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小説を読めば「読解力」が身につきますか?

Q:小説を読めば「読解力」が身につきますか?

私は、セミナーの質疑応答などで「読解力をつけるには、小説を読んだ方がいいですか」と質問を受けることがあります。

結論から書いてしまうと「読解力をつけるために、小説を読むのはオススメしない」ということになります。

おそらく、質問をしてくる受講生の皆さんが考えている「読解力」とは、

1)文章を要約する力
2)論理的に思考し、説明する力

この2点をイメージしていると思います。もちろん、小説を読むことで、この2点を身に付けることも可能ですが、おそらく数百時間もしくは数千時間以上、小説を読み込んでいく必要があると思います。

つまり「コスパが悪い」というやつですね。もしもこのような「読解力」を身に付けたいのならば、専門書や実用書で勉強した方が、小説を読むよりも数段早く身に付くと思いますので、小説を選ぶ必要はないと私は考えています。

Q:小説を読めば「表現力や語彙力」が増えますか?

次に多い質問が「表現力や語彙力を増やすために、小説を読んだほうがいいですか?」というような質問です。こちらも結論から書いてしまえば、あまりオススメしない、ということになります。

仕事上での情報交換や広告やウェブサイト、ブログやSNSで使用する文章において、小説で読むことによって身に付く表現が、そのまま実践で役立つということは少ない、というのが私の考えです。たとえば、

私「海よりも深く山よりも高い芳醇な言葉の坩堝から、ひとつを紡ぎ出す事はとても難しく…」
相手「すみません、結局何が言いたいんですか?」
私「つまり、感動して言葉が見つからない、ということです」
相手((・・・最初から、そういえばいいのに))

とまあ、これはかなり誇張していますけれど、通常のコミュニケーションにおいて、このような表現力も語彙力も不必要だと思います。実際に、みなさんが普段読んでいて「おもしろい!」と感じる人のブログやSNSは、話し言葉に近い簡単な言葉で書かれていると思います。

もしこのような文面が必要な場合は「すぐに使える文例集」のような実用書を一冊手元に置いて、状況に合わせて調べながら書いた方が、これもやはり「コスパが良い」と思います。

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小説を読む「メリット」とは?

それではデメリットしかないのかと言うと「いやそんなことはない!」と、声を大にして主張したいと思います。私が考える、小説を読むメリットのひとつは、

想像する力を、育てていく

です。例えば、次の一文を読んでみて下さい。

前から犬が走ってきた。

これを、論理的に読み取るならば「猫ではなくて犬。歩いているのではなく、走っている。自分の前方から、こちらに向かっている」という事実を正確に把握することになります。そこに感情による曖昧な判断は必要なく、それ以上でもそれ以下でもありません。

これを想像力を加えた「小説の文脈」で読んでみると、このような感じになります。

作者はなぜここで犬を登場させたのか。犬が走ってくる情景描写には、どこか緊迫したものを感じる。飼い主がいない、単独で犬が走っている状況にも気にかかる。そういえば、この作者は、主人公の内面が大きく変化する時に、犬を登場させていることが多い。しかも走っているということは・・・。

などと、想像していくわけです。今こうやって文章にして書くと理屈っぽいような、難しいような感じがしますけれども、実際には皆さんも映画を見たりアニメを見たりする時に、ひとつの場面(映像)から様々なことを想像しますよね?(していない? いやいや無意識にしているはずです)それと同じです。

特に小説(文字)の場合は、映像のような豊富な情報量を持っていませんから、あれこれと、自分の中にある情報と照らし合わせて補いながら、想像を広げていく楽しさもあります。読めば読むほど情報が増えてきますから、どんどん面白くなっていくのですね。

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「読み手を行動させる文章は、想像力に比例する」

「そんな想像力なんて、仕事には役立たないよ」と思うかもしれません。そこで私は「読み手を行動させる文章は、想像力に比例する」と反論してみます。

例えば、広告やウェブサイト、ブログ、チラシ、パンフレット、何でも構いませんが、読み手に行動してもらう文章を書くには、その相手がどのような状況でどのような事を考え、この言葉を読むことによってどのようなイメージを膨らませてくれるか、とイメージ(想像)する必要があります

実際に皆さんの会社にも「この人が言っている内容は、たしかに正論だけれど、心が動かないんだよな」と感じる文章を書く人がいると思うんです。事実だけを並べているというか、なんとなく冷たい印象を受けるし、この人は現場で動いている私たちの気持ちを理解していない! と感じる人がいると思うのです。いますよね?

逆に、皆さんの状況を想像して、寄り添いながら説明してくれている人の文章は、たとえ使われている言葉は「普通のことば」だったとしても、読んでみようと思うし、できるだけ実行してみようと思いませんか?

ああ、この人は私たちの事を理解した上で、このような指示を出しているんだ。それなら仕方ない。ちょっと大変だけどがんばってみようと、感じると思うのです。

人の心は、想像することしかできない

漱石の「こころ」の広告文には、

『自己の心を捕へんと欲する人々に、人間の心を捕へ得たる此作物を奨む。』

と書かれています。「人の心を捕まえた小説」! ぜひ読んでみたい! と感じますよね。こんなコピーを書いてみたいと思います。

しかし実際に、人の心を完璧に捕まえることは、できるのでしょうか? たくさん会話をして「あなたのことは、わかった!」と思っても、明日になれば相手の心は変化しているかもしれません。あなたの心も同様です。

そんな、とらえどころのない「相手の心」を、小説を読むことを通して、もちろん物語そのものを楽しみながら、さらに想像力を深め広げていくことができる。それが、小説を読むメリットのひとつ、といえるのではないかと、私は考えるのです。

・・・さて、まだまだ話は続くのですが、むしろ頭の中身が温まってきて、どんどん書けそうな気もしてきましたが、だいぶ長くなってしまったので、今回はここで終わりにしようと思います。

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