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わたしなりの枕草子

まずはビール。キンキンに冷えたジョッキでも、キンキンに冷えた缶のビールでも、どちらでもよい。どんなときもどんなときも、私が私らしくあるために、口から出る言葉は「とりあえずビールで」。刺激的な黄金の液体に浮かぶ不可思議な雲が、喉の奥にたなびきたる。

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春は焼酎。
歓送迎会の季節。送ったり送られたり。やたらと飲み会が増える春。ビールだけを飲み続けてしまいそうな危険な季節。チラチラと舞い散る桜吹雪によく似合う軽やかな焼酎を、薄めに炭酸で割ると良い。きっとそれでなんとかなる。しかし、なんとかなるのは自分で酒を割った時の話。誰かが気を利かせて濃いめに作ると間違いなく二日酔いになる。飲み会は金曜日に設定希望。土曜日は屍。そしてその夕刻、屍は生き返る。再び酒を煽り、頬が赤らむ。夜桜が散りゆく中、頬を撫ぜる春風が心地よい。


🌞

夏はビール。
とりあえずのビールの後も延々ビール。黄金の液体はそのまま黄金の液体となりゆく。体内の水分が排出され、干からびた体を潤すために次々とビールを飲み干す。友は枝豆。少し塩味がきつめの枝豆。塩分補給が重要。ポテトでもいいし、チーズでもいい。美味しいお惣菜でもいいし、スナック菓子もあり。ただし、ビールばかり飲みすぎた翌日の二日酔いは厳しい。暑い日差しを浴びてミイラになるように、ビールだけを飲んで迎えた翌朝は干物となる。しかしレオンは滅びぬ、何度でも蘇るさ。再び口に含んだビールが、体を潤していく気がする。見上げた太陽の光に思わず目を細める。入道雲が笑っている。


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秋は焼酎。
ビールを飲みすぎた夏の胃を、優しく癒すことはない。ぼよよん行進曲が頭の中でリフレインし、夏の終わりに感じた腹の揺れに、気が焦る。このまま厚着になり、二度と痩せることは叶わないのだろうかという考えが頭を過ぎる。空を見上げるとカサカサと枯葉が頬を赤らめ、私を嘲笑うかのように揺れている。日々冷たくなっていく冷ややかな空気が、冷たい脂肪をさらに冷やす。糖質ゼロの焼酎を少し甘めの生姜湯で割る。体が温まり、脂肪が燃焼している気がするのは気のせいか。生姜湯の甘さは優しさでできているから、焼酎の生姜湯割りではきっと太らないと私は私を慰める。その切なげな独り言は、夜長にゆるりと溶けていく。

⛄️

冬はウイスキー。
世間がソワソワしだす頃、オシャレなお酒が飲みたくなる。吹きすさぶ冬の風で首元を隠し、ポケットに手を突っ込む。自分のポケットじゃなくてイケメンのコートのポッケに手を突っ込まれてキュンってしたい。妄想。願望。あゝ無情。仕方がないので冷えた手を温めるために、湯を沸かす。その湯で紅茶を入れる。ウイスキーを耐熱グラスに入れて、紅茶を入れる。褐色のマリアージュ。グラスを両手で包み、湯気を吸うと、ほわんとアルコールと紅茶の香りが鼻を抜ける。華やかな香りに心が踊り、調子に乗って冷凍庫からアイスクリームを取り出し、匙にのせゆっくりと口に含む。温まった口の中で緩やかに解けていくバニラの香りに舌鼓を打つ。外で遊ばなくても、私の冬はキラキラと輝いている。気がする。


🍻

年がら年中、とりあえず。
なんと曖昧で、不確かな響き。軸足はビール。しかし私は、留まることなく歩いていく。季節が変わりゆくように、私の好みも変わりゆく。





三毛田さんが、面白い遊びをされていたので便乗しました!こんな楽しい遊びを思いつくのすごいな〜。遊び心満載!楽しかった!






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