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米子市内の映画館&レンタルビデオショップ史④ オルタナティブな上映の場

2023年1月30日(月)〜2月5日(日)にかけて、Gallery そらで行う展覧会「見る場所を見る2」の第1部「イラストで見る、米子・境港市内の映画館&レンタルビデオショップ史」の解説文(会場に設置予定)を5回に分けて掲載します。

バックナンバーは以下のリンクから読めます。

第1部
イラストで見る、米子・境港市内の映画館&レンタルビデオショップ史
 ① 密集する劇場、度重なる火災
 ② 最盛期の7館体制
 ③ 映画館の減少、スクリーン数の維持

第2部
紙の上のスクリーンーー鳥取の映画館と「読む」メディア
 ①『THE PRESS HUSTLE』
 ②『Style』
 ③ 『VISION』
 ④ 『moimoi』

オルタナティブな上映の場(1996〜2023)

1997年(平成9)年、米子松竹1・2が閉館しました。建物の老朽化が進み、駐車場もなかったために、若い観客が倉吉のシネマエポックや島根県松江市のシネコンに流れるのに対抗できなかったのが原因とされています。これにより朝日町・角盤町周辺の映画館はすべて閉館し、米子市内に残る映画館は米子SATY東宝1・2・3のみとなりました。市内だけで独立した映画文化を形成しているように見える鳥取市に対して、米子市の場合は、島根や境港など近隣の県や市との間で観客の移動・交流が盛んなのが特徴と言えるかもしれません。

『朝日新聞』1997年7月18日付

1998(平成10)年、米子松竹1・2の閉館をきっかけとして、米子の映画文化衰退を危惧した有志が集い、会員制サークル「米子シネマクラブ」が発足しました。同年7月10日に行われた『ブラス!』の特別鑑賞会は、800人もの観客が詰めかける盛況となり、10月11日の第1回例会『カルラの歌』上映にも多くの会員が参加したそうです。米子シネマクラブは現会長の吉田明広さんが中心となって現在も活動を続けており、隔月での例会が行われています。

吉田明広さん(米子シネマクラブ会長)
『映画愛の現在 第3部/星を蒐める』(2020)より

1999(平成11)年4月17日、米子市に隣接する西伯郡日吉津村日吉津町にジャスコ日吉津ショッピングセンターがオープンし、6スクリーンを有するMOVIX日吉津も同時に開館しました。国道431号沿いに立地し、様々な商業施設と広大な駐車場を有する郊外型シネコンがついに鳥取県にも誕生したということで、大きな注目と期待を集めます。そのアクセスの良さを活かして、日吉津や米子のみならず、島根県松江市などの中海圏や鳥取県の東中部、岡山県北部からの集客も見込まれていました。

MOVIX日吉津
『映画愛の現在 第3部/星を蒐める』(2020)より

1990年代末から2000年代中盤にかけては、個人経営の小規模なビデオレンタル店が姿を消し、代わってブイレックス21アリオンなどローカルチェーンの大型店舗が複数店舗を展開し、存在感を強めていきました。全国展開するTSUTAYAも、2005(平成17)年のTSUTAYA角盤町店を端緒として、米子市内に計3店舗がオープンしました。この3店舗と、2012(平成24)年にオープンしたゲオ米子西福原店を併せた計4店舗が現在も営業を続けています。

ブイレックス21皆生店
2012年(Googleストリートビュー)

2012(平成24)年8月31日、米子SATY東宝から2度改称して営業を続けていた米子駅前SATY東宝が閉館し、ついに市内から映画館が姿を消しました。また2010年代後半には、動画配信サービスの隆盛によってレンタルビデオ店も大きな打撃を受けます。本展覧会の開催直前の2023(令和5)年1月9日には、ローカルチェーンのアリオン皆生店が惜しまれながらも閉店することになりました。

アリオン皆生店
2023年1月8日

しかし鑑賞機会の減少は、新たな表現や文化を生み出す契機にもなり得ます。米子駅前SATY東宝の跡地で2014(平成26)年から2021(令和3)年までガイナックスシアターを運営し、「米子映画事変」などのイベントを企画する米子ガイナックスや、中海テレビ放送の市民チャンネルを活用して映像作品の発表を行う米子映像、実験的な作品や自主制作作品を積極的に紹介する水野耕一さんのよなご映像フェスティバルなど、各々の信念に基づいた活動が現在も行われています。

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