佐々木友輔

映像作家/鳥取大学地域学部で教員をしている/揺動/風景論映画/ドキュメンタリー/鳥取の…

佐々木友輔

映像作家/鳥取大学地域学部で教員をしている/揺動/風景論映画/ドキュメンタリー/鳥取の地域映画史と公共上映/🦀蟹/鴨🦆/アイコンは品岡トトリさんに描いていただきました。

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    ミュージックビデオの身体論

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  • jig theater関連

    鳥取県中部のミニシアター「jig theater」と、倉吉シネマエポックで行われた企画「〇〇と映画」に関連する記事です。

記事一覧

ミュージックビデオの身体論④ カメラレス・ダンス

4. カメラレス・ダンス(目次) 4-1. 絶対映画と視覚音楽連載の前回(ミュージックビデオの身体論③ 映像そのものがダンスする)は、ハービー・ハンコック『Rockit』(1983…

佐々木友輔
3か月前
56

なぜ「ことば」は再発明されねばならないのか

鳥取大学地域学部・佐々木研究室とコーディネーターの蔵多優美さんとの共同企画として「ことばの再発明-鳥取で「つくる」人の ためのセルフマネジメント講座-」と題した…

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あなたに映画を愛しているとは言わせないなんて言わせない

2022年2月12日(土)に恵比寿映像祭で『映画愛の現在』三部作が上映される。「映画愛」と銘打ってはいるが、特定の「愛」のかたちを鑑賞者に押し付けることを意図したわけ…

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ミュージックビデオの身体論① 多面的で全体的なイメージ

1-1 MVを通じて「身体」を考える人は何を求めてミュージックビデオ(MV)を見るのか。そこから何を受け取り、何を引き出すことができるか。答えはそれぞれ異なるだろうが、…

佐々木友輔
8か月前
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原将人『世界‐内‐存在の風景論的眺望』を読む

 原将人の論考「世界‐内‐存在の風景論的眺望」は、第二次『映画批評』創刊号(新泉社、1970年10月)に掲載され、後に単著『見たい映画のことだけを……』(有文社、1977…

佐々木友輔
11か月前
26

ミュージックビデオの身体論② 顔とクロースアップ

2-1. 演奏する身体のクロースアップ楽曲を演奏・歌唱するアーティストの身体は、多くのMVにおいて作品の中心的な役割を占めている。ボーカルの歌う表情やギタリストの弦を…

佐々木友輔
7か月前
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地方映画史研究のための方法論(2)ジョナサン・クレーリー『観察者の系譜』

見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト「見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト」は2021年にスタートした。新聞記事や記録写真、当時を知…

佐々木友輔
7か月前
21

「映画による場所論」を再起動する

都市の全域的なリアリティを求めて 鳥取であれ茨城であれ、沖縄であれ東京であれ、わたしたちは特定の「都市」あるいは「地域」と呼ばれるものを容易に思い浮かべることが…

20

地方映画史研究のための方法論(1)ミシェル・フーコーの考古学的方法

見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト2023年3月31日に、展覧会記録集『見る場所を見る2——鳥取・米子・境港市内の映画館&レンタルビデオショップ史』(…

佐々木友輔
7か月前
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「方法」としてのドキュメンタリー(巡回上映「現代アートハウス入門 ドキュメンタリーの誘惑」を見る)

2022年12月3日(土)から、jig theaterで「現代アートハウス入門」第三弾の上映が始まりました。今回のテーマは「ドキュメンタリーの誘惑」ということで、私は初日にドキュ…

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地方映画史研究のための方法論(18)都市論と映画⑤——若林幹夫の「社会の地形/社会の地層」論

見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト 見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト 「見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェク…

佐々木友輔
1か月前
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地方映画史から、ただの日本映画史へ

 2022年になった。下記の文章を、新年の抱負の代わりとする。  2016年に鳥取に来て、映画の自主上映活動を行う人々にインタビューした『映画愛の現在』三部作を制作する…

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かんのさゆり「New Standard Landscape」於 石巻のキワマリ荘

2022年3月、石巻のキワマリ荘でかんのさゆりの写真展を見た。以下、備忘録として残しておく。いつか機会があれば、前回の西澤諭志展と併せてもう少し丁寧に論じてみたい。 …

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見る場所を見る2——アーティストによる鳥取の映画文化リサーチプロジェクト

昨年度に引き続き、今年度も「鳥取の映画文化」をテーマとする展覧会「見る場所を見る」を開催します。 第2弾となる今回は、鳥取県西部の米子市・境港市の映画館とビデオ…

佐々木友輔
11か月前
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〇〇と映画

鳥取県中部のミニシアター「jig theater」による新たな企画「〇〇と映画」に、映画解説役として参加します。 「〇〇と映画」は、jig theaterの柴田修兵さんと三宅優子さん…

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鳥取市内の映画館&ビデオレンタルショップ年表(暫定版)

※見出し画像は「世界館」の跡地 「鳥取にかつてあった映画館」リサーチ 2019〜2020年にかけて、鳥取の自主上映活動を行う団体・個人にインタビューしたドキュメンタリー…

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ミュージックビデオの身体論④ カメラレス・ダンス

ミュージックビデオの身体論④ カメラレス・ダンス

4. カメラレス・ダンス(目次)
4-1. 絶対映画と視覚音楽連載の前回(ミュージックビデオの身体論③ 映像そのものがダンスする)は、ハービー・ハンコック『Rockit』(1983)やコールドカット&ヘスタスティック『Timber』(1997)など、身体としての映像そのものがダンスを踊っているかのような作品群を「映像のダンス」と名づけることで、アーティスト自身がダンスを踊る姿を直接的に撮影・記録し

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なぜ「ことば」は再発明されねばならないのか

なぜ「ことば」は再発明されねばならないのか

鳥取大学地域学部・佐々木研究室とコーディネーターの蔵多優美さんとの共同企画として「ことばの再発明-鳥取で「つくる」人の ためのセルフマネジメント講座-」と題した連続講座を始めることになりました。

アーティスト、クリエイター、デザイナー、パフォーマーなど広い意味での表現者=「つくる」人を対象として、自身の作品や活動を適切に言語化し、他者に伝える技術を学ぶ場を作ることを目指します。

ふだんは映像作

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あなたに映画を愛しているとは言わせないなんて言わせない

あなたに映画を愛しているとは言わせないなんて言わせない

2022年2月12日(土)に恵比寿映像祭で『映画愛の現在』三部作が上映される。「映画愛」と銘打ってはいるが、特定の「愛」のかたちを鑑賞者に押し付けることを意図したわけではない。むしろこの映画が訴えかけるのは次の一言だ。

「あなたに映画を愛しているとは言わせない」なんて、絶対に言わせない。

いびつな愛高校時代から個人制作の映画を撮り、作品論や作家論も書いてきたわたしにとって、映画を見ることはいつ

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ミュージックビデオの身体論① 多面的で全体的なイメージ

ミュージックビデオの身体論① 多面的で全体的なイメージ

1-1 MVを通じて「身体」を考える人は何を求めてミュージックビデオ(MV)を見るのか。そこから何を受け取り、何を引き出すことができるか。答えはそれぞれ異なるだろうが、私はこれから、「身体」というキーワードを軸としてMVを見ることを始めてみたいと思う。

動機は個人的なものだ。つい最近、ちょっとしたMVを撮る機会を得て、準備を進めながら「そもそもMVとは何だろう」「自分はMVのどこに惹かれていたの

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原将人『世界‐内‐存在の風景論的眺望』を読む

原将人『世界‐内‐存在の風景論的眺望』を読む

 原将人の論考「世界‐内‐存在の風景論的眺望」は、第二次『映画批評』創刊号(新泉社、1970年10月)に掲載され、後に単著『見たい映画のことだけを……』(有文社、1977年)にも「風景論的眺望」と改題して収録された。同論は、原将人の映画制作の方法を知る上でも、また松田政男や足立正生、中平卓馬らによって議論された風景論争を読み解く上でも、欠かすことのできない重要な位置を占めている。だが、私も含めて当

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ミュージックビデオの身体論② 顔とクロースアップ

ミュージックビデオの身体論② 顔とクロースアップ

2-1. 演奏する身体のクロースアップ楽曲を演奏・歌唱するアーティストの身体は、多くのMVにおいて作品の中心的な役割を占めている。ボーカルの歌う表情やギタリストの弦を爪弾く手元、リズムを刻む足元や演奏中の些細な仕草がクロースアップで切り取られ、画面上に映し出される。1916年にいち早く本格的な映画論『映画劇——その心理学的研究』を著したことで知られる心理学者ヒューゴ・ミュンスターバーグは、映画が舞

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地方映画史研究のための方法論(2)ジョナサン・クレーリー『観察者の系譜』

地方映画史研究のための方法論(2)ジョナサン・クレーリー『観察者の系譜』

見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト「見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト」は2021年にスタートした。新聞記事や記録写真、当時を知る人へのインタビュー等をもとにして、鳥取市内にかつてあった映画館およびレンタル店を調査し、Claraさんによるイラストを通じた記憶の復元(イラストレーション・ドキュメンタリー)を試みている。2022年に第1弾の展覧会(鳥取市内編)、翌年

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「映画による場所論」を再起動する

「映画による場所論」を再起動する

都市の全域的なリアリティを求めて 鳥取であれ茨城であれ、沖縄であれ東京であれ、わたしたちは特定の「都市」あるいは「地域」と呼ばれるものを容易に思い浮かべることができる(と信じている)。が、それを具体的に説明しろと言われれば、途端に言葉に詰まってしまう。わたしの頭の中にある「鳥取」は、都道府県や市区町村の地理区分で表せるものではないし、鳥取砂丘や湖山池などの有名なランドマークで語り尽くせるようなもの

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地方映画史研究のための方法論(1)ミシェル・フーコーの考古学的方法

地方映画史研究のための方法論(1)ミシェル・フーコーの考古学的方法

見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト2023年3月31日に、展覧会記録集『見る場所を見る2——鳥取・米子・境港市内の映画館&レンタルビデオショップ史』(Clara、佐々木友輔、杵島和泉 著、鳥取大学地域学部附属芸術文化センター)を刊行した。

「見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト」は2021年にスタートした。新聞記事や記録写真、当時を知る人へのインタビュー等をもと

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「方法」としてのドキュメンタリー(巡回上映「現代アートハウス入門 ドキュメンタリーの誘惑」を見る)

「方法」としてのドキュメンタリー(巡回上映「現代アートハウス入門 ドキュメンタリーの誘惑」を見る)

2022年12月3日(土)から、jig theaterで「現代アートハウス入門」第三弾の上映が始まりました。今回のテーマは「ドキュメンタリーの誘惑」ということで、私は初日にドキュメンタリー史のガイドを兼ねたレクチャーを行いました。以下は、当日お話しした内容をざっくりまとめつつ、加筆・再構成したものです。

ジャン・ルーシュ『人間ピラミッド』先ほどご覧いただいた『人間ピラミッド』(1961)の監督ジ

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地方映画史研究のための方法論(18)都市論と映画⑤——若林幹夫の「社会の地形/社会の地層」論

地方映画史研究のための方法論(18)都市論と映画⑤——若林幹夫の「社会の地形/社会の地層」論

見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト
見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト

「見る場所を見る——鳥取の映画文化リサーチプロジェクト」は2021年にスタートした。新聞記事や記録写真、当時を知る人へのインタビュー等をもとにして、鳥取市内にかつてあった映画館およびレンタル店を調査し、Claraさんによるイラストを通じた記憶の復元(イラストレーション・ドキュメンタリー)を

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地方映画史から、ただの日本映画史へ

地方映画史から、ただの日本映画史へ

 2022年になった。下記の文章を、新年の抱負の代わりとする。

 2016年に鳥取に来て、映画の自主上映活動を行う人々にインタビューした『映画愛の現在』三部作を制作する中で、いわゆる「地方映画史」への関心が高まっていった。例えば鳥取コミュニティシネマの清水増夫さんは、鳥取に見たい映画がほとんど来ないことへの不満から、1970年に自ら鳥取ATG準備会(アートシアターギルドの配給映画を鳥取で上映する

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かんのさゆり「New Standard Landscape」於 石巻のキワマリ荘

かんのさゆり「New Standard Landscape」於 石巻のキワマリ荘

2022年3月、石巻のキワマリ荘でかんのさゆりの写真展を見た。以下、備忘録として残しておく。いつか機会があれば、前回の西澤諭志展と併せてもう少し丁寧に論じてみたい。

まだ目立った汚れもない、清潔で真新しい外壁材が印象的な住宅地。アスファルトとコンクリートで塗り固められた地面。茫漠とした荒地を覆うブルーシート——。かんのさゆりが「New Standard Landscape」と呼ぶ風景は、彼女が東

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見る場所を見る2——アーティストによる鳥取の映画文化リサーチプロジェクト

見る場所を見る2——アーティストによる鳥取の映画文化リサーチプロジェクト

昨年度に引き続き、今年度も「鳥取の映画文化」をテーマとする展覧会「見る場所を見る」を開催します。

第2弾となる今回は、鳥取県西部の米子市・境港市の映画館とビデオレンタル店を調査し、鳥取で活動するイラストレーターClaraさんによるイラストで、在りし日の姿の再現を試みます。

また今回、鳥取大学地域学部の学生・杵島和泉さんが新たに企画者に加わりました。前回の展覧会で来場者からご提供いただいた資料を

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〇〇と映画

〇〇と映画

鳥取県中部のミニシアター「jig theater」による新たな企画「〇〇と映画」に、映画解説役として参加します。

「〇〇と映画」は、jig theaterの柴田修兵さんと三宅優子さんがセレクトした「これはもうぜったいみんなに観てほしい!」「映画史に残る大傑作」を上映し、その作品に関係する身近なテーマ(子ども・ショッピングモール・食卓)でトークをするというイベント。映画史に残るという傑作を一度は映

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鳥取市内の映画館&ビデオレンタルショップ年表(暫定版)

鳥取市内の映画館&ビデオレンタルショップ年表(暫定版)

※見出し画像は「世界館」の跡地

「鳥取にかつてあった映画館」リサーチ
2019〜2020年にかけて、鳥取の自主上映活動を行う団体・個人にインタビューしたドキュメンタリー『映画愛の現在』三部作を制作した。

当初は「現在」の「自主上映」に絞ってリサーチを進めていたのだけれど、そもそも鳥取の映画館でどのような映画が上映されていたのか(上映されていなかったのか)を知らなければ、そのオルタナティブとして

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