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クリシュナのマイホーム:ドワーラカー「門のある場所」ってどこ?

第一巻第十一話 ドワーラカーへのクリシュナの入城

ー 吟誦者は続けた ー

クリシュナは領地アーナルタに到着すると、長い不在を嘆く民を慰めるためにパーンチャジャニャ(法螺貝)を吹いた。恐れが震え上がるその音に、ドワーラカーの住民たちは主人に逢おうと都から駆け出し、喜びに声を詰まらせながら言葉を紡いだ。

「主よ、あなたはブラフマーやシヴァ、インドラさえも崇める、時間をも超越した最高の支配者です!私たちは、天の神々さえも見ることのできないあなたの顔を見られるとはなんと幸運なのでしょう。あなたがクル族やマドゥ族の都に出かけていた間、私たちはまるで太陽を失った眼のように惨めでした!」

ドワーラカーの民の称賛を耳にしながら、クリシュナは優しい眼差しで人々に慈愛を注ぎながら都へ入っていった。都は、マドゥやボージャ、ダシャーラ、アラ、ククラ、アンダカ、ヴリシュニといったヤーダヴァ族が守りを固めていた。そこは、蓮の花咲く無数の湖、季節ごとに豊かな実りをもたらす聖なる樹々、果樹園や庭園、公園に囲まれていた。門や宮殿、大通りは花綱で飾られ、様々に意匠を凝らした旗や垂れ幕が風にはためいていた。清掃された街路や市場、邸宅の中庭には水が撒かれ、家々の入り口にはヨーグルトや果物、お香、灯明が美しく並べられていた。

ヴァスデーヴァ(クリシュナの父)、アクルー(従兄弟)、ウグラセーナ王(母方の大叔父)、バララーマ(兄)、プラデュムナ(クリシュナとルクミニーの息子)、チャールデーシュナ(プラデュムナの兄弟)、サーンバ(クリシュナとジャーンバヴァティーの息子)は、クリシュナの帰還を聞いて喜びに沸き立ち出迎えに出た。何百人もの美しい娼婦たちが主を一目見ようと籠に乗り、俳優や踊り子、歌手、賛辞者、吟誦詩人、宮廷詩人たちがクリシュナの偉業を声高らかに称えた。
主は親族や従者、市民それぞれにふさわしい態度で接し、下層階級(パリヤ)にも頭を下げ、愛情を込めた微笑みで皆の手を胸に握りしめ、彼らの望む恩寵を授けた。年長者やブラーフマナ、その妻たち、老いた市民から心からの祝福を受けながら、都へと入っていった。

シャウナカよ、高貴な女性たちも主を一目見ようと屋上に駆け上がった。主の胸にはラクシュミー(美と幸運の女神)が宿り、その表情は見る者にとってのアムリタ。腕は守護神が宿る場所で、蓮の御足は信者の家を象徴している。主の身体全体が優雅さと気品の体現で、決して見飽きることがない。黄色い衣を纏い、ヴァナマーラの花輪(神を象徴する花輪)で飾られ、純白の傘を広げられ、両脇からはチャウリで風が送られ、花々が散りばめられ、道の上で主は美しく眩しいほどに輝いていた。

主は両親の宮殿に入り、七人の母に深々とお辞儀をした。彼女たちは涙で主を濡らすほど喜んだ。次に主は自身の宮殿へ入った。そこには一万六千人の妻たちそれぞれに立派な館が建てられていた。彼女らは主を遠くから見つけると、心から愛が溢れ涙した。大
クリシュナは繁栄し過ぎた悪しきカウラヴァ(ドルヨーダナたち)を滅ぼし、地上に生まれた目的を果たすと、すべての行為を終えた。地上に肉体を持った主は、何千人もの妻と人間のように戯れたのだ。
女性の中の宝石のような彼女たちのどんな仕草も、主の心の静寂を乱すことはできなかった。愚かな者は無執着な主を普通の人間だと誤解するが、主はプラクリティ(物質界)の中に留まりながらも、そのグナ(サットヴァ,ラジャス,タマス)に支配されることはない。愚かにも妻たちは主の偉大さにまったく気づかず、自分たちに仕える従順な夫としか見ていなかったのだ。

※※※
16,000人の妻?もう、神業にも限度があるでしょう?まさか、クリシュナが16,000人に分身していたとか?いや、それも「神の余裕」ってやつだね。さて、まずは有名どころの奥様たちを紹介しよう。
最初に登場するのはルクミニーさん。彼女はビダルバ国の王女で、クリシュナの最初の妻。彼女との間には子沢山!なかでも長男プラデュムナが超有名。次に、サティヤバーマさん。彼女はバーマとバーヌーの母で、こちらもクリシュナの妻の中でもキリッとした存在感。次は、ジャーンバヴァティーさん。熊の王の娘で強烈なキャラクターを持つ彼女は、クリシュナの息子サンバの母で、ヤーダヴァ族の未来を左右するほどのインパクトあり。
さて、ミトラヴィンダさんはアヴァンティ国の王女。彼女の花婿選び(スヴァヤムヴァラ)では、クリシュナがさっそうと登場して彼女を連れ去っちゃった!どこかのロマンチック映画のワンシーンみたいでしょ?そして、カールディさん。彼女は太陽神の娘で、ヤムナー川の化身。川のほとりで「いつかクリシュナが嫁にしてくれるはず!」と修行していたら、案の定クリシュナがやってきて、夢が現実に。
いやー、この選りすぐりの奥様ラインナップ、さすがクリシュナ!どれだけの神技を駆使してるんだか、もう想像を超えてるよね。


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