さるトドイカ

三文小説集

さるトドイカ

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童心

「ウィトゲンシュタインの考えは……」 瞼が開き、今起きたのだと気付く。さっきまでの出来事が夢だったということにも。哲学の授業を受けていたはずがいつの間にか眠っていたみたいだ。顔を上げると、生徒や先生が目の前にいた。みんなスマホをいじっている。誰もウィトゲンシュタインの略歴には興味がないみたいだ。自分も含めて。それにしてもどうしてあんまり仲良くなかった中学時代のやつと夢の中で遊んでいたんだろう。彼とはもうしばらく会っていない。彼はクラスの人気者だった。サッカーも上手かったし、

    • まともなのは僕だけ

       私の名前はアルマジロ博士。主にゾンビの研究をしている。世界にゾンビたちが出現したのは約三年ほど前。今では人口の約三分の二がゾンビと化した。私はゾンビの生態研究を長年に渡り続けてきたが、どうやら私の仮説は当たっていたようだ。理由は不明だが、多くのゾンビたちは山奥まで入ってこない。もし来たとしてもそれは限りなく少数なので、都市部よりは安全なのであった。山奥の中にある長らく使われていなかった旧い研究施設を利用し、こうして私は今も細々とではあるがゾンビの研究を続けることができている