「風よ あらしよ」村上由佳=著

アナーキスト(無政府主義者)として、自分のために生き愛した伊藤野枝。明治・大正のなかで生きた激動と波乱の生涯を、彼女を取り巻く人物の視点を通して描いた、恋愛小説の第一人者の評伝小説の誕生だ。
伊藤野枝はたびたび人物伝的なエッセイや、栗原康の評伝で読んだことはあるし、瀬戸内寂聴の「美は乱調にあり」などで知られる。
翻訳家で教師だった辻潤とアナーキストの大杉榮の妻であり、7人の子の母で文筆家として革命家でもあった彼女。
今回の村山由佳の本作では、彼女の人生を掘り下げながら、今を生きる女性たちへのメッセージとして書いている。伊藤野枝は、令和の現在に何を伝えているのか。その問い掛けを本書から受け取り、考える。自分らしく生きて、愛して、そして闘う。
野枝が生きた時代より、現在ははるかに生きやすくなったが、まだ問題点が多い。働くことと妻で母であることの両立の困難、女性として生きることの壁。それを乗り越え生きることの強さと知恵を、この小説は教えてくれる。
間違いなく、今年の小説ベストワンはこれだ。

#読書の秋2020 #風よあらしよ

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