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効率化して生産性を上げても給料が上がらないという根深い問題 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.829

特集1 効率化して生産性を上げても給料が上がらないという根深い問題〜〜〜「AIが仕事を奪う」論をもう一度じっくり考えよう(3)



賃金と仕事のことを考えるうえ上で、興味深いまとめ記事があったので紹介しましょう。



1980〜90年代はわたしは新聞社に勤務していたので(他の業界とは若干は働き方は違っていたと思いますが)、パソコンでの作業が当たり前ではなかった昭和末期〜平成初期の仕事の感覚はよくわかります。ウェブ媒体もまだなかったころなので、一日の〆切は夕刊と朝刊だけ。夕刊の〆切が終わる午後1時ごろから、夕方まではかなり時間の余裕がありました。「ウェブに速報を出せ」と尻を叩かれることはなかったのです。だから先輩記者たちはのんびり小説を読んだりパチンコに出かけたり、記者クラブのソファで昼寝をしたりしていたのです。いまそんな悠長な時間を過ごしている記者はいません。


ウェブはなく紙の新聞だけなので、ページビューやCTRやコンバージョンなんていう概念は存在すらしていませんでした。自分が書いた記事が読まれたかどうかなどわかりようもなく、上司や先輩の「良くやった!いい記事だった」という激励や、そうでなければ「オレ、やったよね」という自己満足だけで良かったのです。いま振り返れば悠長な時代でした。


あれから30年が経って、いまはあらゆる局面で仕事は効率化され、効果測定もきっちりとおこなわれるようになっています。効果測定のしすぎで、逆に企業ブランディングのようなふわっとした価値が評価されない問題も起きてきてはいますが、昔と比べれば生産性が著しく向上したことは間違いありません。


それでも海外の諸国とくらべれば日本の生産性は低いまま!という指摘をよく見ますが、こういう記事も出ています。




日本は人口当たりの生産性はたしかに低いのですが、これを15〜64歳の生産人口との比率で見れば、年平均の成長率は日本が1.49%で、米国(1.34%)などを上回り、G7首位なのだそうです。つまり高齢化で生産人口の比率が下がっていることが生産性の足を引っ張っているということなので、高齢化社会は避けられないものの、日本は昔と比べれば生産性向上に向けてじゅうぶんに努力してきたということ。


とはいえ、それだけで喜んでいるわけにはいきません。日本の生産人口の生産性が上がってきているのが間違いなくても、賃金が全然上がっていないのです。昔よりも効率的な仕事をしているのにもかかわらず、給料が変わらないのは問題です。

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