161.ダメ出し

 テレビ局では放送作家を「先生」と呼ぶ傾向がある。ぼくのような三文作家でも、スタッフは、「先生、次の打ち合わせ時間はいつにします?」なんて聞いてくるのだ。
 最初は恥ずかしくて、「やめてくれ。そんなに偉くないよ」とか、「先生? オレは教員免許も医師免許も持ってないぞ!」などと、わけのわからない怒り方もした。

 が、今では先生と呼ばれても平気で返事をしている。別に、ぼくが偉くなったというわけではないですよ。
(ははーん、作家の名前をいちいち覚えるのが面倒なので先生と呼んでいるだけなんだな)
 と気付いたからだ。ニュアンスで言うと漢字の「先生」ではなく、カタカナの「センセ」。「ちよっとそこのアンタ」という程度の意味。じゃ、そんなに嫌がることもないものね。

 だから「先生」という言葉には慣れたけど「ダメ出し」という言葉にはまだ慣れない。
 なぜなら、最近はいっこく堂の舞台演出をやっているため、リハーサルが終わるとスタッフが、「ダメ出しをお願いします」と言ってくるのだ。
 芝居の訂正とか注意点指摘という意味の演劇用語なのだが、この言葉が持つ「偉そう感」が恥ずかしいんですね。駆け出し演出家のぼくには。
(出演者、スタッフにダメを出す? そ、そ、そんな大それたこと……)
 と照れくさいのだ。
 たぶん、これもまた実は「早く直せよコノヤロ」という程度の意味なのだろうが……。

【モンダイ点】
◎「ダメ出し」ではなく「注意点についての感想および雑談」ぐらいにしてくれないかなぁ。
(2001/6/6)

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