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「主体性のなさって、文章に出ますよね。」

タイトルの一文は、桜木紫乃さん著書の小説『砂上』から引用した一言。

文章を書くことをしている人にとって、ドキッとさせられる言葉ではないだろうか。


ブログやSNSを通じて文章を書いてきた僕みたいな人間の中にも、『いつか書くことを生業に』と【将来の可能性フォルダ】に文章の蓄積を続けている人がいるかもしれない。

この小説の主人公も、『いつか作家になりたい』と思っている一人だった。


冬の雪が降り積もる北海道・江別。柊令央は、ビストロ勤務で得る数万円の月収と、元夫から振り込まれる慰謝料で細々と暮らしていた。いつか作家になりたい。そう思ってきたものの、夢に近づく日はこないまま、気づけば四十代に突入していた。

ある日、令央の前に一人の編集者が現れる。「あなた今後、なにがしたいんですか」。責めるように問う小川乙三との出会いを機に、令央は母が墓場へと持っていったある秘密を書く決心をする。

だがそれは、母親との暮らしを、そして他人任せだった自分のこれまでを直視する日々の始まりだった。自分は母親の人生を肯定できるのか。そして小説を書き始めたことで変わっていく人間関係。書くことに取り憑かれた女はどこへ向かうのか。 - Amazon.jp


傷つかないお花畑の中で過ごしてきた主人公は、赤っ恥を書く経験も大きな挫折もなく、(そして夢を叶えることもなく、)淡々と40歳を迎えていた。

そんな主人公の前に現れた一人の年下編集者によって、自分自身の人生と改めて向き合い、『ものを書くこと』と真正面から向き合う一年間を過ごすことになる。


この小説は、人生のどん詰まりに立たされながらも、残された気力を振り絞り『最後の挑戦』に挑む、崖っぷち女の話。


人は強くない。愚かだし汚い。

でも‥


その『でも‥』について書かれている、生々しい虚構にリアリティを感じる小説だった。



 

「週刊文春」編集部による、著者 桜木紫乃 さんへのインタビュー記事は、是非小説を読んだあとにみてほしいですね。

本書のあらすじと舞台裏が垣間みえる興味深い記事でした。





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