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藤井青銅
2016年8月12日 23:27
仮名垣魯文「安愚楽鍋」…(あぐらなべ) 坪内逍遥「当世書生気質」…(とうせいしょせいかたぎ) はるか昔の学生時代の、詰め込み教育の成果というものは恐ろしい。以来数十年ばかり、まったく見ることも聞くこともなかったこの言葉も、いざ目にしてみると、いちおう漢字の羅列を読むことはできる。 読むことはできるのだが、丸暗記の悲しさ。いったいどういう内容かと聞かれたら、皆目見当がつかない。「安愚楽
2016年7月27日 07:58
札幌、博多、尾道、和歌山、喜多方……。 こんなものではない。まだまだ全国多くの街に「ご当地ラーメン」というものがある。ほとんど、街の数だけラーメンがあるんじゃないかと思うほどだ。 そんな中で、地元にとっては普通でも、他からはちょっと変わったと思えるかもしれないものは… 室蘭のカレーラーメン…その名の通り、カレーとラーメンの合体。 八王子ラーメン…具に刻み玉ねぎがのっているのが特徴。
2016年6月26日 22:38
こだわりのラーメン屋さんというのはなぜみんな、頭にバンダナを巻いているのか? ……という点はさて置いて、彼らのこだわりようは並ではない。 スープは、やれ味噌だ、醤油だ、いや塩だ。鶏がらだ、トンコツだ、いやいや日本人なら煮干だとこだわり、またそれらを絶妙のバランスで配合したりもする。 麺だって、打ち方にこだわり、かん水にこだわり、さらに細さ太さ、固さ、縮れ具合にもこだわる。そして、その麺とスー
2016年6月23日 11:22
あの黄門様、つまり水戸光圀が日本で最初に食べたとされる。 当時はどんな呼び名だったかはわからないけれど、要するにラーメンだ。光圀公は明から亡命してきた儒学者の朱舜水を招いているので、そこから伝わったという。 こんな歴史的事実を引っ張り出すこともなく、ラーメンというのは当然、中華料理だ。名前からして、そうじゃないか、と。 確かにそうではあるけれど…、と思ってしまう人も多いのではないか?
2016年6月1日 00:38
「エビで鯛を釣る」「腐っても鯛」 ……このへんの諺は、説明がなくても、誰でもわかるだろう。鯛が出てくる諺というのは、これだけではなく、もっとある。ちょっと探してみると……「鯛なくば狗母魚(えそ)」 必要とするものがなければ、それより劣っているもので我慢するほかないという意味。…しかし、ご存知の方もいるかもしれないが、エソというのは蒲鉾の原料としては、高級な魚なのだ。それで我慢しろというの
2016年5月28日 14:09
鯛の旬は、冬から春にかけて。とくに、早春の桜の咲く季節には「桜鯛」とか「花見鯛」と呼ばれて、その名も美しく、極上の味になる。 俗に「鯛は目の下一尺」という言葉がある。全長が四~五十センチの、重さ二キロぐらいの鯛のこと。これが、最高の味だという。 さて、そんな鯛を手に入れたら、どうやって食べるか? まずは、刺身。美しく、弾力のある身は、淡白な味で、いくら食べても飽きない。 もちろん、塩焼
2016年5月23日 13:54
魚にはいろいろ種類がある。人によって、好みもいろいろ。 ではあるけれど、その味、姿、格から言って、魚の王様はなにかと問われれば、あなたはなんと答えるだろうか? そう。なんといっても「鯛」だろう。 日本人は、古来よりこの魚を好んで食べていたようで、縄文時代の貝塚から鯛の骨が出てくる。 下って、神話には、赤い魚だから「赤女(あかめ)」という名前で出てくる。 さらに平安時代には、「平魚(た
2016年5月9日 16:44
二つの派閥があるようだ。……「派閥」とは、なんだか、大袈裟な言い方になってしまったが。 鶏肉、玉ねぎ。それにマッシュルーム、コーン、グリーンピースなどを一緒に炒め、ごはんと共にケチャップで味付けしたもの。店によっては、炒める前に具のほうだけをトマトソースで煮込んでおく、いうこだわりを持っていたりもする。「チキンライス」――カタカナの気取った名前がついているが、もちろんこれだって、日本で生ま
2016年5月7日 00:48
子どもの頃「オムレツ」と「オムライス」の区別がよくつかなかった。英語がわからないのだから、しかたがない。毎回、頭の中で(どっちだっけ?)と迷いながら、「ご飯が入ってるほう!」なんて、頼んだりした。 だから…なんだろうか。なんとなく、あれは外国から来た料理…だと思っていた。けれど、よく考えてみれば「オムライス」は「ライス」なんだから、これは日本でできたメニューなわけだ。 オムライスの発祥には
2016年5月4日 10:47
いまは亡き映画監督・伊丹十三。彼は、父親が高名な脚本家であり映画監督・伊丹万作だけあって、映画のツボというものを心得ている。 彼の映画「タンポポ」で、有名になったオムライスの作り方がある。皿に盛ったチキンライスの上に、中がまだ半熟のプレーンオムレツをのせ、食卓の上でオムレツに切れ目を入れる。すると、とろけた卵が裏返しになって、まるで風呂敷でチキンライスを包むように広がり、目の前でライス全体を
2016年4月27日 01:12
「天ぷら」と「天丼」。 同じものが、ご飯の隣りにあるか上に乗っているかの違いだが、これがずいぶんイメージが違う。「天ぷら」は……、すこしばかり気取った感じ。ちゃんとした食事。食べるのは、やはり夜だろうか。デートや商談にも使える。「これは塩でお召し上がりください」、なんて食べ方を指導されることもある。 それに引き換え「天丼」は……、ぐっと庶民派。お昼に食べるのに最適。あんまりマナーを気にしな
2016年4月7日 09:49
少子化の世の中。いまや、子どもが三人もいれば、「おや。賑やかでいいですね」 と、多い方だろう。 我々の親の世代はというと、七~八人が当たり前。ずいぶんと兄弟・姉妹が多かった。ところが、それ以上にファミリーが多いのが、「丼もの」。そう、食べ物の丼ものだ。 まず最初、江戸時代に生まれたのが「鰻丼」。これが、丼ファミリーの長男にあたるわけだ。 江戸末期に生まれたのが、「深川丼」。まあ、そう
2016年4月3日 14:28
数人のチームで、なにかをすることがある。仕事の場合もあれば、スポーツ競技の場合も。我々が、よく経験することだ。 チームには、それぞれ得意な技を持った人間が集められる。仕事ならば、計算の早いやつと、交渉上手なやつと、力自慢と、接客のうまいやつと……というような具合。 スポーツならば、足の速いやつと、ジャンプ力のあるやつと、頑丈なやつと、先読みのできるやつと……という具合。 ところがそんな中
2016年4月1日 08:56
ビーフシチュー タンシチュー クリームシチュー シチューの仲間もいろいろある。ロシア料理のボルシチなんてのも、そうだろう。 英語の「シチュー」という言葉は、すでに千三百年前から使われているようだ。では、その頃は、どんなシチューを食べていたのか? 実は、英国王室のメニューが残っている。歴代の王たちが、好んで食べたシチューは? まず、十一世紀のウイリアムⅡ世。彼の食卓にあがっていたのは