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来たるインフレ時代にどう備える?

2022年度より高校での金融教育が始まりました。ここでは、お金を通した社会との関わり方や、子どもの未来のために何をすべきかなど、学校の授業では教えてくれない「お金」と「生きる力」の育み方についてご紹介します。
 教えてくれるのは、さわかみ投信確定拠出年金部の計倉宗州(とくら そうしゅう)です。ファイナンシャルプランナーと企業年金総合プランナーの資格を持つお金のプロです。11歳の息子を持つ父である彼に、お金との向き合い方や実践しているお金の教育に関して根掘り葉掘り聞いてみました。今回は、物の値動きの仕組みや、それが私たちの生活に与える影響について。

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物の価格はなぜ上がるのか

— 2022年、レトルト食品や食用油など、様々な物やサービスが値上げされましたね。巷ではインフレ時代の到来と言われていますが、物の価格はなぜ上がるのでしょうか。

計倉: 最近は円安が進み、輸入品の価格も上がっていますね。インフレというのは継続的に物の価格が上がる状況のことを指します。インフレが起こる要因はいろいろあるんですが、一般的にわかりやすいのは、ある物に対して欲しいと思う人が、売りたいと思う人よりたくさんいたら価格が上がる“デマンドプル型”と言われるものであったり、材料費が上がることで物の価格が上がる“コストプッシュ型”と言われるものがあります。

— この数十年、日本ではデフレが続いていましたが、なぜここにきてインフレが進んでいるのでしょうか。

計倉:もともと資源・エネルギー価格の上昇などコストプッシュ型のインフレと、コロナ危機からの需要回復がもたらすデマンドプル型のインフレが相まって、世界各国で記録的な物価上昇率となっているところに、ウクライナ侵攻が起こったことがさらにインフレを加速させたと言えるでしょう。資源大国のロシアは原油や天然ガスなどのエネルギーの輸出国であり、またロシアとウクライナはともに小麦やトウモロコシの主要な輸出国となっています。紛争が長引き、それらが手に入らないとなると、需要が供給を上回り、物の価格が上がってしまいます。
 また、今までは少々原材料費などが上がったとしても、企業が頑張って商品の価格を上げないように工夫を重ね、利益を削りながらでも価格を据え置こうと努力をし続けてきました。それがさすがに限界を迎えつつあるのではないでしょうか。
 特に、他社の商品と差別化しにくいものというのは価格を上げにくいんですよね。一方で私たちの生活に必要なものや、「ここの企業のものしか買いたくない」と思えるものを作っている企業は強いです。いわゆるブランド力が強いってことですね。海外の企業の場合だと、競争力のある商品は強気で価格を上げてるんですよ。円安になると人気のあるブランド品の価格が上がることがありますよね。

— 確かに、お気に入りのブランドであれば、多少値上がりしても欲しいものは欲しい…。

計倉:そう考えると、今の日本においては日用品や食品の価格設定自体が低すぎると思っています。「 高くなったら選ばない」といったように、日本の消費者の目が厳しいという表れだと思うんですが…。値上げをすると買ってもらえないという恐怖心を持っている企業は多いのではないでしょうか。

― そうですね。こだわりがない物に対しては、価格で選んでしまいがちです。

計倉:実は“ステルス値上げ”と言って、見た目は一緒でも内容量を減らすような値上げがすごく行われているんですよ。洗剤やヨーグルトやスナック菓子など…。ポテトチップスの袋を開けて「中身これだけ!?」って驚いたことないですか?(笑)

― あります! 昔はもっとパンパンに入っていたような…。とはいえ、家計のことを考えると物価が上がるのは苦しいです…。


「物が安い」ことが本当に幸せなのか

計倉:でも、物が安く買えることってほんまに嬉しいことばかりなのでしょうか。
 ある商品の価格を下げるために、何を下げるかということなんです。削ることができるコストとできないコストがあるじゃないですか。
 例えば金融機関に支払う利子や法人税などのコストは企業の意思だけでは下げられないですよね。一方、人件費や材料費は下げようと思ったら下げられます。材料費の場合、仕入れ先に値下げの交渉を行い、そちらに苦しい思いをしてもらうか、原材料の質を下げるか。人件費で言うと従業員の給料を下げたり人員削減することなどが考えられます。

― 自分の家族や周りの人がその企業に関わって苦しい思いをすると考えると、「物が安い」ことが本当に幸せなのか…と思いますね。

計倉:また、物の価格が下がるということは、その売上が下がるということですよね。ということは、日本経済全体の落ち込みにもつながります。逆にインフレの場合は物の価格が上がるので、企業の売上も上がり、日本経済的には活性化される。だから日銀は、景気が良くなるように、消費者物価の上昇率(インフレ率)を年2%とする“物価安定の目標”を掲げ、目標の実現に向けた金融政策を行っているのです。

来たるインフレに備えて

― では、私たちは来たるインフレ時代にどのように備えたら良いのでしょうか。

計倉:究極的に言うと、自給自足をしてる人だったらある程度対応できるのかなと思うのですが、それができる人ってほとんどいないですよね。だとすると物価の上昇以上に収入を上げる必要があります。
 そう考えると、自分のスキルを上げて企業から必要とされる人となり、給料を上げるのが一番大事だと思います。自己投資ですね。

― 生活に必要な商品や差別化できる商品を持っている企業は値上げに対応できる、というお話と同じですね!

計倉:そうですね。もう一つが将来のための投資です。銀行にお金を預けていても、インフレでお金の価値が下がってしまうので、結局資産としては目減りしてしまいます。資産を増やすためには、お金にも働いてもらいましょう。

― お金に働いてもらうというのは?

計倉:株式投資を例にあげると、社会に必要とされている企業や自分が好きな企業に投資をし、その企業が成長して利益が上がれば株価が上がり、配当などの形で返ってくる。その循環で資産形成ができ、結果日本経済の活発化にも繋がります。今すぐにすごく儲けるために投資をするというよりかは、将来のために時間をかけてコツコツ行う“自分の資産を守るための投資”という考え方の方が合っているかもしれませんね。
 私自身、さわかみファンドを20年間続けていますけど、もうここまでくると生活の一部と化してます(笑)。ライフステージによって積立に回せる金額は違いますが、ライフイベント(結婚資金、車の購入費用、マイホームの頭金)でうまく活用できたことを考えると続けてきてよかったと思います!
 もちろん、無駄な支出を控えることが大前提です。安ければ安いほど良いというのではなく、自分にとって本当に必要なのかを考えて選んで買うという習慣をつけることは大切だと思います。


【計倉 宗州(とくら そうしゅう)プロフィール】

さわかみ投信株式会社 確定拠出年金部 部長AFP/2級DCプランナー
茨城県つくば市在住。都内勤務。1児(小4♂)の父。
生まれも育ちも関西ですが、2008年に現職に転職のため上京。
いまだに東京に慣れてません。
基本的に関西弁しか話せません。趣味は料理です。


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