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【せんせいの声】第2回 ポンチョ先生の声

全国の学校の実態について知り、社会全体で新しい学校教育のあり方について模索していく土台をつくっていくため、#SAVE OUR SCHOOL in Japanでは先生方への匿名オンラインインタビューを実施し、【せんせいの声】というシリーズで記事化していきます。学校教育に携わる先生方が、いまどのような悩みや不安を抱え、またどのような期待を抱いているのか。今後の学校教育のあり方を考えるうえでのヒントが見つかるかもしれません。先生方の声なき声に、耳を傾けてみてください。

ポンチョ先生のステイタス


今回、インタビューに応じてくださったのは、私立の中高一貫校に勤務されているポンチョ先生(20代・女性)です。インタビュー実施日は6月1日で、オンラインで30分ほどお話を聞かせていただきました。


いまの状況について

ー現在の学校の状況は?

明日が入学式で、あさってから授業が始まります。分散登校が授業としては30分になり、同時に2クラスを見なければいけません。なので、まともに授業ができないし制限がかかります。ただ、せっかく分散登校で学校に登校させるわけだから、価値を与えないといけない。そのジレンマですね。先生方と相談しています。

まともに授業ができないけど、求められているハードルは高い

ー1コマ分が30分になったということでしょうか?

そうですね、密にならないように40人クラスを2つに分けて、違うクラスにいる20人と20人を同時に教えます。全然想像ができないので、そこをどうするか・・・。学校って時間割を変えられないのですよね。コロナだからこそ新たに時間割を変えればいいのにと思うのですが、ずっと時間割は変わらず、内容、順番なども変えられません。もともとあるものを短い授業でやろうとしているので、「どうにかしてください」と各先生に丸投げになってしまっている印象です。

ー基本的なところなのですが、カリキュラムはなぜ変えられないのでしょうか?

負担がかかってしまうからだと思います。中高6年間の計画もあるし、コロナで状況が変化している中で準備が間に合わないのと、それをやる意義が感じられないのかも。でも、いまの決まりもいろいろ悩んだ結果だと思います。午前午後にわけて同じ授業を2回やるというのが公立だと通例かもしれないのですが、やっぱり(感染のリスクが高いという意味で)高齢の人の負担になってしまうとか、いろいろ加味したうえでこういう授業になっているのかな。まともに授業ができないけど、求められているハードルは高いというのが現状です。

ーなるほど。そういえば今朝もツイッターで「一斉休校」がトレンドに入っていました。保護者の方も、リスクを感じながらも登校させているわけですよね。

オンライン授業だから、保護者も見ますよね。求められるものも高くなると思います。オンラインで何ができるのか、対面で何ができるのか調整しているところです。一緒にやっている先生の授業実践がとても面白くて、やりたいなと思うものもたくさんあるのですが、「これは対面じゃないともったない」と思うものが多くて。オンラインでは課題を発信するとか、動画を発信するとか、こちらから一方的にやるということしかできていません。課題を提出させたりとか、そういうことはできるのですが、生で対面(の授業)ができていないので。オンラインの対面授業だと限界もありますよね。普通の教室でやりたかった授業が、オンラインで果たしてできるかというと疑問があります。

ーもともとの授業スタイルが、生徒と先生インタラクティブなやりとりがミソになっていると。そういったベースがある中で、オンラインに切り替えたときに授業の質をどう保つのか、ということですよね。

オンラインになって問われる「テスト」や「課題」の意味

ーいまは課題を一方的に配信して、回収したり?

記述のものは回収しようと思っていますが、うーん・・・。どこまで回収していいのかもちょっと悩ましいところです。

ー悩ましいというのは?

今まで6~7回配信していて、それを3科目なので合計で20回分くらい課題を出しているのですが、そのうちの1回しか課題は回収していません。(3科目の中の)公民の授業に関しては、意見を聞いて自分の意見を書くということがやりやすいので、回収しようということになったのですが。

やっぱり生徒にとっても、なぜオンラインの中で回収させるのかという意義が感じられないと、簡単に回収できないなというのは、自分の中であります。これまではちゃんと書いているかなとか、生徒にも見てほしいというか、双方の利益があったのですんなり回収できているものも多かったのですが、この状況だからこそ、回収するのにも意味が必要な気がしているんですよ、感覚ですけど。小テストとか中間テストの意味も、いま問われているのかなと。受験が遠い中学生だからこそだと思いますが。6月の中旬くらいに中間テストを予定していたのですが、先生方からの反対も大きくて。中間テストをやる意味もそうですし、この状況下でできることがない、とか。なので「テスト」というものがどういうものなのか、ということについても変わりつつあると思います。有名な公立の校長先生が、中間テストや期末テストを廃止して、単元が終わった時に毎回小テストをやっているといっていましたが、今はそういう事も考えているのかな。そういった案も出てきています。オンラインになってから、すべてに意味が必要になってきつつある気がします。あくまでも感覚として、ですが。

ーなるほど、おもしろいですね。逆にいままでは定例行事化というか、だいたい5月に中間テストがあって、7月末に期末テストがあって、そこで評価を付けてとか。ルーティーンワークじゃないですけど、「そういうものだ」と生徒も先生も理解をしているところがあって、それが通常授業や評価というものの形が(半ば強制的に)変えられてしまったことによって、新しい意味を探さなければならなくなったという。

高校3年生は受験という目標があるので進められるところを進めているのですが、中学生だと、うーん・・・どうなんだろう。いま急いでやっても、何の意味があるんだろうとも思います。特に社会科とかだと、社会科に興味を持つこととか、暗記科目からの脱却などを目指してやってきていますが、やはりオンラインは教え込むことが一番やりやすい授業だと思うので。双方向のオンライン授業をやろうとはしているのですが、そこは模索中の段階です。

オンライン授業の準備は、デバイスの配布から

ー分散登校中でも、オンラインの授業は続けるのでしょうか?そこで双方向のオンライン授業のあり方というのも、継続的に検討したり、試すことができそうでしょうか。

オンラインの対面授業は、今後やるかどうかはわからないんです。検討中という感じです。実際にあるとするなら、いつからだろう。ひとまず今月はないと思います。

ーなるほど、でももし第二波が来たら、またオンライン授業に振り切る可能性もありますよね。

そうですね、管理職はそのための準備をしていると思います。

ーどういった準備?

高校生にだけPCを渡しているのですが、中学生にも配布しようとしています。高校生はスマホで勉強することに慣れているのですが、中学生はそうではないので、デバイスを学校から渡すというのを考えているみたいです。


オンライン授業を阻むプライバシーの問題

あとは私立だからこそプライバシーには厳しいと思います。オンライン対面授業を簡単にできないのは、プライバシーの問題も絡んでいます。

ー生徒のプライバシーということですよね。

そうです、画面の背景で分かるものもあるじゃないですか。新たな問題に繋がらないようにするために、慎重になっていると思います。


生徒の反応が見えないのは、教師も怖い

対面はやっていないのですが、他の科目とか見ていても、結構充実していると思います。「楽です」というのはあまり聞かない。

ー結構やりがいのある課題?

やりがいがあるかどうかはわからないですが。(笑)負担にはなっているんじゃないかな。もともと授業ありきで課題を出しているので、授業がない状態で課題を解くというのは、生徒もきっと大変ですよね。

ーそもそもよくわかっていないのに、インプットもない状態での課題、本当につらいですよ!(聞き手は、大学のオンライン授業で苦戦中)

そうですよね(笑)これまで出してきた課題はプリントが多かったのですが、これだけだと限界があるとも思い始めています。やっぱり生徒の反応が見えないのは、教師としても怖さを感じます。何を感じているのかわからないので怖いかな。
 

「個人チャットは禁止」から一転、制限付きの活用へ

ー生徒の声をきく機会は、この休校期間中はなかったのでしょうか?

なかったですね、形式的な質問はありましたが。例えば「この動画のファイルが開けません」とか。内容の質問も一切ないですね。全体に向けては、生徒も質問しにくいんじゃないかな。

ーいま使用されているオンラインツール(Microsoft Teams)は、先生に個別で連絡ができないのでしょうか?

いまのところは禁止にしていますが、今後個人チャットもできるように検討しています。ちょうど今日ICT担当の先生から連絡が来ていたのですが、生徒同士の共同学習とか教員への質問、教員間の連絡などがチャットでできるようになるみたいです。
 
ーなぜ個人チャットは禁止に?

これまで禁止されていた理由としては、いじめの温床になることだったり、教師と生徒との距離感が密接になってしまう、というのが大きいですね。今までは距離感が保てたけど個人的なものになってしまうので。

ーそうすうると、先生方の中ではいわばSNSのイメージに近いという事でしょうか?

そうですね。中学生に対してはメディアリテラシーから始めないといけないので、そこが少し心配です。


「各家庭への配信」を前提とした授業には不安も

今後、普通の授業も生徒にオンラインで配信する可能性があります。コロナが収束しても完全に収束しないと考えているので、今後もオンラインと普通の授業を織り交ぜてやっていくことになります。そうすると、普段の授業も家庭に配信するということになりますよね。今までの授業とは違って、使う言葉をひとつひとつ確認しなくてはいけない。単元の設定についても悩みます。こちらは学ばなければいけないものをやっているという意識なので、保護者に言われるからこの単元をやめる、という事はないと思いますが、より一層気を付けなきゃいけないな、とは思っています。

ー内容だったり、使う資料だったり?

そうですね。内容、方法、課題の量、勉強の意義・・・。いろいろですよね。

ーこの前、大学の先生が出した課題が、保護者によってネット上に晒されて、物議を醸していました。

生徒の多くは何も知らないところからスタートしていますが、上の年代の人がどうわたしたちの授業を見るのか、そこがずっと不安ですね。生徒からも保護者からも、1年目から一人前として扱われるわけで。・・・自分に自信があれば、こういう不安はないと思います。誰から何か言われても、はっきりこれは必要なことと言えたらいいけど・・・。難しいですよね。努力はします、という感じです。

ーコロナ禍で、まだ教壇に立って授業ができていないという中で、そういった不安があるのもわかります。

いまは同じ教科の先生と、いろいろ相談しています。内容や形式ともに、いちばん気になっているのは「これって意味があるのか?」ということです。いつも、これってどう思いますか、生徒にとってどんな意味がありますか、という聞き方をしています。

新人でも「力になれている感」がある

良いこととしては、いま先生方も模索してやっているので、ある意味で一からやっている所もあって。新人として入ってきて話していると、案が組み合わさっていく。新人の自分でも力になれている感があります。自分を対等に見てくれているというか。これは嬉しいですよね。

逆に大変なところは、普通にスタートしていれば学校の備品についても教えてもらえるのですが、いまはロッカーの鍵もないんです。基本的なところですが、ゴミ箱のルールはありますかとか、すべて自分から聞かないといけない。教室のことも、下手をすると生徒よりもまだわかっていないという状況です。


コロナだからこそ、社会科への意欲は高まっている

ー今後、アフターコロナの学校で期待することとは。

自分の中で、これまでやってきた実践とかをやりたいというのはあります。コロナだからこそよりいいものにできるのか、それともボツになるのか、自分たち次第なんだろうなと思います。期待することとは違うかもしれませんが・・・。コロナだからこそ社会科への意欲は高まっていると思うので、これまでの実践と上手く重なるといいなと思います。

ーありがとうございました。


【インタビューを終えて】

インタビューに応じてくださったポンチョ先生、ありがとうございました。

最も印象的だったのが、コロナによっていままでの授業の在り方が変化したことによって、定期テストや課題についての意味も、改めて学校全体で問われるようになったという点でした。これを機に、ルーティーンワーク化した学校の授業や評価の在り方ついて、各学校や自治体で見直しが図られるようになるかもしれません。皆さまの学校では、こういった動きが始まっていますでしょうか?

また一人の先生として「各家庭に課題や授業の様子が配信されること」や「生徒の顔が見えないこと」への不安についても、率直な気持ちをお話してくださいました。コロナが収束した後も、オンラインでの授業配信などを検討されている学校や自治体もあるのではないでしょうか。こういった先生の声にも耳を傾けながら、丁寧に検討をしていただけたらと思っています。

ポンチョ先生の授業、いつか受けてみたいなあと感じました。応援しています!

(ききとり:#SAVE OUR SCHOOL in Japan 古野)


*インタビューを受けてくださる先生を募集しています*


全国の学校の実態について知り、社会全体で新しい学校教育のあり方について模索していく土台をつくっていくため、#SAVE OUR SCHOOL in Japanではオンラインインタビューを受けてくださる全国の先生方を募集しています。以下の内容に同意いただき、フォームに必要事項をご記入ください。よろしくお願いいたします。

・オンライン形式でのインタビューになります。zoom、LINE、メッセンジャー、スカイプなどからご希望のツールを選択してください。ご指定のご連絡先に、こちらからご連絡をさせていただきます。

・オンラインインタビュー中の画面上での顔出し・氏名公表などの個人情報の公開は任意です。

・記事作成のため、インタビュー中のやり取りをスマートフォンもしくはPCのボイスメモで保存させていただきますが、他の用途では一切使用しません。(ご希望の方は、記事公開後に音声データを削除させていただきます。フォームでお伝えください。)

・インタビュー時間は30分程度になります。ご都合のつきやすい曜日・時間帯をフォームにご記入ください。

・noteの記事は、基本的に匿名で公開されます。記事掲載用のニックネームをご記入下さい。

・お話しいただいた内容は、#SAVE OUR SCHOOL in Japanのnoteで記事化されます。公開の前に、一度内容に誤りがないかをご確認をいただく作業がありますので、お手数をおかけいたしますが、ご協力いただけますと幸いです。

・公開されるステータスは、「学校種」「自治体」「年代」が基本になりますが、事情がある場合は、非公開を希望することもできます。フォームにその旨をご記入下さい。

・一度公開した記事について、万が一何らかの事情で一部変更および削除をご希望される場合には、事務局までご連絡下さい。できるだけご希望に沿った形で、対応をさせていただくように努めます。

・場合によって、後から追加インタビューをお願いする場合があります。ご協力いただける場合には、フォームにその旨をご記入ください。

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#SAVE OUR SCHOOL in Japanでは、小・中・高・特支の先生方が参加し、さまざまなテーマで情報交換ができるSlackのワークスペースを運営しています。

現在#SAVE OUR CHOOL in Japanのワークスペースで開設されているチャンネルです。(5月15日11時時点)今後必要に応じて、チャンネルを追加していきます。

・オンラインツール全般(zoom,Microsoft teams,Google classroom...)に関する質問(今後ニーズがあれば細分化いたします)
・ネットワーク環境の整備
・オンライン学習の取り組み
・自宅学習用の教材
・教科別の情報交換(今後ニーズがあれば細分化いたします)
・HR活動
・学校行事
・部活動・クラブ活動・各種大会
・学校内でのコミュニケーション(教職員同士・生徒・保護者)
・生徒の健康管理
・コロナ感染者への対応
・地域別の情報交換(今後ニーズがあれば細分化いたします)
・教育イベント情報
・関連ニュースの共有


まだスタート地点に立ったばかりの取り組みですが、興味を持ってくださった先生方は、ぜひ情報交換のためのワークスペースにご参加いただけると嬉しいです。いま抱えている疑問や不安、あなたの学校の取り組みなどをぜひ教えてください。

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