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本間勇輝さんへの35問35答【ライター100人押しかけ問答 #2】

新シリーズ第2弾です。

インタビューの方法は? ライティングの工夫は? それぞれに違うライターさんの書き方について伺う1問1答シリーズ。

今回お引き受け下さったのは、本間勇輝さん。

本間勇輝さん 

夫婦で2年間の世界一周旅行の後、2012年1月より夫婦で東北復興新聞を発行。現在は『東北食べる通信』にも関わる。妻(本間美和さん)との共著に『ソーシャルトラベル』『3years』。


Q1:現在はどういうペースで記事を書いていますか?


A1:今は自分で取材して記事を書くのは月に1本程度。復興新聞に関しては、一番多かった時期でも5本程度。どちらかというと、編集の仕事の方が多い。


Q2:この仕事に関わることになった直接のきっかけは? 


A2:世界一周旅行を終えて、2011年10月に東北に初めて行った。そのとき東北を案内してくれた友人は「今後の復興の過程では、情報を交換できる媒体が必要になる」と考えていたらしく、無職でしかも編集経験のある(妻は世界一周に出かけるまえは編集&ライターの仕事をしていた)僕たち夫婦の帰国後の仕事にうってつけだと思ったよう。


Q3:復興新聞の取材先はどのように決めていきましたか?


A3:1号分の新聞を作るのに、10本くらいの記事が必要だったので、現地のNPOの人たちに紹介してもらった。


Q4: それまで記事を書いた経験は?


A4:世界一周旅行ブログ(「ひげとボイン」)を書いていたけれど、ブログ以外の記事を書くのは初めて。


Q5:どのように書き方を学んでいきましたか?


A5:もともと編集&ライターだった妻(本間美和さん)に鍛えられながら(笑)


Q6:ブログと新聞記事との一番の違いは?


A6:主観を出すか出さないか。ただ、僕は、新聞の記事のほうがブログよりも書きやすいと感じた。ブログを書いているときは「あなたの文章は主観がないのが面白くない。感情移入できない」と妻によく言われていたので。


Q7:記事を書くときに重要視していたことは?


A7:復興新聞のコンセプトが、「グットプラクティス」を共有すること。つまり、ポジティブな面を深堀りすること。ファクトを重要視し、数字もしっかりおさえた。


Q8:ファクトを重要視する書き方で、実現したかったことは?


A8:読んだ人に「真似できそう」と思ってもらうこと。大手メディアが取り上げないようなニッチな事例も、具体的にノウハウまで落とし込んだ。


Q9:取材相手に対して、気をつけてきたことは?


A9:常に「ソトモノ」であることを意識していた。わかったふうにならないこと。安易に共感できないことを意識すること。


Q10:初めての取材から、現在まで。変わったことは何ですか?


A10:人間「本間勇輝」として信頼を得ることが何より重要なのだと思った。特に震災のあった東北という現場だったため。それは、知識を知っていることではなく、「こいつ、ホンキだな。おもろいやつだな」と思ってもらえるということだ、と。


Q11:具体的にはどんなことを意識しました?


A11:相手の話を網羅的に書くのではなく、その人にとって重要なことにしっかり耳を傾けて深く丁寧に聞くこと。ちゃんと目を見て話すこと。僕は、震災当時日本にいなくて、地震を知らないし、プロのライターに比べて原稿も上手じゃない。そんな自分が記事を書く意味を考えたら、深く聞くことしかないと思った。


Q12:そのような気持ちになってから、取材現場の空気は変わりましたか?


A12:手応えを感じられるようになってきた。ちょうど、徐々に記事ができあがり、新聞も号数を重ね、それを読んでくださる人もでてきて、自分にも少しずつ自信が生まれてきたとき。その自信はやはり僕の目つきと顔つきに現れていたと思うので。その状態でちゃんと相手の目を見て話をすると、人と人としてつながることができたと感じた。


Q13:質問することは、最初から決めていきますか?


A13:基本的には決めない。もし取材項目を事前に出してと言われたら、ざっくりと出す。質問事項にとらわれるのではなく、疑問や興味があればそのつど、自分の言葉で「それはどうしてですか?」と深堀りをする。


Q14:インタビューするときは、どんな感じで?


A14:必ず座って、ちゃんとインタビューっぽい雰囲気で話をしていただく。


Q15:記事のボリュームによると思いますが、1度の取材でだいたいどれくらいの時間、お話を聞きますか?


A15:だいたい1500字程度で、1時間半から2時間くらいインタビューする。


Q16:インタビュー時間、長いですね


A16:相手との信頼関係を構築するのに、やはりそれくらいの時間がかかると思う。特に、東北の方はビジネスライクに話すことに慣れていない方が多いから。お茶を入れてくださったり、お茶菓子いただいりする時間も含めて、急がずゆっくりお話を聞き、失礼にあたらないのが、やはり1時間半から2時間くらい。


Q17:信頼関係を早く構築するために行っていることは?


A17:相手への興味をしっかり示すこと。下調べをして、相手の目を見て「僕、あれが好きでした」「あれ、おもしろかったです」と、できるだけパーソナルな感想を伝えること。


Q18:聞いているときはメモをとりますか?


A18:最初の頃は手書きのメモだけとっていた。途中からインタビューを録音しながら、ラフにメモをとるようになり、今は「失礼ですが、パソコンを開いていいですか」と聞いてパソコンで詳細なメモをとっている。現在もベストな方法を模索中。何がいいですか?(笑)


Q19:パソコンでメモをとるときに使っているソフトは?


A19:evernote



Q20:evernoteの使い方は?

A20:1取材1ノート。以前はノートブックやタグを使って管理していたが、いまはタグ管理をやめて、全て検索で探すようにしている。


Q21:タグ管理はうまくいかなかった?

A21:以前、自分のevernoteに復興関係のニュースクリップをしていたときは、タグづけをしていたのだけれど、その機能自体を復興新聞のウェブに移行させたので、いまはevernoteには自分のメモくらいしかない。だったらキーワード検索で十分探せるので。


Q22:原稿はどのように書き始めますか?

A22:うまく書けるときは、メモを全く見返さなくてもイントロが降りてくることが多い。


Q23:イントロが降りてくるというのは?

A23:会話文で原稿を始めようとか、ファクトで原稿を始めようとか。そういうときは構成も整理しない。降りてきたイントロを手がかりに一気に書くときはだいたいうまくいくことが多い。


Q24:インタビューが終わったらすぐに書くタイプですか?

A24:すぐに書かないタイプだけれど、うまくいくときはすぐに書き始めていることが多い。


Q25:うまくいかない場合はどうしていますか?

A25:取材メモをつぎはぎしているときは大抵ダメなときなので、そういうときは一度口に出して話すようにしている。大抵は妻に話を聞いてもらうことが多い。彼女に「で、それはどうなったの?」と聞かれると、そこが読み手が知りたいところなのか、などと再確認できる。一度話すことで、書くべきことが見えやすくなると思う。


Q26:奥様からのアドバイスは聞き入れる方ですか?

A26:原稿に関してですか? 人生に関して?(笑) 原稿に関しては、100%聞きます。


Q27:原稿で奥様から指摘されるのはどんな部分ですか?

A27:よくダメ出しされるのは、読み手の感情の話。「ここで一度盛り上がって、もっと知りたいと思ったのに、さらっと終わってしまった」とか「硬い記事でも盛り上げどころはあるはず。もっと盛って」などと言われる。


Q28:復興新聞での取材をもとに、『3years』という書籍を発行されましたが、そのときもやはり奥様にアドバイスをもらって?

A28:あの原稿は、妻のアドバイス無しには絶対完成しなかった。『3years』はストーリー集なので1話6000字くらいあるのだけれど、構成が全然できなくてボロボロだった。まず40点くらいの出来の状態で読んでもらってフィードバックをもらい、次に70点を目指し、80点を目指し、最終的にうまくいった何本かのストーリーは100点までいったかなという感じ。


Q29:ライターは楽しいですか?

A29:辛い。インタビューは楽しいし、編集の立場で紙面を作っていくことは好きだけれど、ライティングはひたすら辛い。


Q30:ライティングの何が一番辛いですか?

A30:時間がかかること。


Q31:1500字書くのにどれくらいかかりますか?

A31:30分で書けるときもあるけれど、4〜5時間かかるときもある。特に、伝えたいことが多すぎるときが一番難しい。


Q32:自分ではライティング能力と編集能力はどちらが高いと思いますか?

A32:どちらも素人だと思っているけれど、比較で言えば編集。でも、たまに「これは、いい記事書けたな」と手応えを感じることもある。


Q33:ご自身が編集者の立場のときは、ライターさんの記事のどこを一番見ていますか?

A33:伝えたいことが伝わるか。フォーカスがあるかどうか。


Q34:現在HUGではライターさんを募集していますよね?

A34:ゆるやかに。


Q35:どんなライターさんに来てもらいたい?

A35:言語化するとしたら「エモーショルすぎない想いを持っているプロ」かな。ライターは論理的に整理しなきゃいけない人だから、熱い想いだけでは続かない。かといってクールに整理するだけでは、いいものにはならない。クールに熱いものを持っている人がいいのかもしれない。


本間さん、ありがとうございました!


本間さんの著作

ソーシャル・トラベル 旅ときどき社会貢献

3years 復興の現場から、希望と愛をこめて


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