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掌編小説

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140字から始まる超短編小説です
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#雪

雪の恋【掌編小説】

私は雪女よ。
最期に君は笑った。
だから空に還っていくわ。

雪国育ちだったね。
君の純粋さは、雪のように白かった。
クールな所は、雪の冷たさ。
微笑みは、日の下の雪のきらめき。
君の体は、雪肌のなめらかさ──

君の故郷を歩く。君のかけらを探して。
気がつくと山に迷いこんでいた。
雪が降る。ためらいがちに。
ああ、君だね?

自由になった君は、雪の舞いで僕の肩をたたく。僕の頬をぬらし、唇にふれ、

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はじめての雪【掌編小説】

はじめての雪【掌編小説】

雪が降る。まわりの風景が白く変わる。ふと、自分はどこにいるのだろうかと思う。ここで窓の外を見ているのは、本当に自分なのか。ここは過去の世界ではないのか。

子供時代。
初めての雪にはしゃいだ自分。
「ねえ、あれは何?」
「雪だよ」
ドアを開けながら答える父。
「ゆき?」
「空から降ってくるんだ」
「わあ……」
雪やこんこ、と歌いながら庭を回る自分。それを見守る父の姿。母は台所で食事の支度をしており

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