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50年続ける企画「さりげなくの定期便」

正直のところ、わかりにくいものにお金を払うのはとても難しい。できれば効果効能がわかるもの、何かしらの結果があるものに、お金をはらいたいのはとてもよくわかるし、期待した分の結果がわかりやすく返ってきてほしいと思うのは当たり前だと思う。

そんななか、はじめたのがさりげなくの定期便。とてもとてもわかりにくい。なにがもらえるの?と言われると、悩んでしまう。多分いろいろ変わっていく。変わらないことは毎年2回、「紙」が届くということだけなんです。

このnoteのタイトルの通り、50年続けるぞ、と、はりきった企画。定期便は年に2回、さりげなくから2枚の紙が送られてくる。50年続けると意気込んだからこそ、1/100号、2/100号という風に番号をふっていくことを決めた。年に2回発行して、100/100号までいこうと思うと50年かかる。おー長い。(でもきっとあっというまだ)

出版業界、企画デザイン業界にいると、長い時間のスパンを意識したものをつくることはなかなか少ないと思う。早くて1ヶ月、短期で3ヶ月、長くて数年、10年。あらゆる企画やデザインは誰かに吸収されていき、また新しいものが生まれていく。(消費という言い方はしたくないので、吸収といいたい)

吸収されるのは、とても嬉しいことだし、どんな本もどんなイベントもいつか誰かの何かになっているのだろうと思うだけで、少し涙ぐみそうになる。大げさだけども、いつもそう思う。

「あなた、醤油さしもってないの?」京都の東寺で行われる弘法市で、言われた言葉を、醤油を入れ替える瞬間に思い出した。そういえば、この醤油さしは、あの言葉にぐさりときて買ったのでした。大事に思っている人から勧められると、それはそれは欲しくなったりすることもあるけれど、赤の他人である人がスッと言ってきた、偶然に出会う言葉に、動かされることもあったりする。

さりげなくの定期便は、さりげなくから突如送られてくる言葉や物語の定期便である。それは、「あなた、醤油さしもってないの?」に近いもの。意図も、深い想いもそんなにはない。ただ、タイミングによっては、あなたの人生を動かしたり、深く記憶に残るようなことがあったりするかもしれない(私が醤油さしを買ったように)。いや、でも、ないかもしれないです。

​定期便0/100号で書いた上記の言葉。誰かのことを想い作るのはとても大事なことだけど、特に大事にしたいことは『続ける』こと、そして『長い期間』を想像してつくること。いつかSNSがなくなるような時代がくるかもしれない。そんなときに、家に届き続ける『紙』は、きっと誰かの何かになってるかもしれないし、ならないかもしれない。でも、毎年毎年、気合いをいれてつくり続ける。50年後、だれも読まなくなったとしても、作り続ける。100号全て、完成したとき、全ての紙を並べよう。そう考えただけで、私はとてもうっとりします。

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次回のお届けは11月です。今年購入くださった方には、1/100号、2/100号の紙が届きます。

(さりげなく 稲垣)




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