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「額について」と「展覧会のお誘い」

【額について(佐塚真啓)】

三熊くんの絵と額

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1枚の絵を額に入れて壁に掛ける。
それは、この世界から、別の世界をのぞき込む窓になる。
絵は額に入れられる事で、この世界から切り離され、
のぞき込むという形で対峙する特別なものになる。
もちろん、作品を保護するという便宜上の都合もあるが。
額は、この世界と絵の中の世界に特別な関係性をもたらす。
しかし、最近の絵画作品は額装しないで発表される事も多い。
分厚い額縁に入った作品は、少し古風な印象すら受ける。
額装されていない絵は、
異世界を見せる窓としてではなく、
この世界と地続きに存在している、
というメッセージを暗に発している。
絵を描いた作者が、絵を見る観客と
同じ地平に存在する事を物語る。
作品なんかつくらない人が、日常の中で、
料理をするように、
洗濯物を干すように、
片付けをするように、
お風呂に入るように、
ある人は、そんな日常の中に、
絵を描くという行為がある。
そして、その日常の痕跡が、作品として存在している。
額装されていない絵は、そんなメッセージを内包している。
そんな額が投げかけるメッセージや問いかけを、
仮に、絵画における「額問題」とでも呼んでみる。
その額問題を作者が
どの程度、認識しているかはわからない場合をよく散見する。
額を無意味につけたり、つけなかったり。適当についていたり。
額と一言でいっても、そのありようは様々。
額縁の幅や大きさ、中のマットのサイズや切り方で
全然違う印象と意味を持たせる事になる。
額は、この世界と、絵の中の世界の関係性を
チューニングするような存在だ。
もちろん額装を、作家ではなく、
作品を購入した人が行う場合もある。
そこでも額装は、購入者と作品との間に、
面白い関係性を生む事ができる。
さらにいうと、何の変哲もない紙切れでも額装する事で
思いもよらない面白さを作り出す事ができる。(佐塚)

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今回の展覧会で紹介する三熊くんは
「額縁工房 片隅」という額屋さんをやっている。
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https://katasumi.studio.site/
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そんな彼に、作品を見せて、
どんな額装にすれば、自分の意図を表せるか、
面白さを作り出すことができるか、
この機会に相談してみるのもいいと思う。
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国立奥多摩美術館プレゼンツ

「生きろ③三熊將嗣〜行き場がないまま〜」

https://katasumi.studio.site/moao

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●場所:国立奥多摩美術館(JR軍畑駅から徒歩約11分)
●入館料: 5 0 0 円(お土産付き)
●時間:平日10時〜17時、土日12時〜18時
●開館日とイベント:

○2022年5月

8日(日)15:00〜 オープニング+額縁工房片隅説明会

9日(月)額装相談+工房見学

10日(火)額装相談+工房見学

12日(木)額装相談+工房見学

13日(金)13:00〜 額のワークショップ(要予約)

14日(土)額装相談+工房見学

16日(月)額装相談+工房見学

17日(火)15:00〜 トークイベント「誰かがやってくる日」

19日(木)額装相談+工房見学

20日(金)13:00〜 額のワークショップ(要予約)

21日(土)15:00〜 トークイベント「額縁と額装のあれこれ」

22日(日)15:00〜 トークイベント「幸せな作品の終わり方」

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