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気温20度は極寒です

TikTokを見ていたら、「気温が20度と聞いた時の南カリフォルニアの人」というタイトルで、ダウンコートにニット帽を羽織っているにもかかわらず「寒い寒い」と連呼している人が映っていて、大いに受けた。というのも、寒い雨の日、まさに私もその格好で「寒い寒い」と言いながらTikTokを見ていたからだ。

気温20度って、冷静に考えたら、ダウンコートにニット帽を羽織ってなお寒がるほどには寒くないよね、きっと。しかし、年間を通してお日様にスポイルされている南カリフォルニアンたちには、太陽の日差しが届かないことによる寒さには慣れておらず、冒頭のような反応になるのである。

暮らしてみてわかる、あるあるだ。

8年前、渡米したばかりの年のこの季節、急に冷え込んだことに驚いて、「温暖なイメージのカリフォルニアでもこんな寒くなるんだ!?」
と慌てて冬物の洋服をたくさん買い込んだことがあった。

ロングブーツや厚めのジャケットなどを持って会計に臨んだ私に、レジのおばさまは「これで冬支度はばっちりね」と言った。

「カリフォルニアに来て初めての冬なの。こんなに寒くなるって知らなかったから、慌てて用意しているの」というようなことを私が言うと、彼女は頷いて、でも、こんなアドバイスもくれた。

「サンダルとTシャツはしまいこまない方がいいわ。冬の真っ只中でも、必要な日があるから」

それは本当だと私が納得するのに、たぶん、1ヶ月もかからなかったと思う。

洋服といえば、今年はどうもニットが流行っているのか、買い物にいくと例年以上に色鮮やかなニットに目がつく。

でも、このニット、とりわけセーターとやら、南カリフォルニアでは最も着にくいファッションアイテムの一つである。

朝はセーターにふさわしいくらい寒くなるのでいいのだが、昼間、太陽が出ると、ニットを着ていてはちょっとあつすぎる、となることはざらで。

これがジャケットなどの羽織ものや、同じニットでもカーディガンであればすぐに脱げるのだが、セーターとなると顔をごそっと穴に通さなきゃいけなくなって静電気バッチバッチになったりするので、「あついからちょっと脱ぐね」ってわけには、なかなかいかない。

もっというと、セーターを脱ぐってことはその下に着ていた洋服が表に出るってことで、つまりは、セーターを着ていても成立する、しかし脱いでも成立する、という二つの気遣いが必要になるってことでもあって、よほどのオシャレ好きでないと、そのコーディネートは面倒だ。

結果、南カリフォルニアでセーターを着用する頻度は、ほぼなくなる。ということがこの8年でよくわかったので、店でどんなに可愛いものを見つけてもなかなか手が出ない、という難易度の高いアイテムに、セーターはいつのまにかなってしまった。

最近、昔を振り返って、それこそ選ぶ洋服だったり、思考の仕方だったり、信念だったりが、以前の自分とは全く違うと気づくということが多いのだが、それが年齢のせいなのか、時代なのか、それとも日本からアメリカに引っ越したせいなのか、よくわからない。

というより、たぶんその全部が影響しているし、もっと言えば別に理由など探らなくてもいいのであった。

こんなふうにいろいろ考えちゃうのは、きっと秋だからだね。

…とやっぱり最後は、なんとなく理由づけしちゃった。