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初版500部を、1冊ずつ手で届ける

これまで7冊の自著、1冊の共著を出版していただく機会に恵まれた(専門書をのぞいて)。
初版の部数は、だいたい5000から6000部の間くらい。たくさんの人に買ってもらえたら重版して、その部数が増えていく。

書籍ライターとして関わった50冊あまりの書籍も、多少の前後はあれどだいたいそれくらいの感じで、全国の書店やネット書店を通じて、読者のみなさんに届く。
なのだけれど、一度、挑戦したい分野があった。
クラフトプレス(ZINE)という分野だ。

出版社から出版(パブリッシュ)される書籍には「ISBNコード」という国際規格コードがつく。みなさんがもっている書籍には、裏面にバーコードがあると思う。
一方で、ZINEは、この「ISBNコード」がない。だから狭義の意味では、ZINEは「書籍(雑誌)」ではない。書店で売られていたとしても「書籍(雑誌)」ではなく「雑貨扱い」として売られるケースが多い。
かつて、商業出版のど真ん中にいたときは、「ZINEは書籍ではない。冊子とかパンフレットに近いもの」と思っていた時期もある。

でもいまは、この分野に、とても興味を持っている。文学フリマに遊びにいった経験があったからかもしれない。
読者の人たちと、「直接繋がる」体験をしてみたかった。

私のほうから一方的に本を届けるのではなくて、読者の人たちの声を聞いて一緒に作る体験をしてみたかった。
いま、毎日連載している「今日もコレカラ」を1冊にまとめるZINEを作ろうと思ったとき、これまでSNSを通じていろんな感想を寄せてくださった人たちとしたようなやりとりを、ここでもできないかなと考えた。

それで、「みなさんが、いま、考えていること、興味があること、悩んでいること」を事前に教えてもらって、その気持ちに合いそうな文章を366日から選んでお送りする。そんなことを思いついた。
みなさんからいただいた興味やお悩み、誰に何の文章をおすすめしようか、いまわくわくしながら考えている。

他にも、商業出版ではできないことをやりたいなと思った。
・たとえば、バーコードをつけない分、裏表紙も表紙っぽく、両A面にできないかなとか。
・海外のペーパーバックみたいなカバーのない本にしたいとか。
・書店で目立つ必要はないから、帯はいらない。絵を全面に出した、インテリアとしても素敵な表紙にならないかなとか。
・普通の書籍では使わない紙を使ってみたいな、とか。


裏表紙もとても好き。これ、絵のように見えて実は写真です。撮影しているので遠近感やぼけがあるのです。

そんな、こだわりいっぱいの私の思いを汲んでデザインしてくれたのが、加藤京子さん。『Amazon』や『LISSTEN』などのベストセラーをたくさん手がけている大先輩。さとゆみライティングゼミの仲間です。
そして、装丁の絵を描いてくれたのも、ゼミ仲間の島袋匠矢さん。
最後に、私たちゼミメンバーだけではできなかった部分を、クラフトプレス(ZINE)業界の聖地、藤原印刷さんにお願いした。

藤原印刷の土井さんに、印刷の仕組みを教えてもらっているところ

打ち合わせのとき、藤原さんが、「さとゆみさん、印刷立ち合いしませんか。自分の本が刷られる瞬間を見るのは、特別な体験になりますよ」と言ってくださった。昨日長野県松本市で、この表紙が、本文が、印刷にかかる様子を見学させてもらった。

今回のこだわり。普通の本には使わないタブロという紙を使っていただいた。手触りがいかにもクラフトという感じで何度もなでなでしちゃいました。

たった500部。
その部数の表紙は一瞬で刷り上がってしまう。でも、この表紙の色を出すために、何枚も何枚もテスト印刷がされていて、そのテスト印刷の紙の束は、500枚をゆうに超えていた。
こんなふうに大切に印刷してもらっているのだと知って、こみあげるものがあった。

この500部に、一冊一冊メッセージを書いた栞を添えて、私は、読んでくれる人たちに届けるんだ。

一人ひとりに個別メッセージを書く予定の栞

今まで、私が書いてきた書籍とは、また全然違った、特別な一冊になると思います。みなさんにとっても、可愛い可愛いなでなでできる一冊になりますように。


 表紙です。見た人が元気になるような絵をと、お願いしました


このZINEはCORECOLORのクラウドファンディングで購入できます。
12月18日(水)の23:59に終了します。
あと、12時間。私にとっても、特別な本を、手に取っていただけたら嬉しいです(あとちょっとで重版かけられそうです!WAO!)。

【追記】
おかげさまで、1000部、重版いたしました。ご興味持ってくださった方はこちらからご注文可能です。1月末に重版分が刷り上がる予定なので、刷り上がり次第お送りさせていただきますね。

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