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H-IIBロケット9号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9) 打上げについて(概要)

5月21日に宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)がH-IIBロケット9号機により打ち上げられました。通信リンク及び3軸姿勢を確立し、国際宇宙ステーション(ISS)到着に向け、順調に飛行しています。

今回の「こうのとり」9号機は、6号機より4回に分けて計画通りに輸送していた新型のISSバッテリー、窒素のタンクやさらに宇宙飛行士の食料・水などISSの運用に欠かせない物資のほか、「きぼう」日本実験棟で行われる実験機器※1や「きぼう」有償利用の機器※2などを搭載しています。また、「こうのとり」9号機に設置したカメラで撮影した映像をWireless LAN通信を経由してリアルタイムでISSに伝送する技術の軌道上実証※3も行います。

今回でシリーズ最後となる「こうのとり」は、15か国が協力する国際宇宙ステーション計画において、最大級の物資補給量を誇り、国際宇宙ステーションの運用・維持には欠くことのできない重要な役割を担ってきました。この打上げ成功により、「こうのとり」9号機は無事に予定軌道に投入されました。また、「こうのとり」の後継機として、現在、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」の開発を進めています。「HTV-X」は、「こうのとり」の開発や今回の9号機までの打上げ・運用を通じて、蓄積してきた技術や知見を活かして、輸送能力・運用性を向上させた新たな補給船として今後のISSへの補給を引き継ぎます。さらには、国際協力で開発を進める月周回ステーション「Gateway」への補給を担うべく、国際間での調整を進めています。

そして、「こうのとり」を打ち上げたH-IIBロケットも今号機でシリーズ最後となりました。H-ⅡBロケットは2009年の初号機打上げから、9号機まで全ての打上げが成功し、HTVとともにISSへの物資輸送という重要な責務を果たすことを可能としました。現在、このH-IIBロケットやH-IIAロケットで培ってきた技術力を結集して、我が国の次期基幹ロケットとして、今年度の試験機初号機の打上げを目指して、「H3ロケット」の開発を進めています。

※1「きぼう」日本実験棟で行われる実験機器・・・固体燃焼実験装置(Solid Combustion Experiment Module:SCEM)FLAREプロジェクト(Flammability Limits at Reduced Gravity Experiment:自然対流のない宇宙ステーションの環境(微小重力環境)を活かし、固体材料の着火・火炎燃え拡がりなどの燃焼現象に対し重力が果たす役割を、様々な固体材料を用いて科学的に明らかにする)で、固体材料の燃焼実験で使用する装置。
※2「きぼう」有償利用の機器:
①超小型衛星搭載用地球観測カメラ(integrated Standard Imager for Microsatellites:iSIM)・・・iSIMは、スペインの宇宙ベンチャー企業であるSatlantis社が開発している超小型衛星搭載用の地球観測カメラ。軌道上の実証では、ISSの「きぼう」船外実験プラットフォームに設置されている中型曝露実験アダプター(i-SEEP)にiSIMを設置し、高い解像度で地上を撮影する。
②Space Studio KIBO開設に必要な機材・・・株式会社バスキュール、スカパーJSAT株式会社及びJAXAによるJ-SPARCにおける宇宙メディア事業の創出に向けた活動として、「きぼう」船内に番組スタジオ「The Space Frontier Studio KIBO(きぼう宇宙放送局)」を開設し、宇宙と地上でリアルタイムにコミュニケーションが楽しめる、双方向ライブ配信を開始する予定。
③宇宙アバター(space avatar)用カメラ・映像伝送装置など・・・ANAHDとJAXAにより、2018年9月にJ-SPARCの下で開始した“AVATAR X Program(アバターエックスプログラム)における事業コンセプト共創の一環として、宇宙でのアバター利用を実証するのに必要な機器。「きぼう」に宇宙アバター「space avatar(スペースアバター)」を設置し、世界初の試みとして、一般の方が街中から、「きぼう」に設置される「space avatar」をリアルタイムで直接動かし、「きぼう」船内から宇宙や地球を眺めることが可能になる。

※3 Wireless LANリアルタイム伝送技術軌道上実証・・・「往路のISS下方からの接近時」、「係留中」、「離脱時」に、近づく或いは遠ざかるISSの様子を撮影しWLAN通信によりアルタイムでISSに伝送する実証ミッション。HTV-Xにおいて検討中のISSに対する自動ドッキングの技術実証に先立ってWLANを使用した映像伝送技術実証を実施する。

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