世界最先端の大学が集結する「INNOVATIVE UNIVERSITIES SUMMIT」@韓国に、さとのば大学も参加!
こんにちは。地域を旅する大学 さとのば大学のnote編集部です。
2024年10月に韓国で開催された、世界最先端の大学が集結した「INNOVATIVE UNIVERSITIES SUMMIT」。縁あって、アメリカのミネルヴァ大学、フィンランドのアールト大学などと並んで、日本からはさとのば大学もご招待いただき、副学長の兼松佳宏がプレゼンテーションを行うという貴重な機会をいただきました。
世界最先端の教育の現場では、どんなことが語られているのか?
その中で、日本発の事例として、さとのば大学はどのように受け止められたのか?
今回は、10月25日(金)夜に開催された、「INNOVATIVE UNIVERSITIES SUMMIT」報告会のレポートとともに、世界の潮流の中での"さとのば大学の現在地"をご紹介します。
■INNOVATIVE UNIVERSITIES SUMMIT?
2024年10月9日〜15日まで、韓国の済州島とソウル市で開催された「INNOVATIVE UNIVERSITIES SUMMIT」。
主催はスタートアップを支援する韓国の財団「Next Challenge Foundation」で、第1回となる今回は世界10か国から13の教育機関が招待され、「Glocal」、「Entrepreneurship Education」といったテーマで熱いディスカッションが展開されました。
また、同時に、「Global Alliance of Innovative Universities(GAIU)」という連携協定の調印式も執り行われました。
といいつつ、スケジュールは余白もたっぷり。済州島の大自然を感じる散歩の時間があったり、さまざまなローカルフードを味わったり、「世界中から集まった同志たちの関係性が深まっていき、そこから新しい連携が生まれていくような、とにかくホスピタリティにあふれる場のデザインだった」と兼松は振り返ります。
■最先端の現場で語られているキーワードとは?
それではここから、各教育機関がどんなトピックでプレゼンテーションを行っていたのか、サミットに参加したメンバーの印象に残ったキーワードをいくつかご紹介します。
「"文化"に根ざしたアントレプレナー教育」(チプトラ大学スラバヤ校)
インドネシアのチプトラ大学スラバヤ校 アントレプレナー&人文学部長のデニスさんは、1,000を超える民族が共存するインドネシアの話を引き合いに、西洋型の教育を一方的に押し付けるのではなく、それぞれの文化的背景に根ざしたカリキュラムデザインが重要と指摘しました。
兼松は「さとのば大学でも、僕が大学院で研究している仏教的な思想をヒントに、日本文化をいかしたカリキュラムデザインを進めているので、背中を押してもらったような感じがした。概念を輸入するだけでなく、日本からも発信できるようにしたい」と語りました。
「複数の分野を行き来するアントレプレナー教育」(LIS)
LIS(ロンドン・インターディシプリナリー・スクール)のカリキュラムの特徴は、学校名の通り、さまざまな分野を横断しながら、共創的な課題解決の方法を学ぶこと。建築を専門とするデザイナーでもある准教授のララさんは、公的・民間・学術分野の連携を深め、変化を促すツールとして"デザイン"の役割が重要と言います。
岡は、「複雑な問題を解決するために、異なる分野を理解し、それらをつなげる力は、社会に出たときにパワフルなスキルだと思います。お話を聞いていて、私も通ってみたいと思いました(笑)」とコメントしました。
「"身体性"に根ざしたアントレプレナー教育」(アールト大学)
ビジネス✕テクノロジー✕デザインを融合した学びが魅力のアールト大学。「Incubation Specialist」という肩書きを持つアンナさんは、カリキュラムのなかに柔道や即興音楽、森の散歩などを取り入れ、身体性にフォーカスし、五感を広げて新たなひらめき得ることを大切にしていると語ります。
兼松は、「さとのば大学の地域留学でも、大きな自然や地域の祭りなど、普段の暮らしでは開かれにくい感覚が自然と開かれることがあります。来年度以降はもっと意識的に身体性をカリキュラムの中に位置づけていきたい」と、大きなヒントを得たようでした。
「"チーム"としてのアントレプレナー教育」(モンドラゴン・チーム・アカデミー)
モンドラゴン大学があるバスク地方は美食の街として有名ですが、スペイン内戦などの歴史的背景から「自分たちで社会をつくる」という自治の精神が強い地域とも言われています。そしてモンドラゴン・チーム・アカデミーのアイトールさんは、個の起業家よりも"チーム・アントレプレナー"の輩出が重要と強調しました。
兼松は「起業することが、不安定な社会を生き抜くことに直結するというリアリティを強く感じた。さとのば大学のなかでどのような共創が起こるのか、学生も経営に参画するというモンドラゴン大学のモデルから学べることはたくさんありそう」と話しました。
「注意力を高め、負荷を減らすオンライン学習」(ミネルバ大学)
ミネルヴァ大学で心理学を教えるマークさんのトピックは、オンラインの学習環境について。ミネルバでは「joint attention(共同注意)」のために、授業中はすべての学生が同じデスクトップ画面になるように設定したり、「cognitive load(認知負荷)」を減らすために、字幕をつけるなどあらゆる工夫をしたり、学生の発言機会を均等にするため「computer assisted decision making(コンピュータ支援による意思決定)」を導入するなど、心理学に基づき学習パフォーマンスを向上させるためのあらゆる試みが実装されていました。
兼松は「地域を移動するという意味では似ているので、『さとのば大学は、日本版ミネルバです』とご紹介いただくことがありますが、そんなことは簡単に言えないくらいその教育的アプローチの徹底ぶりに圧倒されました。負荷を減らす、というのは重要なキーワードなので、さとのばでも見直していきたい」とコメントしました。
■世界の中の「さとのば大学」
どの学校もそれぞれ魅力的であり、それぞれが大切にしているエッセンスが共有された今回のサミット。そのなかで、日本から唯一の参加となったさとのば大学は、どのように受けとめられたのでしょうか。
"inter-being"のためのカリキュラムデザイン
副学長であり、「beの肩書き」という考え方を提唱している兼松が選んだ講演テーマは「Curriculum Design for “inter-being"」。耳慣れない"inter-being"とは、ヴェトナム出身の禅僧であり、平和活動家でもあるティク・ナット・ハンが提唱した、「相互共存」を意味するキーワードです。少し難しく聞こえますが、「ご縁」というと伝わりやすいかもしれません。
プレゼンテーションでは、さとのば大学の3つの特徴である ①地域留学 × ②マイプロジェクト × ③オンラインコミュニティ を紹介しながら、それらが組み合わさることでどのように"inter-being"という感覚を育み、さらにそこからどう共創的なプロジェクト(兼松はそれをただの"doing"ではなく、"inter-doing"と呼んでいます)が生まれていくのか、カリキュラムデザインに込めた思いと実際のさとのば生の変容について講演しました。
①"inter-being"で生きる環境への地域留学
兼松 さとのば大学の連携地域は、どこも海、山、川など豊かな自然があり、五感が開かれやすい場所であると同時に、暮らしのなかに自然と人、人と人などさまざまな"inter-being"を感じられる場所でもあります。コンフォートゾーンを飛び出して、初めての地域に飛び込むことで、当たり前であることの奇跡的な豊かさに気づき、すでにあるリソースに光を当てる力が身につくと考えています。
②"inter-being"のなかで育まれるマイプロジェクト
兼松 「プロジェクト・ベースド・ラーニング」といっても、学校側が学生にプロジェクトを用意してあげる方が一般的かもしれません。一方、さとのば大学は、地域の中でさまざまな人と関わるなかで、「マイプロジェクト」が、生み出すというよりも、生まれていきます。地域という"inter-being"な環境に身を置くことで、自分にとって大切だと感じるワクワクやモヤモヤに気づく機会が増え、結果的に「やってみたいこと」と出会える確率が高まると考えています。
③すでにある"inter-being"に気づくディープ・リフレクション
兼松 全国に散らばるさとのば生ですが、オンラインで深い対話の時間をつくっているのも、さとのば大学の大きな特徴です。24時間365日が学びであり、下手をするとあっというまに時間がすぎていってしまうので、毎週木曜日に行われている地域を超えたディープ・リフレクションの時間はかかせません。自分自身を変えようとしなくても、実は"inter-being"な関係性の中で、もはや過去の自分ではなくなっている。大切なのは、その変容に気づき、その背景を振り返ることなのです。
さとのば大学で伸びる力
では、こうしたカリキュラムの工夫によって、さとのば生にどんな変容があったのでしょうか? 最後に、兼松は「SATONOVA WAY」と呼んでいる成長実感のための指標をシェアしました。
詳しくは割愛しますが、「inter-beingな力」(関係性の中で生きていることを理解し、ご縁を味方にする力)は、4月から10月までに、「2.8」→「3.8」まで伸びていることがわかります。これは「他者のサポートがあれば発揮できる」という状態から、「日々の暮らしの中で自然と発揮できつつある」という状態まで成長しているということです。
「さとのば生が『最近、いいご縁に恵まれているんです』と言ってくれると、とても嬉しくなる」という兼松。
ひとりでいると孤独に見えるかもしれませんが、決してそんなことはなく、さまざまなご縁のなかに自分はあり、自分もまた誰かにとってのご縁になっている。そうした豊かな関係性のなかで生きていることを前提とすることができたとき、「失敗しても大丈夫」という安心感や、「一歩踏み出してみよう」という勇気を持つことができるのかもしれません。
■改めて「さとのば大学」の最大の強みは?
"deeper education"としての「さとのば大学」
兼松のプレゼンテーションが終わると、さまざまな登壇者が「とてもエモーショナルだった」「たくさんのヒントをもらった」「大切にしていることを代弁してくれた感じがした」など声をかけてくれて、手応えを感じたそう。
そして、報告会の最後に、兼松は「さとのば大学は、"higher education"というよりも、"deeper education"なのかもしれません。今回のサミットは、今までさとのば大学が取り組んできたことを改めて言語化できたと同時に、世界の中でもユニークな学びを提供していることに、改めて自信を持つことができました。」と締めくくりました。
"深さ"は目には見えにくいけれども、一人ひとりの成長を支える確かな土台となるはず。"inter-being"を前提に、関係性の中で生きていることを理解し、ご縁を味方にしながら、自分の成長だけでなく、周りの成長も祝福したり、エンパワーメントしていく。外向きにアウトプットする力はもちろん、内向きに根を張る力をひとりひとりが身につけていくことが、社会全体の幸福につながっていくのかもしれません。
何より、今回のグローバルな仲間とのご縁が、日本のローカルで学ぶ学生にとって、どんな意味を持っていくのでしょうか。引き続き、みなさんと一緒に考えてゆきたいと思います。
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さとのば大学では、4年間1年ずつ多様な地域へ留学し、地域での様々な人との出会いや対話を通して自分自身の関心を探り、マイプロジェクトへと繋げて実践していきます。ぜひあなたらしさが活かせる地域を、見つけに行きませんか。
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