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私がどうしても最後に取り戻したいものーホテルで働くー

私はホテルのフロントで働いています。今働いているホテルは3つ目で、日本、カナダ、イギリスと3ヶ国で同じ仕事をしています。

ホテルのフロントの仕事が大好きです。

いえ、大好きでした。

世界中から来た人と出会えて、自分がちょっと何かしてあげたことで誰かの役に立ったり喜んでもらえるなんて、なんて素晴らしい仕事だろう。と思っていました。

特にチェックインの時に「なんとなくお互い好きだな」と思うゲストがいます。

心が通う瞬間があります。

どこから来たのかは全く関係なく、感じ取れる何かがあるのです。


一度、イタリアから来たLauraさんとその息子さんをチェックインした時

「ホテルの場所がわからなくて迷ってたくさん歩いて来た。」とお疲れの様子でした。

何気ない会話をしながらチェックインを終わらせると

"I was really tired but I feel much better talking with you. You are great. Thank you." (すごい疲れてたけど話してるうちに気分が良くなった、ありがとう)と言われました。

特別なことをしたつもりは何もなかったのですが、そう言われて私も嬉しくなりました。

ロンドン市内を観光すると聞いていたので

「Hi Laura, 昨日はチェックインの時に色々と話せてよかったよ。ロンドン観光楽しんでるといいな。何をしたか話し聞かせてね」と短い手紙を書いてチョコレート(ホテルで大量購入している普通のチョコ)と一緒に部屋に届けておきました。

次の日Lauraさんがやってきて「Sayaka! 手紙ありがとう。◯◯と◯◯行って来てこんなことしたよ。すごく疲れて部屋に帰ったらチョコがあって生き返った!」と教えてくれました。

「明日は帰るけどSayakaは何時からいる?」と聞かれましたが、遅番の日だったので会えないかなと思いました。

そして帰る日、チェックアウトをして荷物を預け、飛行機まで時間を潰していたLauraさんは私のシフトを見計らってやって来ました。

「Sayakaに会うためだけに戻って来た。Sayakaに会えて本当にラッキーだったからお礼が言いたくて」と手紙と5ポンド札も渡してくれました。

お金は気にしませんが(もちろん嬉しいですよ笑)

自分がした「小さなこと」が誰かを喜ばせる、そしてそれを見た自分も嬉しい。


誰かに感謝される時の多くはこれなんです。

すごく小さなことをした結果、大きな違いを生み出す。

「この人に優しくしたい!」と思う人がいれば、何をしてあげようかと自然と考えるくせがありました。

ホテルのポストカードの裏に短いメッセージを書くなんて3分もあれば終わります。

部屋に戻ったゲストが手紙を見つけ

「あ、昨日チェックインしてくれた人だ。話した内容覚えてくれてたんだ」と思うだけで少しだけ良い思い出になるでしょう。

それがきっかけでまたフロントに話しに来てくれるとお互いにちょっと良い時間が過ごせますしね。

観光をした際にプレゼントを買って来てくれる方もいます。限られた旅行の中で私のために時間を割いてくれるなんて、とてもありがたいことです。

日本人の方で多いのは、自分用に持ってきた日本食やお菓子をチェックアウトする時にフロントにお手紙と一緒に置いて行ってくださる方です。


もちろん全員にすることはありませんが、たまに自分の中から「どうしてもやりたい」と湧き上がってくるものがあります。


最初の方でホテルの仕事が大好きでした。と書きました。

1ヶ月後にはこの仕事をやめます。



精神的に鬱っぽくなり病んでる気がするので一度離れたいです。

自分で気づかないうちにバックオフィスで怒鳴ったことも何度もあります。

もともと導火線は長く突然キレるなんてしたことはありません。

数ヶ月前から今までとは違うと感じ始めましたが自分の感情を殺して働いてきました。

大型ホテルで忙しい、マネジメントや新人の教育が上手くできていない、人がどんどん辞めていくという問題もあり

それまで感じていなかったストレスが自分の中にたまったようです。


でも辞める前にどうしてももう一度、前の気持ちを取り戻したい。

「人を喜ばせるのが好きだから」と言うと聞こえは言いですが、結局はゲストのためじゃなくて自分のためでもあります。誰かが喜んでるのを見ると嬉しいからです。

少しでも仕事を楽しく、そして気持ちよく過ごしたいだけです。


どうか最後にまた良い出会いがありますように。

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