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佐藤の指揮棒談義[指揮者編1:カラヤン]

 指揮者を語るうえで外すことができないのが『楽壇の帝王』カラヤンです。指揮者について詳しくない方でも、カラヤンは知っているという方は少なくないはずです。ということで、佐藤の指揮棒談義指揮者編の記念すべき第1回はカラヤンについての解説です。ちなみに私が解説できるのは指揮棒関連の情報だけです。指揮法も少しかじってみましたが、難しかったので諦めました。許してください。

 カラヤンの指揮はYouTubeでもたくさんの動画がアップロードされていて、指揮棒についても容易に解説できるほどの資料があるように思えますが、実は彼の指揮棒を観察するのは少々苦労します。これは彼の指揮棒の持ち方に原因があります。

持ち方

 ご自分で動画を確認していただくとわかりやすいと思いますが、彼は指揮棒を手のひらで包み込むように持っています。決してがっちりと固定しているわけではありませんが、指揮棒の動きはあまり大きくありません。この持ち方は割とポピュラーなもので、現代のベテランから若手まで広くみられます。おもに太めのグリップ(丸や三角のもの)の指揮棒を使い、手の平で包み込むか手のひらに押し付けるかするので安定性が高く、白熱した指揮者が棒を激しく振り回しても、棒が吹っ飛んでしまうといったアクシデントが起こりにくくなっています。
 また、人差指で指揮棒を固定することもできるので、指揮棒の制御がしやすいというのも重要なポイントです。また、カラヤンの指揮棒は比較的短いことでも知られており、彼は指揮棒の動きに関しては神経質だったのでしょう。

カラヤン持ち方

 このような持ち方が広く普及しているせいで、私のような指揮棒ファンはテレビの中の指揮者が振っている指揮棒を特定するのが大変難しいのです。指揮者のTwitterアカウントの画像をあさったりしてようやく見つけることもあります。これはカラヤンについても例外ではなく、彼の指揮棒のグリップの形を推定するのはとても難しいものでした(Twitterやってないし…)。が、やはり超有名指揮者ですから、資料はYouTubeだけではありませんでした。というのも彼の指揮棒は音楽の家(ウイーン)に展示されているらしいのです(行ってみたいですね)。
 なんともあっさりした結論ですが、彼の指揮棒は三角グリップのものだそうです。ROHEMA社ではK-MODELというカラヤンからインスピレーションを受けてデザインされた指揮棒がありますが、これと実際彼が使っていたものはだいぶ異なるデザインですので、カラヤンにあこがれて指揮棒を買う方は注意が必要かもしれませんね。

振り方

 棒の持ち方は普通(?)なカラヤンですが、振り方は個性的です。彼の指揮の特徴として2つのポイントがあり、これを一言で「目を瞑った滑らかな指揮」と言われるいわれることがことがあります。
 カラヤンが指揮の際に目を瞑っていたことは皆さんもご存じのことと思います。指揮棒にしか興味のない私は、これについては集中、暗譜程度しか話すことはありませんので割愛して、彼の腕に注目してみましょう。
 まず第一印象として私が感じたのは、彼の指揮は滑らかでありながらも力が入っているように見えるということです。おそらくこれは、彼の肘が外側を向いていることが多いのが原因でしょう(肘を張るといかり肩に見えますし)。指揮法の重要な要素の一つとして「叩き」というテクニックがありますが、これを行うときは肘を下に向けたほうが体の構造上楽です。カラヤンのように肘を外側に向けると叩きの際に首に負担がかかり非常に危険です。詳しいメカニズムは難しいので説明できませんが、おそらく慣性か何かでしょう。とにかく叩きは負担が大きいのでカラヤンがこれをしているのはあまり見られません(個人的にそう見えるだけかもしれませんが)。その代わり、彼は肩より上に棒を振り上げることも少なく、この動作が叩きの役割を果たしているということも考えられます。
 そもそも基本的には彼の指揮は、4拍振りにみられるような垂直のバウンドよりも2拍振りのような横バウンドが多く、打点に対する棒の距離に棒の速度が依存しない、いわゆる平均運動と呼ばれる指揮がメインです。これが彼の指揮を滑らかに見せる一因なのかもしれません。また、彼の指揮では肘、手首がよく動きます。特に肘を外側に向けている分、この二つの関節による動きが彼の指揮の動きに、より大きな影響を与えています。テンポ感を示す等の指揮については肘のみ、手首のみが動く一方で、ゆっくりなテンポの時の指揮は肘と手首による滑らかな動きがみられます。手首より先のパーツは手のひらと指だけですから、手首を動かしてもそれらがぶらぶらしているように見えるだけですが、指揮棒を持つことで手首の先の長さをかせぐことができます。肩から肘、肘から手首、手首から指揮棒の先までの長さは大体同じくらいなので、まるで三節棍を自由自在に扱っているかのような印象を与える指揮です。

おわりに

 今回はカラヤンの指揮棒、指揮について解説しました。皆さんも三角グリップの指揮棒でカラヤンの指揮をまねてみてはいかがでしょうか。
 次回はカルロス・クライバーの指揮棒を解説しますのでぜひご覧ください。

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