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【着物コラム】民族のアイデンティティと民族衣装の関係性について


こんにちは、着物コーディネーターさとです。

先日、某フリマアプリで、
ヴィンテージの旗袍(チャイナドレス)を入手しました。
年単位で探していてやっと見つけたので、やっぱりレア物なんですねぇ。

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出品者の方によると「アメリカで50年代古着として販売されていた」との事で、
早速中国のSNS、Weiboにアップしたら
「40年代の型だけど生地は50年代だね」との事でした。


先日こちらの記事で紹介した「チャイナドレス大全」にも記述があったのですが、
中国外の華僑社会にも、中国本土の旗袍の流行は波及していたけど、
年単位で遅れがあったようなんですね。

Weiboでも「きっと海外縫製の旗袍だね」という結論に落ち着きました。
どこで生産されたのかは不明ですが、
ちょっと珍しい物には違いないようです。大事にしようと思います。


民族のアイデンティティと民族衣装


時々、着物を「日本人のアイデンティティ」の一部として語る人がいます。
私は個人的には、あれがどうしても受け付けられないんですよね。
(もちろん、好みや思想は個人の自由であって、私が誰かの思想に口を出す権利はありません。)

着物は日本の民族衣装であるのは事実だし、
日本人だから着物と出会って着用するに至ったのも事実なのですが、
私は「服として着物が好き」で「しっくりくる」から着ているだけで、
「アイデンティティー」と思って着物を着ている訳じゃないんですよね。

InstagramやWeiboを通してアジア圏の外国に住む友人もできましたが、
皆さん「外国人」のアイデンティティのまま着物を着ていて、私はそれがとても好きです。

台湾や香港の私の友人たち(ほんの数人ですが)は、
日本が好きで着物が好き!という人が多いのですが、旗袍にも好感を抱いている人が多いように感じます。
それは旗袍という「満州の民族衣装の洋風アレンジ服」が、
華僑を含む他国在住者の民族的な美意識を包容しているから、なんだと思います。

国家は違えど民族のルーツはきっと同じだから、似合う人も多いでしょうしね。
着物には「国を跨いで別のコミュニティの人に着用されている」という文化の認識があまりされていないので、
ピンと来ない人が多いのかもしれません。


そうそう、WeiboやInstagramで、
たまに海外の「おばあちゃんが日本人」みたいな人からコンタクトがあるんですよ。
香港は日本が植民地化していた時代もあるし、
台湾も日本統治時代があるので、
着物にも「民族のアイデンティティ」と線引きができない、
グラデーションの文化も存在しているようです。
とはいえ、華僑と比較すると人数もぐっと少ないので、
コミュニティー形成にまでは至っていない印象です。

もっと日本に対してマイナスな感情もあるのかな?と思っていると
若い人はそうでもない人が多いようなので、
また彼らから話を聞く機会を持てたらいいな、と思っています。


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国籍や民族のグラデーションの部分は、
両親共に日本人で、30歳超えるまで海外旅行にも行ったことがなかった、
ズブズブの日本人の私には、本質的な理解は難しいのかもしれません。
たまに「あなたには分からないよ」とバッサリ言い捨てられる事もあります。笑

でも、そういうグラデーションの部分も確かに存在しているのを知った時、
「民族衣装はその国の民族だけの固有の衣装なのか?」
という疑問が生まれました。
「日本の着物は日本人だけの固有の文化」という事に関してもです。
まだこの疑問は解決していないですし、
もしかしたら解決できる日は来ないのかもしれません。
でも、これからも繰り返し考え続けて生きたいと思います。