金曜日のお菓子は格別

"Villads fra Valby køber slik" af Anne Sofie Hammer, Dina Gellert, 2016, Høst&Søn 「ヴァルビューのヴィラス お菓子を買いに」アンネ・ソフィ・ハマー作 ディーナ・ゲラート絵

デンマークで園児、特に男児を育てている親なら知らない人はほとんどいないのではないか、というほど人気のお話シリーズ"Villads fra Valby"。人気が高いので、映画化もされ、子ども向け演劇にもなっている。また保育園や学校でもよく読み聞かせされる作品。アストリッド・リンドグレーンの「エミールはいたずらっこ」の現代版シリーズとも呼べるのではないかと思う。

写真で紹介している作品は、ヴィラスがお菓子を買いに行くというお話。金曜日、晩ごはんのあとデンマークでは「ディズニーショー」と呼ばれるテレビ番組を見ながら、普段は食べない甘いお菓子(グミ、チョコ、キャンディなど)を食べても良い、という習慣が昔からあるのだけれど、ヴィラスのママは、今日は晩ごはんの後デザートがあるからいらないでしょう、とそっけない。そこに、遊びに来ていた友達のママが「買い忘れた玉ねぎを買って来てくれるなら、ついでにお菓子屋さんでお菓子を買って来ても良いよ」と提案。ヴィラスと友達のノア、お姉ちゃんのアメリエの3人は、子どもだけでお使いに行くのだけれど…

男の子の親にとってはあるあるなシチュエーション満載のこのシリーズ。女子にとっては「男子ってなんでそうなの?!」と突っ込みたくなるような場面、母親の立場からも「あー、男の子ってもう…」と思わず言いたくなるような場面がたくさん。こういうのって国を問わずに楽しめるんじゃないだろうか。

この「金曜日のお菓子の習慣」(fredagsslik)は、夫が子どもの頃からあったというから、もうずっとこの国の習慣なのだろう。ディズニーショーという番組も、毎週金曜日にいつも同じイントロで始まり、ディズニーのアニメが1時間ほど流されるという、たいして面白みも新しさもない番組。これも昔から、内容は違えど同じコンセプトの番組がずっと存在してきた様子。これを見ながら、お菓子屋さんで量り売りで買ってきたお菓子を食べる、というのが子どもたちの間での金曜日の至福の時間。これを親の一声で廃止されたり、中止されると子どもはとても悲しむ。このお話でも、ヴィラスが必死にお菓子を食べられるよう画策しているが、その心が痛いほどよくわかる子どもは多いだろうと思う。

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