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テクノロジーでは社会構造を変えられない、に反抗する夢見るオジサンであれ

「サイバーパンク エッジランナーズ」というNetflixのSFアニメーションを観た。タイトルの文字通り"サイバーパンク"モノで、期待を裏切らないどころから3段階くらい上をいってくれる設定の作り込みと演出だった。

「カウボーイ・ビバップ」の初見のときに走った衝撃を思い出しながら夢中で観始め、世界観の作り込みは「攻殻機動隊」級で設定の面白さに舌を巻いた。

ただ万人におすすめはしない。相当なSF好きじゃないとハマらない系統なので、本当に好きな人はもうこのタイトルや雰囲気だけで観始めてるだろう。


テクノロジーは僕らを豊かにするのか

当たり前っちゃあ当たり前すぎて、何を今更な感想なんだけれども、「テクノロジーは僕らを豊かにするんだろうか」と思った。

サイバーパンクというSFジャンルがそもそもディストピア的な世界を描く定義なんだから何を当然のことを…と自分でも思うのだけれど、わりと10代〜20代前半はSF小説や漫画やアニメを嗜みまくっていたはずの僕は、テクノロジーに進んだ世界に対して、今回はじめて”絶望”を感じた。ちょっと言い過ぎかな。でも、”希望の無さ”を痛烈に感じた。

「攻殻機動隊」や「東のエデン」とか、神山健治監督の作品を観てたときもむしろテクノロジーにワクワクしてしまって絶望は感じなかったし、10代の頃に何度も読んだロバート・A・ハインラインのSF小説からも、希望のないオチにも関わらず僕はテクノロジーには希望を抱いていた。

ところが、なぜか今回初めて、SF作品から絶望を感じ取った。


テクノロジーでは社会構造を変えられない

今回のこの絶望の実感を、しっかり掘り下げていってみると、そこに感じたのは実際のところ”テクノロジーに対しての”希望の喪失ではなくって、むしろ「テクノロジーがどんなに進化したところで、人間が組織するコミュニティや構築する社会の構造っていうのは、カウボーイ時代から何も変わらないんだろうな」という、”人間に対しての”希望の喪失、という具合だと気づいた。

それこそカウボーイ・ビバップを観たときにそれを感じなさいよ、という話だと思うのだけれど(未来社会のカウボーイの描き方が、西武開拓時代のカウボーイと似た感じだよね、という話)

今回こんなふうに痛烈に感じられたのは、おそらく、僕のテクノロジーへの理解が一定度、働くなかで会得されてきたからだと、そう思う。

テクノロジーの専門家ではないけど、大学で量子力学を専攻してから院で社会学的な科学のありようを学んで、IT企業に入って、概念理解としてのテクノロジーってものはなにかくらいは掴んでて、その実態感を、いま福祉領域でレガシー技術すらうまいこと適用されづらいアナログな世界で暮らしてみて、

なんというか、テクノロジーに対して持っていた過度な幻想、期待感というものは、残念ながら大人になってしまってようで、すっかり薄れてしまっている。もちろん最先端の科学は大好きだしこれからのテクノロジーにはワクワクしてはいるのだけど、なんというか、テクノロジーが変革できる範疇みたいなところについて、ちゃんと輪郭が見えてしまっている、という感覚。

技術が進歩しても、人の特性は変わらないから、結局昔と同じような歴史を繰り返すんだろうな。似たような国家や街を作って、また別の格差やヒエラルキーも生まれて、っていうのは、続くんだろうなというね。

そういうのを感じさせてこそのサイバーパンク作品って意味では、この作品の秀逸さを物語るいい材料でもあるかもしれない。


テクノロジーでは社会構造を変えられない、は本当か?

一方で、そんなことを思いながら、そんな絶望に身を委ねてみながら、反抗する自分の感情もあって、

例えば初めてブロックチェーンの概念を学んだときに走った猛烈な衝撃と未来への高揚感みたいなものは、実はまだ全然薄れる必要はないんじゃないかなとも思う。

ブロックチェーン技術には社会構造から変える力がある、って言っても間違いではなさそうで、でも今のDAOをみてると、結局社会全体への影響までいくには道のりが長そうで。

結局、この繰り返しなんだと思う。テクノロジー好きっていうのはね。

テクノロジーが見せる理想郷や絶望郷のフィクションに一喜一憂しながら、新しいテクノロジーに高揚しては、なかなか社会変革しないソレに落胆のため息を隠しながら、レガシー技術を使って地味な社会実装にとりくんでいく(そのこと自体はめっちゃ価値があることなんだけれどもね)

僕を含む、科学技術に見せられた少年たちは、オジサンになっても未だ、そういうループを永遠に繰り返してる気がする。

なんだかんだ言って、ライトセーバー片手に宇宙で戦う未来が好きなんだ。

でもそういうオジサンたちが熱中し続けるからこそ、社会は前に進むんだよなとも思う。だからこそ、僕もそんなオジサンであり続けたいと、そう思う。

ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけましたら、ぜひスキをお願いします!