時間が経つのが遅い国4

またお腹がぐ〜っとなった。変だ。お腹は、親からもらった時計の通り、もうお昼をまわっているのに、職場の人の反応はまるで自分で買った時計が示す、10時であるかのようだ。
思いきって、私は山谷さんに聞いてみた。
「あは、なんかわたしの腕時計、こわれてたみたいです。今、何時ですか?」そうだったのかというような顔で、山谷さんは、こう答えた。「まだ10時だよ」
やはり、自分で買った時計が正解だったのだ。

体感とのズレを感じながらも、私はまた椅子に座り、仕事をはじめた。
なにごともなかったかのように、他の人もまた、仕事を始めた。山谷さんもまた、執筆を始めた。

それじゃあ、午後から手をつけるはずだった仕事もやっちゃおう。私は、ご飯を食べて眠い状態でもできる単純作業を、次々とこなしていった。

仕事がサクサク進んだ。
私は腕時計を外すこともせず、そのまま二本の腕時計を腕につけたまま、仕事をしていた。誰からも、何も言われなかった。