高濃度ビタミンC点滴@ニューヨーク市

標準医療に打つ手がなくなると、我々が長年研究し実践してきた○○療法を標準医療は無視してきたが、とうとう出番だと、おなじみのフリンジ医療が登場してくる。フリンジfringeというのは、洋服の縁飾りのフリンジと同じ単語で、中央から遠く、正規と異端の境目の周辺部で活動しているものという意味だ。現代の標準医療は効くものであれば何でもどん欲に取り込むので、緊急時に効果があることを証明できれば、標準医療の仲間入りできるわけで、ここで出番だとアピールすること自体は全く悪くないし、Do no harm(害をなすなかれ)の原則に従って、その治療によって他の治療が邪魔されたり副作用が出たりしなければ、医師が使うことは非難されるものでもないだろう。

 そういうわけで、コロナウイルス感染症に襲われているNYで、高濃度ビタミンC点滴が使われていて、効果を上げているなら、こいつはトンデモですと言ってきた認識を改めてごめんなさいするべきなのかもしれないと、紹介記事を読んでみた。

まず、ニューズウィークの記事は、治療に使っている病院があるけど、確固たるエビデンスはない。武漢で使ったというけど詳しい報告はない、大量に飲んでも予防にはならないなどなど、おそらく専門家に取材した結果、すごいビタミンC点滴に対してネガティブな、どういう意図で記事にしたのかよくわからない記事になっている。

次にニューヨークポストの記事を見ると、Dr. Andrew G. Weber という呼吸器内科の医師がビタミンC点滴が有効だ、中国でも使っていたとアピールしているもよう。ただし、病院の広報担当は、ビタミンC点滴は、どこでも使っていますよ。具体的には担当の医師が決めていますので、よくわかりませんと言っている。

私的なチェック法としては、特定の一人の医師だけがやってる療法は疑ってかかった方がいい。あちこちまわって、ようやく診断が出来る、特別な治療をやっている名医に巡り合ったというのは、あんまりよくない結果になりがちなのだ。

記事を読む限り、Weber先生が一人でどさくさに紛れてやってて、メディアにアピールした可能性が高い。このニューヨークポストの記事がイギリスの大衆紙などにも転載されて、さらにツイッターに載って広がったようで、カナダのテレビ局CTVは、根拠のない話ですよと検証記事を上げている。

カナダはイギリスと同じく国家健康保険システムを持っているので、根拠がない治療については、わりとビシバシ警告するのだ。

つまりは、大衆紙とツイッターのせいで、もともとあんまり褒められないようなフリンジ医療が拡散されて、テレビニュースが検証を流すまでになってしまったということだったようだ。この状況では、NYでもコロナの治療に使われていますというのはかなり恥ずかしい感じである。


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