sawa
2019/05/27 21:51
第1部も終わったところなので、note連載中のオリジナル小説『ルネの首』シリーズのキャラクター紹介をします。>>『ルネの首』小説本編はこちら【ルネの首シリーズとは】Twitterで不定期連載しているツイノベを、小説に再構成してnoteで連載しているSFストーリーです。生首ニートを自称する、首だけの謎生物ルネと、浮浪児のナオと、浮浪児たちのリーダーのセツェンが、人喰いの大きなクモから
2020/01/25 01:39
ずいぶんと長い夢を見ていた気がする。 夢の中で、セツェンは青と緑の髪をしていなかった。 まだ黒い髪で、隣にはナオと面差しの似た少年がいた。「なかなか下のこと覚えているやつ、いないからさ。お前の本当の名前がわかって嬉しいな」 ――トキ。研究所で出会った、ナオの兄。 恐らく、セツェンにとっては唯一友人と呼べる相手。「トキ、ぼくは、どうすればいいだろう」 自分の声が、いまよりも幼い。「
2019/12/05 00:09
上層にある研究所は七つ。アラク――ナオが鉄グモと呼んでいる例の生物の研究だけではなく、駆除対策、エネルギー転換、外殻の活用など、様々な研究を行っている。食料の生産や医療研究なども研究所が行う。 その中でも、セツェンやサリトのいた第六研究所は、上層の『宗教色』が特段に強い場所だった。つまり、人間至上主義者のための研究所である。 人間の手で全てを成す、という目標の元、アラクの掃討も人間が行うべき
2019/11/26 20:37
結論から言えば、ナオは死ななかった。 ただ、生ぬるい液体が顔に落ちてきた。 見上げると、よく知る青と緑のグラデーションの髪の毛がそこにあった。 思えば、ナオの記憶はこの青と緑の鮮やかさから始まった気がする。それより前のことはおぼろげで、唯一良くしてくれたはずの兄のことすらよく思いだせず――。「セッちゃん!」 アズの声が聞こえる。意識が現実に戻る。 青と緑の鮮やかさの中に、赤が混ざる。
2019/11/04 22:51
人は慣れる生き物だ。最初は及び腰だったナオも、一か月もたてばだいぶ鉄グモに動じなくなってきた。 ブルとグリは、声の届く範囲であれば少し離れていても命令を聞く。だから鉄グモを発見した時点で、ある程度足場が確保でき、逃げやすい高所を探す。 逃げやすい場所がない場合は、鉄グモが即座に攻撃をすることができない後ろ側から、ブルとグリに命令を出せるギリギリまで近づいてから遠隔攻撃。そして声に気付かれたら
2019/10/01 23:28
それから少し経った後、急に甲高い警告音が部屋に響き渡った。「うぎゃあ!」「ありゃ?」 驚いて飛びあがったナオとは裏腹に、アズは緊張感もなく「キューブAB」と呼びつける。やってきた黒い立方体二つは、アズの目の前に光のウィンドウを表示した。 どうやら街の地図らしい。「セッちゃん、下層F地区一〇番、ランクF」「……練習台にちょうど良さそうなのがきたな」「え、え? つまり……」 混乱する
2019/09/18 22:23
それから更に数日後、アズに呼ばれて、ナオはセツェンと一緒に彼女の家に行くことになった。 一応、ルネも背負っていく。置いて行こうとしたら、激しく拗ねられたとも言う。「救済機関の登録は済ませておいたから」「誰にも会ってないけど、ぼく」 この数日間、セツェンとルネと子供たちとしか顔を合わせていない。この面子で同じ家に住んでいるだから当たり前だが、今日になってアズに呼ばれたわけだから、ナオは何も
2019/08/20 22:23
「あれ、ナオちゃん……とリタさん。珍しい組合せだね」 アズは出迎えるなり、目を丸くした。それはそうだろう。ナオだってまさかリタと一緒になるとは思わなかった。『僕もいるからな』「わー、ルネ君さすがぁ。ホイホイ出歩いてくれるわ……」『褒めていないのは理解した』「バレてないならいいけどさぁ」 愚痴を言いながらも、アズはすんなりとリビングに通してくれた。つい最近まで、子供たちと一緒に雑魚寝をし
2019/08/10 00:16
それからしばらくは、平穏な日々が続いた。 子供たちは、ここのところずっと、ルネに算数を教わっている。今日は掛け算と割り算。「簡単な計算はできた方がいいけどさ、掛け算割り算はまだ難しいんじゃないの?」『驚け、ナオ。イサは算数が得意なんだ。掛け算の九九は全部覚えたし、割り算も簡単なものならもうできるぞ』「え、マジ……?」 ナオは割り算が苦手だ。思わず手のひらで指を数える。四歳も年下のイサに
2019/07/24 21:51
「ねぇ、ルネ先生さー」 夜になって、子供たちが寝静まったのを見届けた。その後、セツェンが仕事に行ったのを確認して、ナオはルネを呼び出した。 セツェンは、今日は巡回するだけだと言っていたが、鉄グモのいそうな場所を確認して帰ってくるだけにしても、一時間は戻らないだろう。 人間と同じような睡眠を必要としないルネは、ナオの呼びかけにすぐ答えた。『君の方から先生扱いをしてくるとは、どういう風の吹き回