satocchi shibuya

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「風よ あらしよ」村上由佳=著

アナーキスト(無政府主義者)として、自分のために生き愛した伊藤野枝。明治・大正のなかで生きた激動と波乱の生涯を、彼女を取り巻く人物の視点を通して描いた、恋愛小説の第一人者の評伝小説の誕生だ。 伊藤野枝はたびたび人物伝的なエッセイや、栗原康の評伝で読んだことはあるし、瀬戸内寂聴の「美は乱調にあり」などで知られる。 翻訳家で教師だった辻潤とアナーキストの大杉榮の妻であり、7人の子の母で文筆家として革命家でもあった彼女。 今回の村山由佳の本作では、彼女の人生を掘り下げながら、今を生

    • 今月読んだ本から(5月)

      「コロナの時代の僕ら」 パオロ・ジョルダーノ 飯田亮介訳 早川書房 新型コロナウィルスが最も感染を拡大したイタリア。そのなかで著者は、何を考え、どのように感じたのか。そしてコロナを生きている我々に、どのようなメッセージを伝えたいか。本書には、そのすべてが詰まっている。「感染症とは、僕らのさまざまな関係を侵す病だ」とあるように、人間のかあらゆる面を見せていく。そして考えるべきこと、忘れたくないことをシンプルな文章で綴っている。ささやかな希望の書として、後世に読み継がれるこ

      • 今月読んだ本から

        「銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎 」ジャレド・ダイアモンド著(草思社文庫) 世界の文明はいかにして作られたか。植民地はどのように成立していったか。文明の世界史をひもとく名著。以前読んだことがあるが、今回改めて読むとすごい発見があった。とりわけ、現在は新型コロナウイルス感染のこともあり、再注目されるようになった。それにしても、植民地を広げる人々の凄まじさは恐れもあるが、世界をより良くするためでも奔走していったのだろう。 グローバリズムの今だからこそ、読んで

      「風よ あらしよ」村上由佳=著