歯医者選びに失敗したらご飯が食べられなくなる話

 普通、歯医者にいったら虫歯が治るものだと思う。

 普通、何か変なところがあるといったら、ちゃんとチェックしてくれるものだと思う。

 でもまぁ、何にでも相性とか当たりはずれとかあるものなので、歯医者にもそういうものがあるのだろう。

 ひとつだけ言えるのは、歯医者は下手をすると内科とかより選び方に失敗するとえらいことになるので、よく調べた方がいいということ。

 己の反省と同じケースにあった方の参考事例として書いておきます。

 事の発端。

 上の奥歯にあったかぶせものが取れる。

 とりあえず平日の夜でも通えて、一応口コミサイト(話半分だなと思いつつも)チェックして、まぁ虫歯の詰めなおしくらいならいけるでしょ、という歯医者を選んで通い始める。

 その時一通りチェックされて、奥歯に結構な数の虫歯があることがわかる。

 親知らずはもういっそ抜いた方がいいと言われる。

 そして、かぶせものが外れた上の歯の虫歯をまず治療する。

 ここまでが前フリです。

 この後、何故か治療したはずの上の歯が痛い。

 が、それ以上に親知らずの虫歯が超痛い。急にどうした。お前そんなに痛い虫歯じゃなかっただろ。検診されるまで気付かなかったレベルの虫歯だったはずだろ。急にどうした。大変なので二回言ったぞ。

「あー、親知らず結構酷い虫歯なので、口の中の環境変わるとそういうこともあるんですよねー。上の歯も虫歯はきちんと治っているんで、響いてるのかもしれませんねー」

 と言われてそういうものかと思う。

 なぜ納得したかというと、歯石クリーニング後一週間くらい知覚過敏になったことがあったからなのです。冷静に考えたら、知覚過敏なら上の歯を治した時にクリーニングしてるんだから、その時になっていたはずだった。

 親知らず抜歯が私の都合もあって、痛みだしてから最速でも半月後くらいになる。その間ずっと歯痛。ずっと。マジか。

「とりあえず痛く無くする治療とか痛み止めとかは……」

「ないですね。抜いた方が早いです」

 抜くのだいぶ先じゃねーーーか。

 そんなこんなで、最速で抜歯に至ったのが4月も末頃である。

 何となくお察しかもしれないが、そう、抜歯後にGWを挟むのである。

 一応GW中も診察日があったので大丈夫と踏んだのかもしれないが、これが大いなる悲劇を生む。なぜなら、GW中の診療日が、ピンポイントで用事がある日だったからである。

 抜歯手術自体は、歯の根っこが若干曲がっていたせいで縫う羽目になったものの、無事終了。

 翌日、消毒したものの「まだ腫れてますけど3日もすれば良くなりますよ」と帰される。

 次の予約、抜糸の11日まで放置。

 私自身、前に親知らず抜いたのが記憶のかなたすぎて覚えていなかったのだが、普通は毎日、もしくは数日おきに消毒するものらしい。……うん、そうだよね……。

 この時点で、私の飲食が下手なのか、それとも…………なのか頬にべろべろしたものが何か張り付いている。後に抜糸前の糸と判明。初日の時点でべろべろいてったんだけど、これ、普通こうならないように短くしたりとかしないんだろうか。

 何が正解なのかわからないので、それは結構なのだけど、かなり腫れて、痛んでGW中の中日にあった平日、仕事後に電話して予約を入れてもらう。(ねじ込んだ形なのでちょっと受付の人困ってたけどすまん、こっちも緊急事態)

「糸がつっぱって腫れてるみたいですね。でも傷口は順調にふさがってますし、ちょっと早いけども抜糸しちゃいますね」

 ナチュラルに抜糸。

 いいのか、ここから四連休やぞ。一応診療日ありますっていっても、私がこられる保障はないぞ。

 とはいえ、この時点で一度痛みは改善する。

 上の歯もぼんやり痛いけど、これは何故?歯茎が腫れすぎて上までいってる?と休みの間悶々とする。

 GW明け、ここからが壮絶な歯痛との戦いである。

 急に、夜眠れないほどの抜歯痕の痛みに襲われる。ロキソニンがもうない。泣きながら朝まで耐える。

 慌てて歯医者に予約をいれる。やっぱりねじ込まれていい感じの反応がなかったが、こっちも必死なのだ、すまんな。

骨が露出してますねー

 はい????

 露出してますねー、じゃーないっすよ! 早めに抜糸しておいて!

 いわゆるドライソケットという状態で(下の歯を抜くとなりやすいらしい)、骨が見えている状態で治るのに時間がかかることに。ぞんざいに消毒して「次回の本来の予約の時に、もっかい消毒するね」と帰される。

 抗生物質もこの時はもらわず「あんまり出し過ぎてもダメなんで」とロキソニンオンリー。

 この時も、普通に上の歯も痛かった。

 そしてこの時にドライソケットが原因と納得したことが、後に大変な悲劇を呼んだ。

 そこから2日後、突如絶叫レベルの激痛に襲われる。

 どれくらい痛かったかというと、歯とかいうレベルではなくもう顔の半分が全部痛い。喉とか耳の奥まで痛い。最高潮の時は肩まで痛かった。ロキソニンがまるで効かない。2錠までは飲めるとネットで調べてもう1錠追いロキソニンしても1ミクロンも効かない。

 その時点で通常出社が無理だと思って、会社に半休の申し出をして朝に電話をしようとして気絶して気づいたら結構な時間だった。慌てて電話する。やっぱりいい感じの対応されない。必死。何とか滑り込み診療獲得。

 寝て一時的に痛みが鈍化していたが、駅まで急ぎ歩きしている内に痛み再発。脂汗をかきながら電車にゆられ、壮絶な顔で歯医者に駆け込む。

 あまりにもズタボロだったので、何かおののかれる。おののくな。

 どこが痛いですか、と言われても全てが痛すぎてどこが痛いのかわからない。上の方に痛いのがいってます、といって「オカシイナー」みたいな顔をされる。オカシイナーじゃなくて!

 何となく上が痛い気がするけど、まさか私も治療して「問題ないですね」といわれているはずの虫歯治療痕までは意識が及ばず(もう頭が痛さで死んでた)、ひとまずその手前の歯をクリーニングして様子を見る。

 消毒されて、抗生物質とロキソニン追加されて、原因不明のまま放逐。

 原因不明って!!

 お気づきかもしれないですが、この時点で私は数度にわたって「上の方が痛いんですけど」と訴えているのです。

 でも、この間にやってくれたことは、虫歯の治療残しがないか、助手さんの目視のチェックと、「ここかもしれない」と私が鈍った頭で示した場所のクリーニングだけです。

 そう、原因は親知らずの抜歯痕じゃなくて上の虫歯治療痕だったのです。

 何故それがわかったかというと、新しくもらった抗生物質を飲んだら「とにかく全部痛い」から「抜歯痕は意外と痛くなくて、上の歯が噛めないレベルで痛い」に移行したからです。

 即日また予約をねじ込む私。いい感じの反応は以下略。

 だって、聞いてくださいよ奥さん、この時点で私、食べ物を噛むどころか歯をきちんと閉じていられない状態だったんですよ!

 こっちだって歯の治療で半休とりまくるの気まずいし、こんな理由で給料減るのやだよ!!!!

 具体的に痛い場所が虫歯の治療痕あとわかって、ちょっと「えー?」みたいな空気出される。こっちだって「えー?」ですよ!

 この時点でやっと、上の歯のレントゲンを撮り直す。治療痕の歯が明らかに異常。腫れてるのは見てわからなかったんだろうか。

 ここでやっと原因が、「抜歯したせいでかみ合わせが変わり、真上にあった虫歯の治療痕の歯に負担がかかったため」と判明する。

 かみ合わせを合わせるために、治療痕の歯を削る。これで痛みがだいぶ引く。おめでとう、わたし。

 消毒されてロキソニン追加で帰される。とりあえずのロキソニン。

 ロキソニンは効くようになったけれど、この時点で私がまともに食べられるようになったものはおかゆ、ゼリー飲料、豆腐のみ。

 おかゆに入っていたサツマイモの皮に歯が負けた。

 インスタントのカップ焼きそばの麺にも歯が負けた。

 翌々日、やっと本来の予約(抜歯予定だった日)で歯医者に行く。

「残念ですけど歯の神経は抜かないとだめですね」

 はぁ、そうですか(微妙に納得がいかない)

「次の予約は最速で半月後ですね」

 はぁそうですか…………………………。


 歯医者変えようかな………………。


 あまり歯医者が頼りにならないので、自力で治そうかと思って消炎効果のある液体歯磨き買ってきて使ってみたら、どうやらあっていたらしく劇的に改善して、2日後にはうどんが食べられるようになる。

 3日後、肉が食べられるようになる。ツイッターで祝福される。ありがとう、そしてありがとう。でも本当は自己判断で治療をしようとか思っちゃだめだぞ!

 しかし、改めて考えると私は上の歯の治療が終わった段階で「何だか上がまだ痛いぞ」とはなっていたんですよね。

 しかもそれを伝えているのに、目視で確認しただけで終わってしまった。

 そして上の歯を治した直後に真下の親知らずが痛むようになったってさ。

 つまり、上のかみ合わせ調整が最初から悪くて、下の虫歯に当たるようになったから痛み出したのでは?

 ……………………。

 お前も、治療時にかみ合わせ調整した時に違和感に気付かなかったのか、という話なんですが、かみ合わせ調整やってた時は麻酔まだ効いていたんで、そこまで繊細なかみ合わせとかは正直わかりませんでした。

 麻酔切れた後も「何かぼんやり痛い」程度だったので、抜歯したことで決定的に何かがあかんくなったのだと思います。

 とはいえ、もし最初に「上が痛いんですよね」と言った時点でかみ合わせ再調整していれば、急に異常に痛むようになった親知らずの虫歯も、痛まなくなったのでは?という気がします。そして、それなら抜歯をGW前に急ぐ必要もなかった。

 という愚痴を友達にしていた。

「歯医者変えなよ……」

「そうだね、歯医者変えるか……私にはちょっと合わなかったね(遠回しな表現)」



 教訓:歯医者選びに失敗すると普通の食事が半月間できなくなる

 そもそも日常生活が困難になるので、本当によーーーく選ぼうね……。

 無駄に治療費がかさんだ半月間だった。セカンドオピニオンでまた金がかかる。

 ああ、どこかに5分で販促ポップが書けるとか、段ボールとマーカーとテープがあれば謎のオブジェが作れるとか、よくわからないスキルを買ってくれる先はないかな。

 いや、ライターなんだからライターの仕事探せよって話なんですけど。末端ライターの悲しみよ。(つまりあまりいい仕事がない)

 今日はサラダチキンに歯が勝ちました。やったね。

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