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眠ったふりして

本日11/4に、ニューアルバムから「眠ったふりして」が先行配信され、MVも解禁された。
楽曲の内容についてはMikikiの連載でも語っているのでそちらを読んでいただければ。


この曲はバンドにとってかなり大事な曲なので、ちょっと曲の周辺のことについて話してみる。

遡ることおよそ8年前、僕がまだ大学生の時分に「ヒミズ」というバンドをやっていた。
その時のメンバーはヘルシンキの前ドラムのあべっち、The Whoopsの宮田、そしてHalo at 四畳半の白井。
当時は今よりも、シンプルに売れたいという気持ちが良くも悪くも強かったと思う。
やりたいことはやっていたし、組みたての頃は特に中央線沿線のバンドのアングラな雰囲気を持ったバンドだったが、楽曲の持つエネルギーとかポップさとかはオーバーグラウンドでも通用するような雰囲気があったと手前味噌ながら思う。ロールモデルはくるり、フジファブリック、andymori、クリープハイプなどであったから、彼らのような道筋を思い描いていた。
3枚目の作品である「Night On The Planet」を作ったのが確か、2013年の冬だったと思うが、その時は以前より更に売れたいという気持ちで曲を作って、自分の中でかなりイケる!と感じた4曲を収録した。

・レンタルガール
・ビートニクの恋人
・人のソックスを笑うな
・バンドワゴネスク

この4曲。
バンドワゴネスクはご存知の方もいると思うが、ヘルシンキのデビューシングルでもある。これもこれでストーリーがあるのだが。


この中の「人のソックスを笑うな」という曲が、今回解禁された「眠ったふりして」の原曲である。

お金もないので普通のリハスタに導入されていた即レコとかいうレコーディングの設備でいっせーのでオケを録って、そのあと宮田の通っていた埼玉大学の軽音部の部室に忍び込んで歌録りをして、あとは宮田がミックスをした(即レコのシステムわからなさすぎてベースの録り音がめちゃくちゃ小さかった)。

そんなこんなでCDを作って、今は亡きMy spaceにアップしたり友達に売ったりライブで細々と売ったりしていた。
自分の持つ才能については根拠のない自信があったものの、それ以前にとんでもなく歌も楽器も技術がなかったしステップアップしていくためのノウハウもなかったため(あとルックスも)、周囲からの褒め言葉をちらほら聞くだけで何も事態は変わらなかった。冬が終わり春が来て、宮田も白井も辞めることになって(あんまり時期とか覚えてないけど)、宙ぶらりんのまま大学を卒業してフリーターになった。
ヘルシンキ結成前夜の初夏にヒミズの解散ライブは執り行ったが、既にバンドとしては終わっていた。何も起こらなかった。

その一年後にヘルシンキはなんとかCDデビューすることができ、ここから世界が変わっていくと思ったのも束の間、メンバーの入れ替わりなど不安定な時期が多く今日までずっと前途は多難だった。


今ようやくこのメンバーになって、なかなか他にはいないってくらいの信頼関係でバンドをやれていて、作曲においてもメンバーに託す度合いが増した。自分への根拠のない自信が、他人への確かな自信に変わっていったような気がする。だからこそ今回、この曲をタイキ主導でアレンジするという決断にも至った。

タイキとはヒミズの頃から友達だったが、タイキ曰くヘルシンキに加入する決め手というか、僕の才能を信じるに至った曲がこの曲だったらしい。
そんなお互いにとって思い入れのある曲を時を経て蘇らせることができてとても嬉しい。

アレンジは正直渋すぎて音楽ファン以外の耳をすり抜けていってしまうかもしれないけれど、ちゃんともし聴いてもらえる機会があるとすればきっと沢山の人の心に入ってくる曲だと思う。そう願っている。


有村藍里さんの話。


テレビなどでお見かけしている時から、ルックス的な話にはなってしまうけれどとても素敵な人だなと思っていた。

気になってSNSなどでも追ううちに、テレビでは見せない色んな面がある人なんだなともわかった。

自分で自分の未来をより良い方向へと切り開いていこうとする姿勢もとてもカッコいいなと思い、気付けばファンになっていた。
僕は女性でもカッコいいなと思えるところがある人が好きだ。
年齢が僕と同じだということもあって勝手に親近感を覚えてもいた。


話していいのかちょっとわからないのだけど、前に「King of the White Chip」という曲のMVに出てくれた飯田みなみa.k.aごはんちゃんと飲んでいた時に(ごはんちゃんも同い年でMVに出てくれた人たちの中でも数少ない今でも飲み友な人材。ごはんちゃんもぶっ飛んでてとてもカッコいい)、有村さんの話になって、ごはんちゃんと友達だと聞いた。

それだけの話ではあるが、微かな接点が生まれいつか自分たちのMVに出てもらいたいなと思っていた。でも出てもらうからには有村さんにふさわしい曲かつふさわしいタイミングじゃないと駄目だなと思っていた。


それから数年経ち、「眠ったふりして」が完成して、ふとこれを有村さんで撮りたいと思った。


今だなと思った。


監督のたけちゃんの話。


たけちゃんはタイキの大学のサークルの同期で(つまり稲葉の先輩)、いつからかは忘れてしまったが以前から友達だった。

ヒミズの曲もヘルシンキの曲も好きでいてくれて、会うと最初の頃はいつも恐縮した様子で接してくる感じだった。


数年前からカメラでちょこちょこ写真を撮り始めていることは知っていた。

タイキのもう一つのバンドであるgroup2のアー写を撮るようにもなり、それもとても良くてセンスがあるなーと思った。

名前のけっこう知れているモデルさんなどもちらほら撮るようになってきたことも知っていた。

インスタで作品を見てみたらどれもとても良かった。写真のことはわからないけれど、素人ながらに良いなと思った。


前にtumblrで書いたこともあるのだけれど、自分のごく身近なところにそんなにゴロゴロ才能が転がっているわけがないとおこがましくも思っていたので、センスの良さははっきりわかるがとはいえ本気度とかはどれくらいのものなんだろうなどと不遜なことを思っていた。
しかし作品を見続けるうちに、これは普通に才能なんじゃないかと思い直した。

今回「眠ったふりして」のMVを撮るにあたって、何人か別の監督も候補として検討していた。
有村藍里さん主演で撮るということもあって、なるべく実績のある人の方がいいのではないかという配慮もあった。

そんななかで、たけちゃんに今回のアルバムにかつての「人のソックスを笑うな」が収録されるという話をしたら、物凄く思い入れがある曲だから自分に撮らせて欲しいと言ってきた。いろんな配慮とか事情があるのもわかるけど是非撮らせて欲しいと。


その時点で気持ちは物凄く嬉しかったしやってもらいたいなと思ったのだけれど、スチール以外での映像の実績がまだ少なかったしまともにそっちの作品も観たことがなかったので、即断は出来なかった。
一度事務所サイドも含めてプレゼンをしてもらうことになった。

企画書の作りが全てということではまったくないけれど、1週間弱くらいの猶予の中で仕上げてきた企画書とプレゼンが、今まで見てきた中で一番作り込まれていたし有村さんのことも徹底して理解してきてくれたし、その情熱に感動してその時に何としてもゴーサインが出て欲しいなと思った。


無事に企画書が通り、たけちゃんが監督を務めることになり、撮影も滞りなく終えて出来上がった作品を観て、本当にたけちゃんにお願いしてよかったなと思った。
8ミリの質感ももちろん、曲の雰囲気と有村さんの魅力を存分に引き出していた。


そんなわけで皆の思い入れが沢山詰まったこの曲を、沢山の人に愛してもらえたら幸いです。
アルバムリリースまでもう少し。
自分も周りの人もリスナーの人たちも、みんなが浮かばれるような何かが待っていればいいなと強く思います。

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橋本薫(Helsinki Lambda Club)
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