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#SaveOurLife 記者会見より ー 寺田(都内認可保育園勤務保育士)

なんとかして耐えて、守りきらなければいけない場所

私は、東京都内の認可保育園で働く保育士です。

私たち保育士が仕事をする空間では、あらゆる業種で働くお母さん・お父さんにとって大切な、子どもたちの命を預かっています。 だから今でも、休園になっても仕事を休めない保護者がいるので私たちは働いているし、そのために給与はある程度は保障されています。

文化施設が一番最初に火をつけられ一番最後に消化される場所であるとすれば、保育の現場は、ずっと周りが燃えている中でなんとかして耐えて、守りきらなければいけない場所です。なので、ここにいる他の方とは違った訴えになるかもしれません。しかし、子どもたちの命を守り、子育てをする家庭を通して社会を支える保育の現場を、そこに火の手が上がるまで放っておくような社会にはなってほしくないので、少しお時間をください。

濃厚接触しないことはありえない

保育園はまず「濃厚接触しないことはありえない」場所です。 食事、排泄、睡眠、着脱、手洗いなどの生活の場面でも、遊びの場面でも、園で過ごす1日のすべてで、どれだけ感染リスクを下げるための環境設定をしても、感染のリスクは生じてしまいます。 大人がマスクをしていれば外そうと顔に手を伸ばす子もいるし、抱っこを求める子どもを突 き返すわけにはいかないし、1、2歳児は手で口を覆うこともなく人の顔の目の前でくしゃ みや咳をすることもあります。 子どもの育ちを保障する以上、0歳児がおもちゃを舐めることや、発達の中で人間関係を築 いて友達や大人と触れ合って遊ぶ子どもの行動を、完全に止めることなどできません。

その中で保育士は、自分が無症状の感染者で子どもたちに感染させてしまったらどうしよう...というプレッシャーを感じながら、事あるごとに手を洗い、毎日玩具や室内の消毒をして、帰宅後も休みの日もなるべく誰にも会わずに家で過ごし、日々の保育に向かっています。 様々な職種の保護者がいる中でも、今は特に、電車で通勤していたり、医療や食品、流通・ 運搬など、感染リスクの高い中で働いている方のお子さんを中心に預かることが多いため、 送り迎え時に少しでも和やかな雰囲気でありたいとは思いつつ、緊張感を消し去ることはできません。

命を守る現場が行政からほとんど助けてもらえていなかった

「保育園がクラスター化している」という報道は以前からありましたが、感染症対策のための正確な情報がなかなか得られず、マスクやアルコール消毒液などの備品も市場に出回りにくくなっていた中で、医療や介護の現場と同じように、命を守る現場が行政からほとんど助けてもらえていなかったし未だに不十分であるということは、強くお伝えしておきます。

その中で先日、緊急事態宣言は延長されることが決まりました。休園してくれないと在宅 ワークに切り替えられない、会社が特別休暇にしてくれない、という保護者もいる中、これまで育休中や在宅ワークで3月の末からいち早く登園を自粛してくださっていた保護者からは、「在宅での仕事と育児の両立に限界を感じている」「ずっと家にいるストレスで、子どもはよく泣くし、私はいつも怒ってしまう」「今預けることは実際どうなのか」という相談がたくさん来ています。園の保護者だけでなく、私の友人知人からも。また今の社会状況の中で、自営業で休業を余儀なくされている人、非正規雇用で職を失った人、育休からの復帰がストップしている人など、この先の収入についての目処が立たず、なかなか相談もできずに不安な日々をなんとか生きている家庭もあります。

各家庭がそれぞれにとって最良の判断ができるように

各自治体の感染状況や保育行政の対応があまりにも違うので、その場で無責任な返事はできません。 しかし、保育園の職員にも電車通勤の人がいること、保育園は環境設定にかなりの配慮(例えばテーブルや椅子や布団の配置をなるべく距離をとって行うなど)をしても、濃厚接触となる場面は避けられないこと、登園自粛してくれる人がたくさんいるおかげで職員も休みを取れていること、とはいえ保護者の方が倒れたりしては本末転倒なので「預けたい」と相談してくれてよかったということ、玩具や室内の消毒は毎日行っていること、散歩に出たりホールで集まって歌うなどの子どもの活動は制限されていることなど、各家庭がそれぞれにとって最良の判断ができるように、保育園の実情をお伝えしています。

保育士には、子どもの命と尊厳を守るために、様々な職業の方の社会生活を支える責任があります。だから私たちは、自分が感染するリスクを背負っても、保育の必要な子どもを預かります。 毎日朝から夕方まででも、午前だけでも、午後だけでも、週に2日だけでも、対策を十分にした上でお子さんを預かることで、少しでも保護者の方を支えたいし、それは虐待を未然に防ぐことにも繋がるからです。

子どもたちが安心して生きていくために

人間が育っていく保育の現場には、歌や踊りや演劇、絵を描くことや様々な素材で造形物を作ること、虫や草花を観察したり育てたり、旬の食材に触れて調理活動をしたり、みんなで ご飯を食べたり、歩いて散歩に出かけたりする、あらゆる文化的で豊かな活動が必要です。 だからこそ、感染拡大を止めるためにもう十分すぎるくらい協力をしているのに、補償がきちんとされず、ここでこうして声を上げて自分たちの命と生業を守ってほしいと訴えるあらゆる業種の方々を、私は一人の保育士として支えたいと思います。

子どもたちが安心して生きていくために、政府の方々は責任を持って、この国で生きる全ての人の生活が、過度な負担や不安なく成り立つように、ちゃんと協力してください。

【新型コロナウイルス感染拡大防止に努めるあらゆる人の仕事と生活を守る継続的な支援を求める署名】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfmg6jhOPO2P6uHGb2RcH4GWzCb7b3_cr1WLulJVUoCHv4E7g/viewform

Photo: Yosuke Torii