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小説『闇の奥』読書メモ

史実、コンゴの植民地化

19世紀、ヨーロッパは探検ブームでした。各国は植民地化により領土を広げていきます。一方で、広くなった植民地の運営に悩む時代でもありました。

あるイギリスの探検家が、植民地としてザイール河流域のコンゴに目をつけます。イギリス政府はアフリカを植民地としていましたが、大陸の真ん中であるコンゴは、植民地としては採算が取れないと判断しました。

そこに目をつけたのが、ベルギーの国王レオポルド2世でした。アフリカの植民地分割のいざこざに乗じて、コンゴはレオポルド2世の私的植民地になります。当時は植民地の管理も大変なコストがかかったため、東インド会社のように、会社や組織が植民地を管理することが珍しくありませんでした。

その後、自転車・自動車がつくられ、市場は大きく変化しました。タイヤの需要が一気に高まり、ゴムの産地であるコンゴが注目されたのです。

植民地であるコンゴは封鎖され、ジャーナリストの出入りも禁止となりました。そのなかでは、レオポルド2世による恐ろしいゴムと象牙の収奪が行われ始めたのです。彼は住民たちにノルマを課し、残虐な行為を繰り返しました。そのことが知られレオポルド2世は、国内外を問わず多くの批判を浴びることになります。ここまでが史実です

小説『闇の奥』

イギリスの小説家小説ジョセフ・コンラッドの『闇の奥』は、未開の地における人間の恐怖と狂気の物語です。船乗りの主人公が、自分の体験を語る形で物語は進んでいきます。実名こそ出てきませんが、コンゴでの収奪の様子をもとに、描かれた作品といわれています。

主人公は船長になるため、象牙を扱う商社に雇われます。そこで腕利きの理人に会うためにジャングルの奥地へと向かうことになります。奥地へ進むほどに、信じられないような収奪の光景を目にすることになります。先へ進むにつれ代理人のうわさも耳に入ってきます。未開の地は彼を、神とも悪魔ともいえる存在にしてしまっているようでした。そして、彼と出会った主人公もまた、恐怖と狂気の中で彼のことを理解していきます。

この作品は著者の実体験に基づいて描かれたといわれています。アフリカと向き合った、ヨーロッパ人の深層心理を描いた作品と評されています。モダン・ライブラリーが選んだ「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」に選出されている名著です。

感想メモ

アフリカの未開の地に植民地を求めて向かうヨーロッパ人。そこには未知のものへの恐怖と、支配欲をかきたてられる文明の未熟さがありました。闇の奥は文明を神の力として崇めます。一方で未知のものへの恐怖のはやがて、人を狂気へと導きます。それを受け入れた時、人は悪魔へと変わってしまうのでしょうか。絶対的な支配力を手に入れた、人間がどういう末路をたどるのか。この作品はそれを教えてくれます。

おまけ

この作品をもとに、映画も制作されています。フランシス・コッポラ監督の『地獄の黙示録』です。

映画では、ベトナム戦争の、カンボジア奥地が舞台となります。元グリーンベレーの隊長の暗殺命令を受けて、主人公はジャングルへ向かいます。残虐なシーンもあるので鑑賞注意です。

実はこの作品、映画「スターウオーズ」と関係があります。スターウォーズの感想noteに書いています、こちらもぜひ。

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