with Trained Immunity
②Immunometabolic Pathways in BCG-Induced Trained Immunity.

具体的には、単球(白血球の仲間の一つ)という免疫にかかわる細胞の、DNAなどを変化させる可能性があるとのことです。

その結果、BCG接種後にウイルスにかかると、ウイルスに抵抗しやすい・ウイルスを抑制するような効果が得られるかもしれない、という推測です。

一般的には、1回だけワクチンを打っても、数年後には効果が弱まってしまうケースも少なくないですが、BCGは違うと。接種した人の今後の免疫状態を、根本から変える可能性があることを示唆しています。


たしかにBCGを接種している国ではコロナ感染者が少ないように見える。が、コロナ感染に効果があるかどうかは「不明」。

そんな中、今回のコロナウイルス感染症と、BCG接種との関連に言及したのが以下の論文です。

Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study.

BCGを定期接種としている(基本的には対象者全員が接種することが義務・あるいは努力義務になっている)国と、そうでない国とで、コロナ感染症の状況を比較しています。


定期接種にしている国:日本、中国、韓国、香港、シンガポールなど
定期接種ではない国:イタリア、オランダ、スペイン、イギリス、フランス、アメリカなど

たしかに国ごとで比較すると、BCGワクチンを定期接種にしていない国のほうが、感染者数や死亡者数が多いように見えます。

しかも、より昔から定期接種をしていた国のほうが、よりコロナの影響を受けていないのでは、という考察をしています。
たとえば日本やブラジルは、それぞれ1947年や1920年からBCG定期接種になっています。一方でイランは1984年から、比較的最近に定期接種になりました。
日本・ブラジルとイランでのコロナ死亡率を比べると、圧倒的に、日本・ブラジルのほうが、死亡率は低いという報告です。


ただしこの文献でも触れられていますが、
接種株や接種のスケジュールは、各国でバラバラであることから、
一概に「BCG接種の効果」としてひとくくりにしていいのかという問題があります。

また、BCG接種後どれくらいたってから効果があるのか。
仮にコロナ感染や死亡を予防できるとして、年齢別に効果に差はあるのか。
色々と不明な点が多すぎます。

ましてや各国のそもそもの医療資源など、BCG接種「以外」の状況が違いすぎます。

この報告だけで短絡的に、BCG接種に効果がある!とは到底いえません。
相関関係がある、からといって、因果関係がある、ということではないのです。


それだけに、オーストラリアやオランダで(医療従事者が対象のようですが)BCGを接種して、今後のコロナ感染の影響をみる臨床研究が始まったと聞いて、なかなかの英断だなと思いました。

今まで通り、生後5~8か月の赤ちゃんが、BCGをちゃんと打てますように。

上記の論文がニュースになったこともあり、実際にクリニックや病院に「BCGを接種できないか」と問い合わせる大人の方がでてきたようです。

生後間もないお子さんについても、本来の時期(生後5~8か月)よりも早めにBCGを接種できないかという質問もあるようです。

結論としては、ひきつづき、生後5~8か月という推奨期間に、赤ちゃんがBCGを接種されることが一番大事です。

そもそもBCGの本来の効果・目的は「結核にかかること、また合併症を予防すること」です。
実際にBCGワクチンを接種することで、結核の発症を70%予防したり、
結核性髄膜炎など重症な合併症を80%予防できる
と報告されています。(Correcting the record on BCG before we license new vaccines against tuberculosis.)
(Protective effect of BCG against tuberculous meningitis and miliary tuberculosis: a meta-analysis.)

生後5か月~8か月の間、おそくとも1歳未満までに接種することで、上記の効果が期待できるとされています。

そして物理的に、そのような赤ちゃんに接種するぶんが作られています。
不特定多数の大人に今から接種するだけのBCGワクチンは、物理的に(現時点で短時間では)供給できません。
ちなみに妊婦についても、BCGは生ワクチンなので接種できません。

※ちなみにもう1歳を超えてしまっていますがBCG打てるか、というケースも、自治体から断られることも少なくありません。効果が認められている生後5〜8ヶ月の時期に打とうとしているお子様を優先するためです。場合によっては接種できることもあるかもしれませんが、推奨期間をすぎているので、自費になったり・ワクチン副反応に対する国としての救済制度が受けられなかったり、といった点が注意です。お住まいの最寄りの保健所に確認をしてください。

※そのほかBCGについては、以下も参考にされてください。
厚生労働省:結核とBCGワクチンに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/bcg/index.html

日本ワクチン学会も、以下の声明をだしています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBCG ワクチンの効果に関する見解

●「新型コロナウイルスによる感染症に対して BCG ワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない

● BCG ワクチン接種の効能・効果は「結核予防」であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的とはしていない。また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。

●本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCG ワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。

たしかにBCGとコロナの関係は、医学的にも興味をひかれるトピックではありますが、現時点では、とにかく不明な点が多すぎること。
そして、BCGを本来必要としている赤ちゃんが、きちんと接種できるように行動すること。

こちらが伝われば幸いです。

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■医師免許、日本小児科学会専門医、小児科オンライン(https://syounika.jp/)、IPHI 妊婦と子どもの睡眠コンサルタント、キッズ・マネー・ステーション認定講師 ■2児ボーイズの育児ブログ:http://sayokoshirai.com/
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