187.これも風評被害か?

 放送では番組の収録現場で打ち合わせをして、そのまま追加原稿を書くことがある。先日も、とある収録スタジオでそうなった。その時ディレクター氏は、ぼくがパソコンを携帯してないので、
「えー……どうしましょう? スタッフルームにワープロがありますが」
「たいした分量じゃない。ここで書きますよ」
 と答えたら、
「え? え? 原稿用紙はどこにあったっけ?」
 とうろたえる。
「別に、紙ならなんでもいいですよ」
「え! そうですか?」
 今はみんなパソコンやワープロで原稿を書くので、作家とはそういうものだと思っているらしい。

 しかしねぇ、放送というのは誰かが喋ったり演じたりしたものがきれいに仕上がればいいのだから、その元になる原稿なんて別にきれいにプリントアウトしなくても、読めりゃいいじゃないかとぼくは思っている。それに(他の人はいざ知らず、ぼくは)時間をかけりゃいいものを書くってわけでもないしね。だから、勿体つけずにさっさと書くことにしている。
 ところが、そうすると「藤井さんは原稿が早い」と噂されてしまう。いえ、そうじゃない! 元々ぼくは遅いんですよ。ただ、締切りギリギリまで延ばすから、最後に急いで書いてるだけ。それを見て「仕事が早い」なんて言われると困る。一部をもってして全体を語ってくれるな! ……と、これがつまり風評被害なのだ。
 作家ならいいが、お肉屋さんは今これで大変。みんな、風評にまどわされないようにしよう。

【モンダイ点】
◎これって、わかりやすい例えになっているのか?

(2001/12/12)

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