見出し画像

事業会社の中でAI導入企画を行うことになったら知っておくと良さそうなこと

※この記事は SB-AI Advent Calendar 2019 の 6日目 の記事のようです。
* SB-AI部については 2日目のkmotohasさんの記事 に詳しく書かれています

このnoteは、唐突にAI導入企画の指示を受けてから約1ヶ月で社内プロジェクトを立ち上げ、1年半以上かけてようやくシステムリリースまでこぎつけた個人からお送りする、単なるひとりごとです。

TL;DR (長すぎて読めないよ)

というわけで先にtitleの「知っておくと良さそうなこと」3つです。

1. 学ぶことを厭わずAIについて良書や人から学び、AIに求めるものをはっきりさせておく(十分なROIを考えられる分野は限定的)

2. AI活用基盤を整えられるよう、外部情報などを使いつつ早めに説得をがんばった方が楽 → まずは試せるよう全体を レベル2

3. 時間をかける泥臭い作業は避けられないので、見越したスケジュールを立てつつ低減策を練る

1. については、河本先生の本 がとてもとてもオススメです。
現状、AI活用 ⊂ データ活用と言って良いかと思い、時間が経って読み返すごとに考え方動き方の気づきが数多くあります。

2. については、AIはまだお金も時間もかかることが多く、最低限「業務知識」「社内政治知識」「技術知識」に強い人がいないと回らないので、個人で全部がんばろうとするととても大変です。(とても大変です。)
「レベル2」の環境は整えて行かないと現場は苦労すると思います。
https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/013_gaiyo.pdf
スクリーンショット 2019-12-06 20.16.03

 3. については、開始時の環境によるとは思いますが、単純にまだデータ取得加工の時間がどうしても必要だったり、検証パターンがすぐに膨れ上がり結果もやってみないとわからなかったり、チーム外の調整や依頼実行までに平気で数ヶ月かかったりするので、予定外を予定に組み込みつつ、許容範囲に抑える工夫が必要です。

ぜひ皆さんも先達の知恵をお借りし、実業務へのAI導入/データ活用による新たな意思決定の体験と、各種自動化技術を用いて作業からの解放を推進していただければと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

ということで、以下は長い蛇の足です。

あなたはどなた?

note投稿はじめましてな @sawashitashi です。
SBグループの流通事業会社で、たぶんITエンジニアをしています。

元々関西のシステム開発会社にいた頃からずっとITエンジニアなはずですが、この先に何をするか考えまとめたり、プロジェクト内外の調整をしてたり、プレゼン資料描いて経営向け報告してたりするのが仕事の大半になっているようです。
* 最近突貫作業の必要があり、ペアプロ(※ビジネスロジック部分について口出しするだけ)ができて楽しかったレベル。速く正確にコード書ける人はとても格好良いですね。

最近内向けのやりとりばかりで外向けの発信をほぼしていなかったので、時々でも学んだことを整理して書いたりしないとなと思う次第です。
* 「結局、人生はアウトプットで決まる」らしいですよ

前提

自分が2年前(2017/11)に転職する前は、AI/機械学習の流行りについて何も知らず、ほぼ初心者の状態でした。
似たような境遇の人が多少なりとも止まらずショートカットして楽ができるよう、一例として情報を拾ってもらえればと思いこれを書いています。

社内プロジェクトの流れ

個人としての発信なのでかなりぼかしつつ。
おおまかなタイムラインは以下のとおりでした。

■1. 試験プロジェクトの立ち上げ
2018/02: 役員の方から、ベンダーに依頼していたAI導入が進んでいないことを聞く→「社内で何かできない?」からスタート
2018/03: ひとまず何ができそうか考えつつ、軽く現場の課題ヒアリングを行う
2018/04: 社内プロジェクトTを立ち上げる(実働工数1.4人〜)
2018/04-09: 課題ヒアリングと小規模検証の繰り返し(月次で報告:以降継続)

■2. 業務導入プロジェクトとして本格化/システム構築
2018/10-12: 各種社内調整/サブプロジェクトYを立ち上げる(実働工数3人弱〜)
2019/01-03: 予測モデルの精度向上/データ基盤づくり(以降継続中...)
2019/04-06: 予測自動化(AI)、業務自動化(RPA)の仕組みづくり(実働工数5人弱〜)
2019/07-10: 試験利用と継続改善、監視評価の仕組みづくり
2019/11/06: 一部署での本格業務利用開始(継続中)
2019/02-04(予定): 他部署への利用展開開始/以降拡大

ここでは「1. 試験プロジェクトの立ち上げ」に関して掘り下げて書きます。

プロジェクト立ち上げ段階に考えたこと

こちらのプロジェクトはそもそも「AIを使って何か面白いことはできないか」レベルの話から始まっていたため、利用可能な資源はほぼありませんでした。
ただ幸いなことに、データ分析に詳しいコンサルの方に短時間の相談役として入っていただけため、その方と何を行うかの方針立てを行い、順次ヒアリングから始めました。

1. 期限を決め、その中でやれることをやる
2. 各業務プロセスの把握に努めつつ、現場から課題(なやみ)を見つける
3. 課題を実現可能性と実現時効果の二軸でマッピングし、小さく検証する

また、話の始まりから「AIを使って」が制約としてかかっていますが、最初からこれを前提としてヒアリングすると得られるものも得られないので、まずは単純に業務上の課題(なやみ)を知ることに努めました。

なお、最初から業務に詳しい人がチームメンバーにいれば、4日めの@nagamenさんの記事のように、「いま業務はAI/RPAを用いて効率化できるか」の視点から入れます。

1. 期限を決め、その中でやれることをやる

いわゆる「タイムボックス」の考えで。
業務ヒアリングやデータ分析には限りがないため、まずは広く見るための枠を区切り、限られた時間の中で深掘りの価値出そうなところにあたりをつけるのが良いかと思います。

なお、今回の初期プロジェクトでは、1ヶ月ごとに経過報告/3ヶ月ごとに継続判断を行うこととしていました。
経営層の人に1ヶ月ごとに報告できるだけの材料を作りつつ報告資料も作るのは少々重いですが、話を整理しながら作業を進めることになるので良いと思います。

2. 各業務プロセスの把握に努めつつ、現場から課題(なやみ)を見つける

会社の大きなレベルの課題(願望)としては
売上を増やしたい」「廃棄ロスを減らしたい」(利益を増やしたい)
といったものがありますが、これをそのままいきなり
AIを使って解決して!
と言われても当然どうにもなりません。

自身が会社に所属して日が浅く、直接大きな課題の分解もできないため、まずは現場のライン長の方(課長や部長等)から、各部署の業務内容について伺いました。

その上で、(主にデータを用いる範囲で)業務上の課題解決の手伝いができる可能性を伝え、
「どのような困りごとがあるか」
「それが解決できるとどのように嬉しいか」
といった内容について、現場のメンバーの方から粗く広く課題を集めていただくこととしました。

後述する3.の検証と交互に行うこととなりますが、最初に挙げていただいた課題は当然ながら粗すぎることが多いので、そこから仮説立てして会話機会を持ち、実際に解決できると良いなやみを見つけています。
(書いてくれる人は少なくとも「できれば解決したい」という意思があるので、会話のきっかけを持ちやすいです)

3. 課題を実現可能性と実現時効果の二軸でマッピングし、小さく検証する

2.で出てきた課題について内容を整理し、
「実現可能性」(フィージビリティ:横軸)
「実現時効果」(インパクト:縦軸)
を考えマッピングします。

引用元: 成功するアナリティクス案件の選択とは 2014.10.30
スクリーンショット 2019-12-06 15.51.51

どこに置くかは主観が大きいですが、
「解決時の単純金額効果」「解決の手段/技術」「横展開の可能性」
など、自社での優先度に応じた項目を追加して考えると、ある程度は客観的にマッピングできるかと思います。

実現可能性が高く、効果も大きいと目される方が「成功」に近いため、まずはその想定が正しいかどうかをデータや詳細ヒアリングなどから裏づけしにいきます。

現場から集めた課題は経営レベルで見ると小さなことが多いため、それをどう経営インパクトに繋げるかが、投資予算を確保して実際のプロジェクトにできるかの分水嶺かと思います。
最初から「ここまではお試しで使って良いよ!」と研究予算を確保してもらえる環境であればとても良いですが、やはり見込でも効果を示せないと投資にならないので、「どこに向かうか」の絵描き=企画 はとても重要なフェーズです。

ここまでで結果が出れば

あとは実際に「成功」に近い課題を順次解決していくだけです。
と言っても後ろも綺麗に進んでくれるわけではなくスタートラインに立った段階で、ここからも試行錯誤や泥臭い作業は続きますが、先をある程度は作れるのでプロジェクトらしくなると思います。

どのような会社でも(少なくとも自動化の)テーマが全く無いことはほぼありえないと思うので、あとは費用対効果の見込と将来的な競争価値をどう示せるかということになりそうです。

その他初期段階に行っていたこと

当初自分が技術知識も業務知識(ドメイン知識)も不足していたため、関係しそうな書籍を片っ端から読み漁りました。
一般書籍は高くても数千円程度なので、流し読み程度でもある程度数を読んで共通部分を抜き出せると、汎用的な学習になり良いです。
画像3

また、もともと「商品企画にAIを活かせないか」という話もあったので、普段は手を出さないアイデア系の書籍も読み漁りましたが、割とそのままAIテーマを考えることにも活きているように思います。

その他、やはり日本の会社だと先行事例があると話をつけやすいので、データ分析のレベルでどのような活用がなされているのかも調べ漁りました。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h25/pdf/n1300000.pdf

画像4

先日leadgeさんが活用事例の検索プラットフォームを立ち上げられており、このようなサイトが当時あればとても助かっただろうなと思います。

もっと早めに済ませていたかったと思うこと

AI活用推進を経営レベルで本気で考えているならば、業務に利用しているデータを一箇所に集めた「データ基盤」は整えておきたいところです。
結局多くの場合、分析したいテーマに応じてデータを集め直すことにはなるのですが、たとえば部署ごとの売上情報や営業情報など基本的なものにも自由にアクセスできないと、仮説を数字で検証する速度が段違いに落ちます。

また社内の「仲間づくり」を進めたり、上長をもっとうまく交渉の場に載せられたりすると、違った進め方ができたかなと思うところです。
いまはあらためて小さな1つの成功事例を作りなおし、それを元に広げていく展開を描いていますが、先に会社全体のAIリテラシーを上げる方向から始めて成功している会社も見ます。

さいごに

まとめは先に書いたので、ここは感想。

「AIが仕事を奪う」などと時々見ますが、「奪ってくれるなら奪ってくれる方が良いんじゃ?」と個人的に思うところです。(雇用維持とは別問題で)

新しいことや面白いことを考えたり生み出したりするのが人の価値になり、人が行うことに意義を見出せない作業を人が仕事として続ける必要は無いと思うので、「人だからこそ」の仕事を作っていければ良いなと。
思考は柔軟に、固執しすぎないように、新しいことを学び続けられる力を持っておきたいものです。

全然関係ないですが森博嗣先生の書かれている様々な考え方はとても良いと思います。

まとまり不足はごめんなさい、コメントいただければ適宜回答や修正します。

参考リンク


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?