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UnityのIPOにはIPO初日から積極的にのっかろうと思う

秋のIPO銘柄として注目を集めているUnity Softwareに関してストーリーや業績を確認します。各方面より絶賛されていますが盲点はないのでしょうか?

▶Unityは魅力的なストーリーを展開
前提として、上場株の投資では、僕はあまりストーリーをじっくり考えたりはせず、決算業績パフォーマンスを判断の中心材料にしています。TAM (Total addressable market: 市場規模) などは確認しますが、どの銘柄も良いストーリーに聞こえてしまいポジポジ病を誘発してしまうためです笑

Unityに関してのストーリーを復習すると、”ゲーム制作 as a service” + “ゲームロイヤリティ投資ファンド” に近いと僕は考えています。これまでゲーム制作は非常にギャンブル性の高いビジネスでした。対して、Unityはゲーム制作プラットフォームを比較的安価でサブスク課金で提供し、カジュアルファンからプロまで多様なプレーヤーにゲームを作らせ成功したものを選抜する。そして成功したタイトルに関してはレベニューシェアという形で不労所得 (ロイヤリティ収益に近い) を獲得するという、いまふうなビジネスモデルを展開しています。

プロダクトとしては以下の2つを提供しており、これらが互いにシナジーをうみながら強い収益構造を生み出しています。Create Solutionsでゲームを作り続いてOperation Solutionsで運用するだけでなく、Operate Solutionsでの運用からサービスインし、Create Solutionsをクロスセルさせることも可能な点がポイントです。
・Create Solutions: ゲーム制作プラットフォームを提供、サブスク課金
・Operate Solutions: 運用サポートや広告費などのレベシェア/ 従量課金

競合は、まさにいまAppleと係争中のEpic Gamesが提供するUnreal Engineです。Unreal Engineはグラフィックスがリッチでより作り込み志向が強いです。Unityの、競合への防御性は、カジュアルゲームも取り込んだ高いマーケットシェアと強いクリエイターコミュニティが共鳴するネットワーク効果だと僕は考えています。ポケモンGoやスーパーマリオランなどのゲームエンジンはUnityです。

Unityが試算するTAMは全世界でトータル約3兆円 ($29Bn) と非常に大きいです。ゲームは$12Bn、ゲーム以外で$17Bnが内訳です。後者に関しては今後の成長領域と想定され、ゲームで培ったAR/VR技術やモデリング技術をもとに様々な領域に進出しています。例えば、建築業界や自動車業界で大口の顧客を獲得しています。これらの新領域での大口顧客は、2020年上半期で大口顧客全体の約8%を占める程度まで成長しています。もう少し時間がかかりますがオフラインとデジタルが混じり合った新しい世界での収益は金脈になりそうです。下記の通りBMWなどの大企業がUnityの顧客になっています。

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▶Unityは今後も強い決算が期待できる
Unityの四半期パフォーマンスを以下にまとめます。字が小さくなってしまったので適宜グラフで補足します。結論として、今後も強い成長と利益率の改善が期待できると僕は考えています。

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既存顧客からのアップセルがかなり強い
特筆すべきはNet dollar expansion rateが直近で142%ときわめて高い点です。トレンドも右肩上がりにあがっています。サブスクリプション収益であるCreate Solutionsとレベシェア/ 従量課金であるOperation Solutionsが互いにシナジーを生み補完しながらクロスセルを実現できていると思われます。

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下記コホート分析のとおり各年でアップセルに成功している素晴らしいミルフィーユ構造の収益を作れていることがわかります。

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現状は赤字で、営業キャッシュフローマージンも2020年1Hでは-4.4%とマイナスですがコストコントロールはうまくできていると考えられます。グロスマージンは約80%とSaaS銘柄では比較的高く、うまくマーケティング費用をコントロールすることにより、売上成長を加速させながら、営業利益率を向上させることに成功しています。

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まだまだ黒字には遠い印象は受けますが健全な経営を行っていると想定されます。なお、R&D費用が売上高対比で40-60%と高いのが特徴で新しいプロダクトやソリューションが仕込まれているのがわかります。個人的にはR&Dにお金を使うことのできている会社は好感度が高いです。

大口顧客が増えている=成功タイトルが増えていそう
Operate Solutionsでの大きな収益が見込める成功タイトルを作り上げることがとにかく重要です。必ずしも大口顧客=成功タイトルとは限らないとは思いますが、年間売上$10万ドル以上の大口顧客数がきれいに増加しています。直近ではYoY39%の成長率です。これらより、おそらく成功タイトルが増えていると考えられます。

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広告売上の割合が多い点は少々気になるが問題なさそう
サブスクリプション売上 (Create Solutions) は売上高の約30%でYoY成長率直近39%と成長率が少々SaaS銘柄にしては物足りない印象。対してレベニューシェア/ 従量課金 (Operate Solutions) は60%程度でYoY成長率は直近63%。Operation Solutionsにおいて広告売上の占める割合は高く、Appleによる広告規制によるダメージ (IDFA規制によるアプリターゲティング広告投資の減少) を受けることが想定されます。

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日本にいると実感はあまりないのですが、特にUSではゲーム内広告に対する需要が非常に強いようです。ゲーム内の広告はゲーム内ポイントなどのリワードの活用により、しっかり広告を消費者に見させることが可能というのがその理由のようです。シンプルにゲーム利用者は増加しており広告在庫の供給が増えているのもポジティブです。また近い将来VR環境における広告なども想定されます。これらより、Appleの動向は注視が必要ですが、広告売上という観点では大きな問題にはならなさそうです。

バランスシートは健全
バランスシートに関して大きな問題はないと思います。数多くのM&Aを繰り返してきたという背景から、のれんがAssetに占める割合が29%とかなり大きくなっています。今後も積極的にM&Aを仕掛けそうですが、減損の可能性もあるので買収先には注意を払っておこうと思います。

▶Appleの最近の動向には注意が必要
上述のAppleによる広告規制に加え、2点Appleに関連して注意したい点があります。先日アップルストアでのゲームストリーミングアプリのバンドリング提供を禁止すると発表がありました。多くがUnityエンジンで作られているハイパーカジュアルゲームにとっては収益化にあたってダメージが想定されます。つづいて、競合であるEpic gamesのAppleとの係争。Unreal EngineからUnityへの乗り換えが発生すれば強い追い風になると考えられます。

Appleは引き続きターゲティング広告を強く規制すると考えられます。また、そのプラットフォーマーとしての圧倒的強さからアプリストアに関しても独自の路線を歩む可能性が高いと考えています。Appleの動向には注意が必要です。

▶可能であれば上場当日からのっかろうと思う
こういったグロース系の銘柄ではValuation (PSRなど) などはほぼ気にしていません。いまのマーケット環境では割高なのか割安なのかよくわからないため笑。唯一信じられるのは良い決算、つまりEPS、売上高、ガイダンスでアナリス予想を超え続けること、だと考えています。下記は、9/17日時点のS&PのPERです。特にハイテク、グロース銘柄はバリュエーションどえらいことになっているのがわかるかと思います。

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おそらくSnowflake (SNOW) と同様Unityも上場初日から株価が跳ねることが想定されますが、これからも良い決算が期待できそうなのでうまくのれそうであればのろうと考えています。

▶9/18追記: 今回のIPOは通常のIPOと異なる様式。気配がでてからしばらく注視しようと思う
今回IPOの主幹事はゴールドマンサックスだが、ブックビルディング (安定株主工作: 株の分配) はゴールドマンではなくUnitity自身が行った模様。CEOはElectronic Artsの元CEOでPEファンドの創設者でもありこの領域に造詣が深いです。通常のIPOと様式が異なるので、気配が開いてから推移を注視したいと思います。

▶9/21追記: グラフ修正

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投資、テクノロジー、マーケティング大好きおじさん。 金融→マーケティング/ ブランディング→独立したい。 大負けした日はカップラーメンすすって耐え忍びます。 米国上場株投資、気になるテクノロジー & テックスタートアップ、たまにマーケティング情報などを発信します。