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衝撃を受けた本を紹介します

 今回は私が以前に読んで、衝撃を受けた本を紹介してみたいと思います。『次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方』(若林恵・責任編集)です。
 この本は、私が以前から好きで読んでいた『WIRED』日本版編集長をされていた若林恵さんが責任編集ということで目に止まり、惹かれて手に取りました。行政の関連ということで、自分の仕事にも関係するのかな?と思って読み始めたのですが、自分が以前から課題と思っていたことについて、読み始めると見事にその答えを出してくれるような感覚で、衝撃を受けたことを覚えています。

こんな本です

 中身を簡単に言えば「公共」とはなにか?をわかりやすく教えてくれる本です。  
 この国に暮らす誰もが、関わりをもたずに生きていくことはできない「公共」の中でも、国のレベルではなく地方政府のことについて、これまでの行政府のあり方、それが今の時代にどこが合わなくなっているのか。これからの未来の行政府のあり方や、行政とテクノロジーの関わり方、インドやエストニアなど、行政にテクノロジーを取り入れるという面で日本よりもはるかに先行する各国の状況をまじえてわかりやすく教えてくれます。
 いまの新型コロナウイルス感染拡大によって、みんながそれまでも必要性を感じていながらいっこうに進むことのなかった行政分野のテクノロジー導入が、急速に進もうとしています。この状況だからこそ方向性は良いのか、そんなこれからの行政のあり方を考えさせてくれる1冊です。

こんな言葉が響きました

一番望ましいのは、最低限のコストで最大限のニーズに応えることのできる「小さくて大きい政府」

 これまでの高度経済成長からの流れの中で、同じものを大量に作り、国民の隅々まで行き渡らせることを目標にしてきた頃に作られた日本の公共の仕組みが、いまの多様性に富んだ、個人を尊重する社会に適応できなくなっていると日常的に感じます。
 同じものを平等に届けることを目的とした行政府であれば、少ない職員が同じことを繰り返すことで対応することができましたが、現在の一人ひとりに対してオーダーメードの対応が必要になってきた社会には対応できませんし、それに対応するだけのマンパワーを用意するのはいまの人口減少社会においては現実的ではありません。

「大きい政府」がやろうとしてできなかったこと、「小さな政府」がやろうとしてできなかったことを、デジタルテクノロジーを使ってつなぎ合わせることで、新しい公共の仕組みをつくり出すことができるかもしれない

 一方で小さな政府を作り、コアな部分のみを公共セクションが担う。それ以外の部分を民間に任せると、どうしても儲かる部分に民間資源が集中し、儲からないニーズは担い手がいなくなってしまいます。

なぜならデジタルテクノロジーは、「最小コストで最大化する」とか「個別のニーズに個別には応える」ことがめっぽう得意

 やはり細かいニーズはテクノロジーで対応し、少ないマンパワーをどうしても人間が担う必要のあるプランニング等に集中すべきだと感じます。

まとめ

 いまの社会は、デジタルテクノロジーが発達する前の高度経済成長期を生きてきた世代と、低成長期を生きてきたデジタルネイティブ世代が混在しています。そのため、どうしても全ての世代にサービスを届ける公共政策を行おうと思うと、デジタルとアナログを併用する必要があるので効率的には行うことができず、それにかかるコストも高くなってしまいます。非常に難しい時代だと感じています。
 そのうえ家族関係が希薄化して、一人ひとりが孤立化する傾向にありますので、全ての人を救うのは非常に難しいと言えるでしょう。
 この難しい世の中で、いかに効率的に多くの人に公共福祉を届けていくか、完璧な答えなどないと思いますが、模索を続けながら、理想を追求していくしかないと思います。
 日本の場合、なぜ地方政府ではなく、地方自治体なのか?そこに誰しも本質的な問題を感じるところではありますが、LINEなどの民間サービスも公共サービス分野での役割が非常に大きくなっている昨今ですので、そういうところをきっかけにこれから変わっていくことに期待というところでしょうか。そんなことを考えさせてくれる1冊です。

 ずっと買えませんでしたが、デジタル庁の創設を前に黒鳥社から緊急復刊!だそうです!おすすめですよ〜


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