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意外な「その後」

駆け出し作家の頃「ラジオっ娘」というラジオ番組を担当していた。正式には「電話好きっ娘 ラジオっ娘 男の子にはナイショなの」と、なんとも凄いタイトル。1981~82年頃で、これが人気番組だったのだ! 
この時のことは『幸せな裏方』という本に書いている。

パーソナリティは、三人組アイドルの女の子(やよい、かおり、めぐみ)。人気のあまり、彼女たちはオールナイトニッポンも担当する。が、ぼくは担当しなかった(その理由は本に書いた)。
三人の「その後」については、本にこう書いた。
「やよいは、西端弥生。その後、俳優古田新太さんと結婚」
「かおりは、水島かおり。その後、映画監督長崎俊一さんと結婚」
そして、
「めぐみは、本名高橋尚代に戻って、ニッポン放送の女性アナウンサーになった。結婚後退職」
この本の時点(2017年)では、めぐみのその後は知らなかった。

ところが、今年の春、彼女からぼくのTwitterに連絡があった。
《尚代です! めぐみです! ラジオっ娘です!》
まったくSNSというのは凄い。ぼくは驚いた。そして約三十年ぶりに知った彼女の「その後」に、もっと驚いた。
なんと彼女は青山学院大学の教授になっていたのだ。凄い! ぼくは「教授? へへーっ!」とひれ伏してしまう。
「一度、私の講義にゲストスピーカーとしていらっしゃいませんか? 学生たちに、メディアの現場で働いている方の話を聞かせてあげてください」
「喜んで!」

青山学院大学の相模原キャンパス。メディア志望の、彼女のゼミの学生たちが相手だ。学生たちにとってはゼミの教授なのだが、ぼくは昔の芸名「めぐみ」呼ばわりをする。失礼極まりない。もちろん、事前に彼女から「昔の話をしても大丈夫です」という返事をもらっていたからだけど。
藤井青銅は、ラジオ・テレビのドラマ脚本、バラエティの構成だけでなく、ステージ構成、本は小説も企画本も書くし、作詞、落語、腹話術、プロデュース、はてはパイまで作る特殊作家だ。これまでにやった仕事のアレコレを話すと、学生たちは面白がって聞いてくれた(と思う)。

講義の合間に、新刊『教養としての「国名の正体」』の宣伝をさせてもらう。ゲストに「大切なお知らせ」があるのはメディアの常識なのだ。メディア志望ゼミの学生たちなら、そこらへんわかってくれるだろう。

先日、蔦屋家電でやったスライドを青学用に作り直して、スライドショーをやった。蔦屋家電ではスライド後に、その内容に沿ったクイズ大会を行った。これが受けたのだ。
受けたものは、何度でもやる。ここは大学なので、あえて「国名小テスト」と題して、同じようにやった。やっぱり、受けた。優勝者には「国名食品詰め合わせセット」をプレゼントした。喜んでもらえた。

ところが、講義の後半、学生たちに「何か聞きたいことはありますか?」と訊ねると、ぼくのプロフィールから、
「ゆるパイって何ですか?」
という質問が来たのだ。え? まさか、そこ?

ちょうど、過去にやった「ゆるパイスライドショー」のデータもあったので、「説明するより、やった方が早いでしょう」と、その場で「ゆるパイスライドショー」を始めてしまった。予想外の展開だった。
そしてこの日の講義で、おそらくこれが一番受けてしまったのだ!

たしか最初は、「学生たちに、メディアの現場で働いている方の話を聞かせてあげてください」という要望だったはずだ。
だが結局、学生たちの記憶に一番残ったのは「ゆるパイ」かもしれない。
教授、大変申し訳ない!

お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。