今日、20歳ではじめて美容院にいく女の子の話

先日、『女は、髪と、生きていく』のイベント会場で、ある女性に質問を受けました。
お嬢様の成人式の髪型を相談したいというのです。
名刺をお渡しすると、その日の夜、お母様から長い長いメールが届きました。
　
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そのお母様は、娘さんを女手ひとつでここまで育てられたそうです。メールには、彼女と過ごしたこれまでの時間が綴られていました。

生まれる前からシングルマザーであったこと、
お嬢様はいま、医大生であること、
節約に節約を重ねてきたため、お嬢様の髪はずっとお風呂場でお母様が切ってあげてきたこと、
昭和のおかっぱと、友達からからかわれることもあったこと……。

そんなお嬢様が、今回の成人式ではじめて美容院に予約を入れたそうです。

とても楽しみにしているのだけれど、髪型のアイデアが浮かびません。
どんな髪型がいいでしょうか。
寮生活の娘に、さとゆみさんのワーク内容を伝えたら大喜びで、いま、３つのキーワードを探している最中ですと、書かれています。
　

メールには、成人式に着る予定だというZARAのパンツスーツを着たお嬢様の写真が添付されていました。
お風呂場で撮影された写真のようです。
とても可愛らしい笑顔で、母娘二人で支え合い、まっすぐに生きてらっしゃったんだなあと想像できる写真でした。

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本を書かせてもらって、ほんとうによかったと思うのは、こういうときです。
もちろん、一人でも多くの人に読んでもらいたいけれど、でも、このお母様にこの本が届いたのだとしたら、本当に、それだけでも書いてよかったと思います。　

娘さんと一緒にはじめて訪れる美容院での髪型を選ぼうとしている、その瞬間にご一緒させていただけるなんて、こんな幸せなことはありません。

私は、じっくり考えてメールを返信しました。

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昨日は師走のお忙しい中、足をお運びいただきましてありがとうございました。
そして、お嬢様の成人式、おめでとうございます。
女手ひとつでりっぱに育て上げられましたこと、感激もひとしおのことかと存じます。
私はまだまだ子どもが小さいので、お母様のメールを拝読するだけで、じーんとしてしまいました。

こちら、お写真、拝見させていただきました。
お召し物、素敵ですね。お嬢様にもとても似合っています。
身長がおありのようですので、ゴージャスな雰囲気も迫力あっていいでしょうし、
お顔立ちが綺麗なので、可憐な雰囲気も似合うと思います。
どんなアレンジも似合いそうです。

そして、髪型の件ですが、
まず、今回は、「髪型選び」というよりは、「ヘアアレンジ」になるかと思います。
ですので、通常の髪型選びとはちょっと違い、
（通常の髪型選びでしたら、キャラクターに直結するので、なりたい自分像は大事なのですが）
今回に関しては、完全に、イベント仕様（１日限り）ですので、
やってみたいヘアアレンジ優先でいいと思います。

そして、そのアレンジをああでもない、こうでもないと選ぶところもきっと楽しい作業だと思いますので、
私が「こういうアレンジが似合いますよ」と申し上げるのは、その楽しみを奪ってしまうのではないかと思いました。

せっかくですので、お嬢様に、好きに選んでいただくのがいいと思います。
ヘアアレンジは、インスタグラムでhair arrangeと検索したり
パソコンで成人式・ヘア・洋装
などと入れると、素敵なヘアがたくさん出ていると思います。
和装ではないので、「結婚式・ヘア」で検索しても、いろいろ素敵なスタイルが出てくると思います。

そしてこれは強くおすすめするのですが、
事前に美容院にいかれて、その美容師さんと打ち合わせされることをおすすめします。
（もし、これまでお母様が切ってらっしゃったのであれば、そのタイミングで、
髪を切りそろえられたり、トリートメントされたりするのもいいかもしれません）

美容師さんは、成人式や結婚式のヘアアレンジに慣れていらっしゃいますので、
当日の衣装と、こんなヘアアレンジにしたいという写真を持って行って、
「こんな雰囲気にしたい」と事前に伝えておくか、もしくは、どんなヘアアレンジがおすすめですか？　と聞くなどすると、忙しい当日に慌てて決断しなくて良いと思います。

メイクはお嬢様がされますか？
それであれば、事前にアレンジの方向性をある程度決めてから、メイクをされるとうまくいきやすいです。
メイクについても、美容師さんにアドバイスをもらっておくといいですよ。

一生に一度のことですから、ぜひ、お嬢様の意志を尊重してあげてください。
「自分で（美容師さんと相談しながら）選ぶこと」自体が、髪型の満足度をあげる一番のポイントです。

お母様にとっても、お嬢様にとっても、素敵な１日になりますよう、心からお祈りしております。

さとゆみ

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お母様からは

早々に美容院へ行き相談して参ります。
今後の人生、さとゆみ先生のご本を参考にさせて頂きながら
私どもも心を入れ替え、自分と髪と向き合って参ります。
この度は、本当にご親切にありがとうございました。

というお返事をいただきました

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昨日の夜、そうか、明日は成人式か。
彼女と彼女のお嬢様の成人式が、素晴らしい日になればいいなあ。
担当してくださる美容師さん、どうぞよろしくお願いしますと思いながら眠ったら、早く目が覚めてしまいました。
　

Facebookを開くと、今日のタイムラインは朝の４時台から成人式の準備を進められる美容師さんの写真であふれています。
　

今日、いろんな親子の想いを受け取って、成人式のアレンジをされている全国の美容師さん。朝早くから本当におつかれさまです。
みなさまの手によるヘアメイクで、たくさんの女の子たちが、その親御さんたちが、幸せな１日を過ごせますように。

お母様とお嬢様が素敵な１日を過ごせますように……。

【作家の小野美由紀さんが、このお母様がきてくださったときのトークイベントについて書いてくださっています】

【女は、髪と、生きていく】

女は、髪と、生きていく