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全国自然博物館の旅【46】戸隠地質化石博物館

長野県に眠る古生物化石は極めて魅力的です。特に大型哺乳類の発見が素晴らしく、ゾウ類や海獣の仲間のセンセーショナルな研究で学会を驚かせ続けています。
深緑の山々を擁する長野県。はるかな太古、信州に海があったと思うと計り知れないロマンを感じますね。地球の神秘を感じるべく、筆者は山間部の素敵な学校博物館を訪れました。


山奥の廃校が、驚異の自然博物館へ超変身!

緑豊かで風光明媚な長野市の山間部。魅惑の大自然の中に、太古と現代の神秘を研究する戸隠地質化石博物館が座しています。
本館へのアクセスは、やはり車での移動がベスト。筆者は長野市の市街地でレンタカーを借り、雄大な峰に向かってまったりドライブを始めました。壮美な自然環境に飛び込むときは、いつだってワクワクします!

スタートはJR長野駅前。市街地でレンタカーを借りて走れば、休憩込みで1時間ほどのドライブで博物館へたどり着けます。

長野県の山の中へドライブするとなれば、森へ入ってみたいと思うのが生物マニアの性。思いきり足を伸ばし、多くのアウトドア観光客で人気の戸隠・大峰自然休養林へ向かいました。
多くのレンジャースタッフによって管理された土地であると共に、自然界ともダイレクトにつながった森の中の植物園でもあります。林内では美しい山地性・亜高山性の植物を観察できますし、運が良ければ野生動物を見られるかもしれません。博物館と合わせて、戸隠の森を100%楽しみましょう。

長野県の山間部に来たら、やはり緑の大地の中へ飛び込むべき! 涼しくて空気がおいしくて最高です。
思いきり自然観察にしたくなる環境。もし野生動物と出会っても、刺激しないように遠くからそっと見守りましょう。
山地に生える多年草ヨツバヒヨドリ。動植物の観察しながら森の中を散歩を楽しみました。
ヒメバラモミ。長野県と山梨県だけに分布する日本特産のモミです

自然観察を存分に楽しみ森の空気に癒されたら、待望の博物館へGOです。
戸隠地質化石博物館は、旧村立柵中学校の校舎を活用して生まれた学習施設です。昭和の学校の趣あふれる雰囲気、自然科学研究の基地としての先端的な展示が魅力であり、博物館ファンの心に刺さること間違いなしです。

筆者も、地方の博物館は大好き! 当地でしか学べない知識がたくさんありますし、博物館そのものの空気感にも惚れます。
戸隠の自然環境と古環境、心ゆくまで学習したいと思います。

戸隠の町にやってきました。ここまで来るには、ほぼ確実に車が必要です
戸隠地質化石博物館。小学校をリノベーションした学校博物館であり、建物の雰囲気も注目ポイントです。
入口では可愛い剥製がお出迎え。遭遇頻度は決して高くありませんが、長野の森にはツキノワグマが生息していることを心に留めておいてください。

あらゆる時代の長野の自然が詰まった夢の学校

ついに目覚める! 太古の長野の巨獣たち!!

いよいよ登校(入館)の時間。来館者を出迎えるのは、全長8 mを超えるミンククジラの全身骨格と、長野県産の古代クジラの標本展示です。トップバッターから大物が出てきて、古生物マニアは興奮必至。
現在、海のない長野県。新生代第3紀において、この地に豊かな海洋生態系があったことをクジラたちは雄弁に語っています。

エントランス(元下足室)に佇むミンククジラの全身骨格。近縁種の化石が長野県にて発見されています。
長野県にて出土したクジラの椎骨。犀川の沿岸部の崖から発掘されました。
長野県産の古代ヒゲクジラ類・シンシュウセミクジラの頭骨レプリカ。セミクジラの仲間としては、世界でも最も古いタイプの種類です。

観覧の順序としましては、まず3階にあがって、下層階へおりていきながら、膨大な自然科学資料に出会っていくことになります。
その前に、最初の展示室へ行くまでの道中の展示をくまなく見ておきましょう。楽しい工夫やユニークな展示スタイルが目を引く学校博物館。廊下や階段の踊り場に設置された数々の資料や標本から、とってもたくさんの刺激が得られます。

順路に沿って3階を目指します。そのさなか、廊下でたくさんの剥製や骨格標本を目にしました。これぞ地域博物館、これぞ学校博物館。素晴らしい!
折り紙で作られた肉食恐竜バリオニクス。楽しい展示がいっぱいで、本当に味わい深い博物館です。
江戸時代に発見されたドラゴンの骨? 実は古代ゾウ類の化石であり、中世期の日本人は正体不明の動物化石をドラゴンの骨だと思い込んで「竜骨」と呼んでいました。

本格的な長野県の化石展示を堪能する前に、化石の基礎知識をおさらいしておきましょう。階段の踊り場の展示コーナーでは、化石のできかた、化石の種類についてわかりやすく学習できます。必要情報を来館者にストレートに伝える明瞭な解説は、まさに博物館として理想郷であると思います。

化石の基礎知識を身につけられる展示コーナー。様々な化石の種類、化石のできかたについて、とてもわかりやすく学べます。
化石のできかたについてのイラスト解説。難しい現象をシンプルに説く工夫は、本当に素晴らしいと思います。
シナノホタテの化石。ホタテガイは寒い地方の貝類なので、本種の化石が見つかったということは、当時の海も寒かった可能性があります。本例のように、化石は古代の環境を知る重要な手がかりとなります
生き物の本体のみならず、彼らが掘った巣穴も化石として残ります。当時の生き物の生態行動を示す化石は「生痕化石せいこんかせき」と呼ばれます。

それでは、満を持して長野県自慢の古生物展示へ!
今から300万年前、戸隠には日本最大級の巨大ゾウが生息していました。その名はシンシュウゾウ。1人の小学生が見つけた化石は、長野県のみならず国内の古生物学界を驚かせる大発見だったのです。

はるか500万年前、陸続きの中国大陸から次々と渡来してきた動物たち。その中に、シンシュウゾウの仲間がいたのです。ゾウたちの壮大な旅路の物語、本展示の化石たちの声に耳を傾けて聞いてみましょう。

展示室「大型動物たちのいた長野」。内装や照明の雰囲気がガラリと変わります。
長野県産の古代ゾウ類・シンシュウゾウの下顎。ステゴドン類に属するゾウの化石であり、長野県の天然記念物に指定されています。
ナウマンゾウの全身骨格。長野県では、野尻湖が有名な産出地となっています。
小型模型を用いて、ゾウ類の進化を視覚的に解説。系統樹の上に模型を置くことで、どのゾウがどの時期に生まれたのかをわかりやすく表現しています。
本コーナーでは、様々な古代ゾウの臼歯が展示されています。この歯の持ち主のアケボノゾウは、シンシュウゾウと同じステゴドン類です。

陸上哺乳類だけでなく、戸隠では新生代中新世の海洋哺乳類化石が多数産出しています。古代クジラ、古代鰭脚類(アシカやセイウチの仲間)、巨大カイギュウなど画期的な発見のオンパレードです。
太古の長野の多様な海獣たち。彼らの貴重な化石標本との対面に、化石マニアの好奇心は最高潮に高ぶります。

古代の大型カイギュウ類の全身骨格。ジュゴンやマナティーと同族の海洋哺乳類です。
古代カイギュウの展示コーナー。長野県では、ヒドロダマリス属のカイギュウ類の化石が発見されています。
約400万年前の長野県に棲んでいたヒゲクジラ類の下顎。形態の研究によって、ケトテリウムという小型種であるとわかりました。
戸隠の地層のり出土したナガスクジラ類の耳の骨。当時の海には、多様な種類のクジラたちが泳ぎ回っていたのです。
古代のセイウチ類イマゴタリアの左前肢。太古の長野県には、セイウチの仲間も棲んでいたのです。

「海洋哺乳類が見つかっていることは、他にも多くの海の生き物が発見されているはず」とお気づきの方もいるでしょう。お察しの通り、長野県の大地からは、海洋生物化石が豊富に産出しています。
多種多様な無脊椎動物、当時の海を統べる強力なサメたちーーたくさんの化石を目の当たりにすることで、大海だった頃の長野県を強くイメージできます。

展示室「海だった長野」。豊富な海洋生物化石が目白押しです。
約400万年前の戸隠をイメージしたジオラマ。貝類の模型が設置されていて、どの深度にどの貝が棲んでいたのか、一目瞭然でわかるようになっています。
トクナガムカシブンブクの化石。こう見えてウニの仲間です
鮮新世に生きていたホホジロザメの歯の化石。現代と同じく、サメたちは海洋生態系の上位に君臨していました。
戸隠の学生が発掘したテングシャクシガイ。長野県内では初めて発見された貝類です。

県内でも屈指の化石産地として知られる戸隠。その大地はどのように成り立ち、どのような生命が繁栄していたのでしょうか。
次なる展示室では、長野の地が形成された過程を時代ごとに追い、当時生きていた古生物たちを紹介してくれています。化石あふれる長野県を闊歩していた生命と、時を越えて出会う素敵な瞬間の始まりです。

展示室「長野の大地の生い立ち」。長野県の地質と生命の歴史について、時系列的に濃密学習できます。
太古の長野県の環境形成についてのキャプション。当時の地層から特定の生物化石が多く発見される理由に関しても、詳しく記述されています。
小谷村で発見された肉食恐竜の足跡。今後、長野県でさらなる恐竜化石が出土する可能性は十分あります
中新世のシカ類の下顎化石レプリカ。発見者の方の名前にちなんで、1926年に「ヒラバヤシシカ」と名づけられました。
ヤベオオツノジカの全身骨格。ナウマンゾウと並び、日本の新生代後期の生態系を代表する大型動物です。

続なる展示区画では、戸隠を飛び出し、世界の古生物たちと対面します。古生代・中生代・新生代あらゆる時代のスターが、教室内に大集合。もちろん、恐竜たちもいます!
連綿と続く生命の壮大なヒストリー。永い地球史の流れに浸りながら、生き物たちの進化の道を歩んでください。

展示室「生命を育んできた地球の歴史」。各時代のスター古生物が大集結しています。
化石ファンにとっての永遠の人気者・三葉虫。本区画では、幅広い時代の様々な種類が展示されています。
恐ろしい肉食恐竜の歯。アクロカントサウルスは、全長10 m以上もある強力な捕食者です。
美麗な魚類化石も魅力的。ヘリオバチスは、新生代始新世に生きていたエイの仲間です。
古代クジラ類ザイゴライザの頭部。初期のクジラは細長い体とワニのような顎を有しており、現生クジラとはかなり異なる姿をしていました。

各展示室の化石標本展示は超濃密で、本っっっ当に素晴らしい! 加えて、廊下にもたくさんの標本や解説資料が配されています。
化石の重要な基礎知識の解説、戸隠で発見された新種のカイミジンコ類の情報など、見ごたえ抜群の展示のラッシュ。化石の名産地で古生物を学べることを、心より幸せに思います。好奇心の赴くままに、どんどん学びましょう。

廊下にも古生物資料がズラリ。各展示室への移動時にくまなく見ておきましょう。
シンシュウクジラやダイカイギュウが、化石の基礎知識を詳しく解説。地質の年代特定の手法についても、わかりやすく学べます。
展示ケースのたくさんの化石にも注目。こちらは貝類が作った巣穴の化石です。
戸隠で発見された新種のカイミジンコ化石に関する記事。生物マニアにとっては大好物なトピックです! ちなみに、顕微鏡で実物化石を観察することもできます。

麗しき峰々に広がる魅惑の大自然

雄大な峰々と森林を擁する長野県。本県には、自然科学マニアの誰もが憧れる動植物の楽園があります。世界に自慢すべき自然の宝庫ゆえに、本館の動植物展示は超充実しています。
第5展示室では、いよいよ現代の長野県が舞台となります。超多様な生き物たちの標本や資料に触れることで、未来の自然環境を考えるきっかけにしていただきたいと思います。

長野県に息づく生き物たちの各種標本。かなり膨大な数なので、ぜひとも現地でじっくりご覧ください。
昔ながらの学校のロッカーを展示棚に改装。ノスタルジックな心地で自然学習を楽しむことができます。
棚の引き出しには、様々な生き物の標本が収納されています。こちらは長野県に棲むカタツムリなどの陸上貝類です。
哺乳類や鳥の剥製。長野に広がる果てしない森は、たくさんの大型動物を育んでいるのです。
昆虫標本もたっぷりあって最高! 強くてかっこいいオオムラサキには惚れ惚れします。

長野県の生物多様性を深く学べるだけでなく、外来種問題に関する教育的意義の大きな展示コーナーもあります。前提として申しますが、外来種は決して悪者ではなく被害者です。日本に連れてきた人間のエゴこそが原因なのです
これ以上、不幸な命を増やさないために我々はどうすればいいのか、展示を見ながら広い視野で考えていきたいと思います。

グリーンイグアナの皮。ペットとして人気が高く、日本に数多く輸入されています。非常にパワーが強いので、逃げ出さないようにケージの管理は徹底的に行わなくてはなりません。
カミツキガメの骨格。特定外来生物なので国内で捕獲されれば、冷凍庫で殺処分されてしまいます。不幸なカメを増やさないためにも、飼育したらどんな理由があっても最後まで手放さず育てなくてはいけません!
アライグマの毛皮。他見より個体数は少ないようですが、数々の証拠から判断して、長野県にもアライグマが生息しているとみて間違いないと思われます。
長野県の森では、海外産のカブトムシやクワガタが発見されています。海外の種類は体が大きいので、大量に定着すれば、日本産のカブトムシやクワガタが淘汰される恐れもあります。
なんと海岸性のアカテガニまで見つかっています。長野県には海がないので、野生の個体ではなく、飼育個体が逃げ出したきたと考えられます。

本館では、環境保全において重要な学びをさらに提供してくれます。それは、日本各地で減りつつある里山環境の大切さです。
人の手によって管理された里山は多くの生き物にとって好適な環境となり、生物多様性の保全に大きく寄与しています。近年、里山の減少によって、水田や雑木林に棲むたくさんの生命が絶滅の危機に瀕しています。

動植物の生息地としての里山の重要性、里山環境が消えていく深刻さが、本館の展示によって詳細にわかります。人の手によって守られた自然の中で、永く人と共に生きてきた里山の生命。彼らの運命を左右するのは、現代に生きる人類の行動なのです。

里山の水域で見られる昆虫たち。我々にとって馴染み深いシオカラトンボやオニヤンマも、緑豊かな人里の近くでたくさん見られるのです。
里山で暮らす生命のつながり。この生態系の循環を守るためにも、水田や溜池などの里山環境が必要なのです。
昆虫と植物の関係を例にして、里山管理の重要性を説いてくれています。里山に人の手が入らなければ林内は暗くなり、ウスバサイシンなどの下層植生が育たなくなって、彼らを餌とするヒメギフチョウも減ってしまうのです。

緑豊かな戸隠には、自然科学において誇れる栄誉がたくさんあります。その好例が、戸隠の地名を冠する多くの植物です。改めて当地の植生の豊かさ、自然環境の奥深さに驚かせられます。
3階の廊下には、戸隠の植物にまつわる展示がたくさんあります。戸隠の誇りに触れることによって、その経験が植物学への強い関心を呼び起こしてくれるでしょう。

3階の廊下。植物に関連した標本と写真の展示。鳥と植物のユニークな関係も学べます。
長野県を代表する植物・トガクシソウの写真。1902年に大正天皇(当時は皇太子)がトガクシソウをご覧になり、とても強く関心を抱かれたそうです。
トガクシタンポポとトガクシサワギキョウの写真。他にも、戸隠の名を冠する植物は多数存在します。
シラカバの幹にアカゲラが開けた巣穴。5年後、なんとゴジュウカラが自分の巣穴として使っていたそうです。

3階の生物・化石展示を存分に堪能したら、2階へと下りましょう。まだまだお楽しみは続きます。2階の廊下にて古生物マニアが吸い寄せられるのは、長大な化石展示ケース。戸隠のみならず、様々な地方の化石が並べられていて、豊富な資料に感激すること必至です。

2階の廊下に配された化石の展示ケース。マニア垂涎の素晴らしい標本が並んでいます。
北海道で出土したワクヤホソスジホタテの化石。ホタテは貝ですが泳ぐことができ、天敵が近づいてくると水流のジェット噴射で逃げます。
宮城県産のサメ類の脊椎骨化石。サメは軟骨魚類なので、骨が化石として残ることは非常に珍しいケースなのです。
愛知県で見つかったマダラトビエイの歯の化石。前述の通り、軟骨魚類の骨は化石として残りにくいので、歯の形態による同定が重要となります。
ホホジロザメの歯化石を含んだ岩石。戸隠の荒倉山で発見された、約400万年前のサメの化石です。

2階廊下におけるもう1つの目玉は、世界中の動植物と出会える生物標本の展示。生き物好きは必ず足を止めて見入ってしまうことでしょう。
パワフルな生き物、馴染み深い生き物、珍しく不思議な生き物。それぞれの魅力をとことん観察して味わってください。

学校博物館らしさがあふれる生物標本室。世界各国の動植物の標本がいっぱいです。
双頭のヘビ類の液浸標本。ごく稀に、頭が2つあるヘビが自然界で誕生します。
哺乳類の剥製標本が膨大で、学校博物館ならではの雰囲気が満ちあふれています。小学生や中学校の理科室にて、たくさんの動物の剥製を観た経験のある方も多いのではないでしょうか。
膨大な数の昆虫標本に心を奪われた筆者。海外産のクワガタは、やはり迫力がすごいです。
フタバガキの種子。パラシュートのような羽根がついていて、種子散布の際、ジャングルの中を舞いながら新天地へと降り立ちます。

順序に沿って、次は元保健室へ向かいましょう。ここでは水棲生物の生体展示と動植物の標本展示を同時に味わえます。
いかにも生物系の資料室といった感じで、筆者はこういった雰囲気が大好きです。本当に生き物が好きな人々によって作られた空間、生物学の知が詰まった空間、足を踏み入れた瞬間からワクワクが止まりません。ぜひ時間をかけて、1つ1つくまなく観覧してください。

標本展示と生体展示が合わさった元保健室。資料がズラリと並べられたこの感じ、いかにも学校の標本室らしくて好きです。
棚の中で細かく分けられた植物の種子。分散のスタイルごとに種がまとめられていて、種子散布戦略の違いがスムーズに理解できます。
クロスズメバチの巣。土中に作られることが多いです。ちなみに、筆者は自然観察の最中、クロスズメバチに刺されたことがあります
白マジックペンを使って、水槽に来館者向けのメッセージを書いてくれています。ちょうど、文字のすぐ側にドジョウがやってきてくれました(笑)。
絶滅危惧種シナイモツゴ。水槽に書かれた「ライチョウよりやばい!」というフレーズの通り、本種はかなりのピンチに立たされています。

2階の最も奥に位置する展示エリアは「骨の動物園」。膨大などという表現では収まりきらないほどたくさんの動物の骨格標本が大胆に展示されています。
さらに、標本との距離が近いので、かなり迫力が体感できます! 全方位を骨に囲まれて学習する経験は、来館者にとって素晴らしく特別な時間となります。

展示室「骨の動物園」へ入園。ダチョウの全身骨格の存在感は圧倒的です。
キリンの骨格のアーチをくぐって、奥へと進みます。動物の大きさと迫力も感じられて、学ぶ楽しみが倍増します。
すさまじい数の骨の標本。解説キャプションも、とてもたくさんあります。
恐ろしい肉食哺乳類たちの頭骨。生まれながらの戦士であることが伺えます。
黒板には動物たちの分類学的な系統樹が描かれています。網羅的に学びたいので、筆者は即行で写真におさめました(笑)。

本館が有する生物・化石標本は超々膨大であり、この記事で紹介できたのはほんの一部です。どんな博物館でも同じですが、展示の魅力を100%理解するには実際に現地へ行くしかありません。
戸隠地質化石博物館は、太古の時代から長野県の大自然を学べる究極の学術施設です。長野の峰々に息づく生命を感じながら学習すれば、きっと山林で自然観察したい心地になると思います。筆者も観覧を通して長野の自然環境への強い関心が芽生え、信州がさらに大好きになりました!

長野市の小学生からの熱いメッセージ。本館では地元の子供たちを対象に、貴重な科学教育を実施されています。学校だった頃と変わらず、人々にとって大切な学びの場となっているのです。

戸隠地質化石博物館 総合レビュー

所在地:長野市戸隠栃原3400

強み:長野県産の古生物化石に関する濃密な展示解説、当地ならではの長野県の自然環境に関する膨大な学術的知見、里山保全や外来種問題など環境教育性に富んだ自然展示

アクセス面:山間部の博物館ですので、車が最も理にかなったアクセス手段です。旅行者の方は、JR長野駅前でレンタカーを借りて向かうのがベストです。なお、山道にはやや狭い箇所もありますので、決してスピードを出しすぎずゆっくり安全運転で行きましょう。無事故で楽しく博物館観覧を楽しむために、どんなに他の車が煽ってきても、気にせず安全速度を維持して運転してください

現代・古代問わず、長野県の自然科学に触れられる生物マニア大絶賛の学校博物館。元中学校の特色を活かした工夫いっぱいの展示スタイル、貴重な県産の古生物化石、膨大な当地の各種生物標本など、見どころは山のようにあります。一巡すれば、長野県の自然環境に対して大きいなる関心をこと間違いなしです。
さらに環境教育性の高い展示資料がとても多く、環境保全活動の基地としても重要な学術基地となっています。自然研究の最前線とも言うべき山間部にある博物館だからこそ、輪にかけて自然科学の学習が尊く感じられます。地球と生命を愛する全ての人々に訪れてほしい、発見と感動がいっぱいの学習展示施設です。
なお、前述の通り、アクセスはほぼ車1択となります。来館時には天候や路面の状況を詳しくチェックして、ゆっくり安全運転でこの素晴らしき博物館を訪れてください。

館内には、前身の学校で使用された教材の展示もあります。昭和時代の日本を知るための貴重な資料です。

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