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必ず3回涙ぐむ『サウンド・オブ・ミュージック』

人生で観てきた映画の中で、自分的に「オールタイムベスト」なものを少しずつ紹介していきたいと思います。


昨日、若い友人の結婚式に参列した。

50歳を越えてなんか涙もろくなり、特に教会のバージンロードを新婦が父親とともに緊張した顔で歩き、それを新郎が壇上できりりと待っているところなど、ついホロリと来てしまう。

で、結婚式でホロリと来るたびに、この映画のある場面を思い出す。

マーチ風『マリア』が響き渡り、その中を静かに歩くマリアと、壇上で誇らしげにトラップ大佐が待つ、あの結婚式の場面を。


ボクはこの映画で3回、涙ぐむ。

これは、50歳を越えてから、ということは関係なく、若いときからずっと。

何回観ても毎回涙ぐんでしまう。
こんなに何回も観てしまったんだからもう慣れて大丈夫だろうと毎回思うんだけど、毎回やっぱり涙ぐんでしまう。


まず、出だし。

ジュリー・アンドリュースに空撮で寄っていく超有名な出だしももちろん感動的なんだけど、ボクが涙ぐむのはそのあと。

冒頭の『サウンド・オブ・ミュージック』を歌い終わって鐘がなり、急いでマリアが丘を駆け下るところから始まる『オーバーチュア』の音楽。

あの、サビでメイン・タイトルがドンッと出るじゃないですか。
あの瞬間!
あそこでまず一回、必ず涙ぐむ。

なんでしょうね、なんか感動する。なんか鳥肌たつ。


次に。長女のリーズルが夜中の逢い引きをする場面。

『もうすぐ17才』という名曲が流れ、ボクの大好きな(一時期は世の中で一番好きだった)長女リーズル役のシャーミアン・カーと情けない恋人ロルフが踊る場面。

あの場面の最後の方で、曲のテンポが上がって東屋を踊りながら周回するじゃないですか。メリーゴーラウンドみたいに。

あそこ。
シンバルが効果的に鳴り響き、曲が盛り上がるあの場面で、なぜか必ず涙ぐむ。

なんだろう、これも理由がわからない。


そして、3つめ。
冒頭で書いたように、結婚式のあの場面。

マリアの結婚式に流れるマーチ風『マリア』
このアレンジがまた秀逸なんだけど、ここでまた涙ぐむ。

イントロから涙ぐむ。ずっと泣いている。

あれが『マリア』でなく、普通の結婚序曲だったり『ドレミの歌』のアレンジだったりしたら泣かなかったかもしれない。

修道女たちがマリアの変わっている部分を歌った『マリア』で表現したことで、いままでの人生がうまく重なる感じがあるし、それがマーチであることで、自分の前に、閉じていた人生の扉ががパッと開き、颯爽と自信をもってそこに歩み出ていく感じまですごくよく出ている。

素晴らしい場面だなぁ。
さすがロジャース/ハマースタインの名コンビだなぁ。


そう、この3回で涙ぐむ。

もちろん他の場面にも感動的な場面はいろいろあるんだけど、涙ぐむまではいかないかな。

でも、振り返ってみると、感動するのは音楽の場面ばっかり。

もちろんミュージカルだから、いい場面には必ず歌が入るように構成されているんだけど、それにしてもリチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世コンビの音楽の素晴らしさには、観るたびに呆然としてしまう。

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(左がリチャード・ロジャース。右がオスカー・ハマースタイン2世。真ん中はアーヴィング・バーリン)


ロジャース/ハーマスタインは、コンビでトニー賞を34も獲っていて、アカデミー賞も『南太平洋』で獲っている(この映画では獲っていない)(この年、1965年のアカデミー作品賞と監督賞を、この『サウンド・オブ・ミュージック』が獲っているのだけど、音楽賞は『いそしぎ』が獲った)。


上であげた以外でも

『自信を持って』
これは中学時代に英語で覚えたくらい好きな歌。いまでも歌える。


この場面で、実は本物のマリアが少し出ている。つまり、マリア・フォン・トラップ本人が通行人として出ているらしい。
とはいえ、遠くてよくわからないほどの出演の仕方。
ジュリー・アンドリュースが街を見下ろせる道で「大佐と7人の子ども? それが怖いの?」と自問した次のシーンで、アーチをくぐるショットがある。そこでジュリーの後ろを鮮やかな民族衣装の女性が3人、左から右に歩く。それが本物のトラップ夫人と娘ロースマリー、孫娘バーバラだということだ。

『私のお気に入り』
My Fevorite Things。いまやジャズのスタンダードであり、日本人にとっては「そうだ、京都、行こう」のコピーで有名なCMのBGM。ジャズではコルトレーンの演奏が本当に素晴らしい。

『ド・レ・ミの歌』
曲も全く素晴らしいのだけど、なんといっても演出が秀逸。ミュージカルのお手本のようなつなぎ。

『ひとりぼっちの山羊飼い』
これも名曲ですよねぇ。まったく良く出来ている。

『さよなら、ごきげんよう』
2回出てくるけど、家の階段で歌う方が好きだし秀逸。グレーテル役のキム・カラスが可愛い。

『何かよいこと』
いやぁ、いい歌。なんか初めの頃は「この曲だけたいしたことない」って思っていたけど、いまではトップクラスに好きな曲になった。なんか飽きが来ない名曲。

『すべての山に登れ』
ちょっと名曲っぽすぎて少し引く感じすらある名曲。ペギー・ウッドの歌いっぷりが少し飽きる部分があるけど、とはいえ名曲。

あぁ!駄曲がない!


この映画のすごさは語り尽くせないほどあると思うし、ひとそれぞれ思い入れも違うだろう。

とにかく、音楽の完璧さとカメラワークの斬新さ、ロケーションの素晴らしさ、ロバート・ワイズ監督のうまさ、「実話」という強さ、そして何よりジュリー・アンドリュースの輝くばかりの魅力。

ジュリー・アンドリュースは『メリー・ポピンズ』でデビューしてこれが3作目(間に「卑怯者の勲章」という映画に出ているらしいが観ていない)。

そのフレッシュさとこの人以外に考えられないほどの役へのハマリ方、演技力、歌唱力、すべてが過不足なく備わって、もうほれぼれしちゃうようなマリアぶりだった。

惚れたよなぁ、ジュリー・アンドリュース。
長女役のシャーミアン・カーとジュリーのふたりにもう40年以上惚れっぱなしだ。


1996年の秋にニューヨーク出張した時、ブロードウェイでジュリー・アンドリュース主演のミュージカル「ビクター・ビクトリア」を観た
ジュリーの生の舞台。
ジュリーと同じ空気を吸っているオレ。
いやぁ、ちょっと信じられない気持ちだった。


この映画を初めて見たのは中学1年生のとき。
それ以来いったい何度この映画を見たことか。

そして、友人の結婚式をはじめとして、ふとしたときにこの映画のことを思い出す。

好きな映画はたくさんあるけど、こんなに頻繁に場面を思い出す映画は他にないなぁ、と思う。

そういう映画に巡り会えて、ボクは幸せだ。

配信とかで気楽に観られる時代にはなったけど、この映画を観るときはちゃんと体調整えて、ゆっくり観たい。

そんな人生的名作なのである。


The Sound of Music

Robert Wise
Julie Andrews, Christopher Plummer, Richard Haydn, Peggy Wood, Anna Lee, Portia Nelson, Charmian Carr

1965年製作
174 minutes

監督・・・・ ロバ−ト・ワイズ
脚本・・・・ アーネスト・レーマン
作詞・・・・ オスカー・ハマースタイン2世
作曲・・・・ リチャード・ロジャース
キャスト・・ ジュリー・アンドリュース
クリストファー・プラマー
エリナー・パーカー
リチャード・ヘイドン
ペギー・ウッド
シャーミアン・カー



2019年12月、「午前10時からの映画祭」で、大画面でデジタル・リマスター版の『サウンド・オブ・ミュージック』を観た。

三列目ド真ん中で浸った。
自分の視界の隅から隅までがぴったり画面サイズになる席だ。

「必ず3回涙ぐむ」どころではなかった。
もう、10回以上泣いた。

というか、冒頭1分くらいですでに涙腺崩壊した。
カメラが厳しい雪のアルプスを越え、そこに鳥の歌うような声が聞こえてきて、緑の丘が見えてくるあたり。まだジュリー・アンドシュースも出てこない。そんなあたり。

そんなとこで泣くってどうよ、って自分でも思う。
ただ、この部分はこの映画のテーマを表しているから、感情移入しても仕方がない。厳しい状況(時代も、大佐も、マリアも、子ども達もみな厳しい状況から始まる)の中、鳥の歌とともに希望の緑の大地が見えてくる。

本当にすばらしい導入部だ。


※※
なんと、ジュリー・アンドリュースと、マリア・フォン・トラップ本人が話している(しかも歌っている)動画があった!


古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。