見出し画像

風横丁

誰かとの食事を終えてなんとなくまだ帰り道を進みたくないな、と思うときや、一人の時間が過ごしたいときに足を運ぶお店があって。私にとってはじめての行きつけのお店です。

友達がアルバイトをしていたのをきっかけに知ったお店。駅前の飲み屋さん街の入口の角にあって、初めてお店に行ったのは1年前くらい、20歳の私がこんなお店に一人で来るなんて場違いじゃないかな、とソワソワしていたのを覚えています。その日は確か、日中にお出かけをしていて、タペストリー柄の落ち着いたワンピースを着ていたから、これだったらいける!って思って。いつもは大体リュックサックだけど、その日は小さいバックでした。

そのお店に行くと大体2000円以上になることが多いので、最初のうちは月に一回自分へのご褒美感覚で通うように。なんとなくその一度の食事で2000円以上というのは大学生としてどうなんだろうと思っていたのですが、今考えると大学生って飲み放題付きの飲み会で3500くらい払って、二次会まで行ったら5000円以上の出費もあるな、と。

そのお店でアルバイトをしていた子の友達っていうこともあって、2、3回お店に行くようになると、マスターが付け出しを出してくれるときに「いつもありがとうございます。」って言ってくれるように。私にとってその日は常連さん記念日。だって、これまでって家族でよくいくお店だったら、「佐藤さんのところの子どもさん」として見られているから、その日が初めて真の常連さんデビュー!

お店はカウンターとテーブル席があるので、一人で行くときはカウンターに座って、私と同じように一人で来たお客さんがカウンターで隣になることもあります。アルバイトの子とずっと話しているお客さんもいれば、静かにお酒を飲んでいるお客さんもいるし、そんな大人とマスターがたわいもない話をしている姿を見ながら私もお酒を飲む。ちなみに一杯目は大体エビスの黒ビールです。

たわいもない話って、実は私はあんまり得意ではなかったりします。そういえば自分の身の回りに広がる言葉のやり取りを考えてみると、ミーティングでの議論とか、友達との恋バナとか、地域の大人の方に取材するとか、結構ね、なんでなんで?って沼にはまっていくような話ばっかりな気がします。軽い会話っていうのかな、そのひと時を楽しむだけの会話みたいなのがとても下手くそです。ある日、カウンターで隣になったおじちゃんに、「深いところなんていうのはあんまり興味がないんだよ〜楽しい時間を過ごしたいからね」って言われた時は弱点を突かれたような気持ちになったなぁ。でも、結局そのおじちゃんは半分くらいお酒をプレゼントしてくれて、結局楽しかった。

そうそう、カウンターでの出会いっていうのもすごく楽しいです。20歳になってお酒が飲めるようになったとき、ついつい楽しくて同級生と派手にお酒を飲んだりもします。その時のお酒って美味しいかどうかじゃなくて、酔うか酔わないかみたいな感じ。そうじゃなくて大人の人が「飲んでみんさい」って言って教えてくれるお酒って、なんだかとっても特別。さっきの話からはまた違うおじちゃん(おじちゃんっていうよりはおじいさんかな)はそのお店でいつもジャックダニエルっていうウィスキーを飲むらしい。ウィスキーなんて罰ゲームでしか飲んだことはなかったです。おじいさんが頼んでくれて、飲んだジャックダニエルの味は思ったよりも美味しい、っていうのが正直な感想。おじいさんには、まだこのお酒の美味しさはわからんよって言われて、勧めてきたのはおじいさんじゃん!って思ったけど、わからないけどいいんだよって言われている感じは居心地が良かったです。その日は「あちらのお客様からです。」記念日。

一杯目はエビスの黒ビールで始まり、白ワインを飲んだり、最近はチャイナブルーっていうライチとグレープフルーツのお酒が好きでそれにはまっている。そのお店の牛すじカレーが大好きです。カレーってライスとカレーに分かれているけれど、そのお店はもうカレールーとご飯が混ざった状態で出て来て、卵が乗っていて。あと食べ物でいうと、スモークチーズにも最近ハマっていて、この前付け出しでスモークチーズが出て来たときは「私がいつも頼んでいるからですか?!」と心の中でマスターにキュンとしていました。

ここまで読んでくださった方はもうお気づきかもしれないんですけど、このお店にゾッコンです。コロナの期間はピザのテイクアウトをされていて、一度シェアハウスでも4枚買ってピザパーティーをしました。いろんな飲食店さんが大変な状況になり、中にはお店を閉めてしまったところもあったり、クラウドファンディングで資金集めをしているお店さんもあったりしましたが、あのお店だけは無くなって欲しくないという気持ちになりました。マスターさん元気かな、とか勝手に思ったり。

思い出が詰まっているお店でもあり、これからも思い出を作りたいお店でもあります。上に書いた出来事以外にも、すごく素敵だと思っていた先輩とお酒を飲むことができた場所で、大切な友達が東広島に来てくれたときにゆっくり話すことができた場所で、この前は友達とちょっとした歌を披露したり。

そんなお店なんですが、最近ちょっと嬉しいことがあります。

お店にふらって寄ると、大学生の友達や先輩と会うことが多くなりました。あのお店っていい場所だよねって一緒に言うことができたり、なんとなくみんなの居場所になっていたり、若い人とまちの人が交流する場所に自然となっていたり。

あぁ牛すじカレーが食べたくなっちゃったなぁ。おやすみなさい。

画像1


いただいたサポートは、私が私の言葉にしたものを「あっよかったんだな」と信じるきっかけにさせていただきます。